辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(4)

(4)沖縄防衛局の特別採捕許可申請
 サンゴの特別採捕許可申請書によれば、<採捕の期間>は、「許可の日から14日間のうちの1日使用」で、<漁具及び漁法>は、「潜水器使用による採捕(タガネ及びハンマーを用いた人力による採取)」としている。(サンゴ類移植に使用する船舶の一覧、採捕に従事する者の住所、氏名、潜水士免許証番号及び交付年月日も記載されているが、公開された申請書ではこの部分は黒塗りされている)
申請書に添付された「調査計画書」には、調査目的について次のように記載されている。

 「目的
 普天間飛行場代替施設建設事業の埋立等により消失する区域のうち、辺野古側において環境省「海洋生物レッドリスト(2017)J (以下「環境省レッドリスト」という。)に掲載されたオキナワハマサンゴ1群体の存在が確認されており、事業実施に伴う環境保全措置として当該サンゴ類の移植を実施することとしている。一方、サンゴ類の移植技術は、未だに十分に確立された状況にない。
 当局は、公有水面埋立承認願書(平成25年3月22日付け沖防第1123号)に添付した環境保全に関し講じる措置を記載した図書(以下「環境保全図書」という。)において、「事業実施前に、移植・移築作業の手順、移植・移築先の環境条件やサンゴ類の種類による環境適応性、採捕したサンゴ類の仮置き・養生といった具体的方策について、専門家等の指導・助言を得」ることとして、貴職から埋立承認処分を受けており、上記「専門家等の指導・助言を得」るために設置された環境監視等委員会の第9回委員会(本年9月27日)において、本件特別採捕許可申請の対象であるオキナワハマサンゴ1群体を本申請書記載の方法で移植することについて、指導・助言を得たところである。
 以上を踏まえ、本調査は、普天間飛行場代替施設建設事業の埋立等により消失する区域のうち、辺野古側で確認されたオキナワハマサンゴ1群体の移植を行うとともに、移植実施後の生息状況、成長度合いのモニタリング調査を実施することで、当該サンゴの移植の妥当性の評価を行い、その移植技術の向上を目指すものである。」

 調査計画書は、「基本方針」として「当該サンゴの移植に当たっては、オキナワハマサンゴ(ハマサンゴ属)の特性及び環境保全図書の記載、平成27年7月の第4回環境監視等委員会資料「サンゴ類に関する環境保全措置【サンゴ類の移植・移築計画】」を踏まえ、環境監視等委員会の指導・助言を改めて得た結果、一般のサンゴ類と同様に、「これまで得られた現地調査結果の情報や、沖縄県のサンゴ移植マニュアル等の既往資料の情報を踏まえながら、環境が類似し、同様なサンゴ種が生息するとともに、移植先のサンゴ群生への影響が少ないと予測される場所を選定し、最も適切と考えられる手法による移植を実施。さらに、その後の生息状況を事後調査する。」方針」であると述べている。
 「移植先の選定」については、「環境保全図書に記載した移植先想定地域のうち、同様の地形・地質と考えられる地点においてマンタ調査により底質状況、水深帯を観察し、移植元の環境と類似した場所において、定点調査を行い、同様のサンゴ種の分布状況を確認。調査の結果、移植元と環境が類似し、同様なサンゴ種が生息するとともに、移植先のサンゴ群生への影響が少ないと予測される場所として、「辺野古崎前面海域」を移植先とする計画。」と説明している。

 沖縄防衛局は調査研究機関ではないから、「造礁サンゴ類の移植技術に関する試験研究」などありえず、「試験研究」として許可するのか疑問とする意見ももっともである。
 実際、昨年、沖縄防衛局は、工事予定海域の生息する希少サンゴを発見しておきながら白化の進行を止める手立てもとらないまま放置し、死滅したあと県に報告した。このような不誠実さが続く限り、県民から信用されないのは当然だ。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(3)

(3)沖縄県への報告の遅れを県は批判
 沖縄県にはその翌日の9月28日に説明した。翁長知事は、「環境保全の視点を欠き、工事を優先する姿勢は大変遺憾だ」と批判し、▽サンゴの発見は7月だったが県への報告がなかった▽事前協議なくK9護岸に係船機能を持たせた施工をしている-ことを問題視し、サンゴの保全対策とK9護岸の実施設計に関する協議が調うまで工事を実施しないよう求めた。
 県が沖縄防衛局に出した抗議文書は、留意事項に照らして不適切な内容として、「(1)事前協議が調わないままに工事に着手し、事業実施区域内で確認された環境省版海洋生物レッドリスト対象の2種14群体のサンゴ群体が7月に確認されたことについて県に報告しなかったこと。また、その保全対策を県と協議しなかったこと。(2) K -9護岸の施工において、事前協議を行わずに、当初の目的にはない係船機能を持たせた施工をしており、実施設計協議で示された設計内容と異なっている可能性があること」を指摘した。そのうえで、「(I)工事に係る県の立入調査に対し、速やかに応じること。(2) サンゴ類の環境保全対策について県と協議し、協議が調うまでは工事を再開しないこと。(3) K -9誕岸を桟橋として使用して海上運搬を行う件について、実施設計及び環境保全対策等について県と事前協議をやり直すこと。また、協議が調うまでは海上運搬を実施しないこと。」の3点を求めた。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(2)

(2)工事予定海域でのサンゴ生息調査と環境監視等委員会への報告

 

  沖縄防衛局は、環境省が策定した「海洋生物レッドリスト (2017)」にオキナワハマサンゴ等の15種のサンゴ類が掲載されたことを受け、2017年6月26日から9月18日にかけて辺野古新基地建設に伴う埋め立てを予定している海域で生息状況を調査し、絶滅危惧Ⅱ類のオキナワハマサンゴ2群体、準絶滅危惧のヒメサンゴ12群体を発見した。
 同局は、9月27日開かれた第9回環境監視等委員会に調査・確認結果の経緯を、「平成 29 年7 月5日から7 月22 日にかけて、オキナワハマサンゴ (2 群体)及びヒメサンゴ (12 群体)と思われるサンゴ類14群体を確認。これ14群体のうち、13群体のサンゴは調査時に白化が見られたことから、その生息状況を確認するため、8月18日、当該14群体について、再度確認調査を行ったところ、オキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ1群体の生存、オキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ5群体の死亡、ヒメサンゴ6群体の消失を確認。更に、9月1目、残るオキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ1群体について、再度確認調査を行ったところ、ヒメサンゴについては、藻類が付着し死亡が確認。 その後、9月18日に、残るオキナワハマサンゴ1群体について、再確認調査を行い、生息状況を確認」したと報告した。
 沖縄防衛局は、サンゴの死滅・消失について、「オキナワハマサンゴ確認位置に近い K-l護岸及び K-2護岸施工時の汚濁防止枠を 2重化(オキナワハマサンゴ確認位置から離れているN-5護岸施工時の汚濁防止枠は 1重として計算)することにより、本サンゴ1群体周辺の水の濁りは、海藻類や魚介類に対する濁りの影響濃度に関する知見を基に設定され(水産用水基準(日本水産資源保護協会。2006) )、サンゴ類が生育する海域を含め、海上工事中の水の濁りの影響の環境監視基準として広く適用されている環境保全目標値 2mg/L を下回る結果が得られたことからすれば、当該施工に伴い、本サンゴ1群体の生息範囲には同値を超える濁りは拡散しないと予測され、その生息環境は保全されるものと認識」していると工事の影響を否定。その根拠としてK-1護岸、N-5護岸着手時及び完了時の流れの変化・水温の変化・塩分濃度の変化をあげた。こうしたことから「移植対象としているオキナワハマサンゴ1群体は、確認当初(7月5日)と比較して、その後の夏季の高水温による影響と考えられる白化現象(部分由化)が進んでいる状況が確認されている」と結論付け、「高水温が今後も継続する可能性があることを考慮すると、早急に移植することが有効と考えられる」ことから「本委員会終了後、再度生息状況を確認した上で、沖縄県に対し特別採捕許可申請を行い、許可が得られれば、速やかに移植するよう努める」と表明した。
 委員からは「コントロールポイントとして、①実際の本群体のポイント、それから②工事海域のポイント、③工事海域から十分離れたポイント、④移植先のポイントという形で、例えばこれで、③のポイントもサンゴが死んでしまって、移植先でも死んでしまったら、全体の環境の悪化ということになりますね。ただ一方で、工事の海域や移植先で死んでいるけれども、③では生き残っていれば、工事の影響あるいは移植の影響が考えられるわけですから、周辺海域との比較で行わないと、工事の影響はどうかというのはわかりませんので、その点、今後の工事に際して十分注意してください。それから、現在一部白化しているサンゴを移植するということですけれども、もう9月になって水温が下がっていきますので、白化から回復している可能性が高いですが、白化したサンゴは弱っていますので、それを移植する際には、十分注意してください。今後も水温が下がっていくことからサンゴの生息状況を確認しながら移植するようにしてください」などの意見が出され、委員長は「水温のモニタリングをしっかりしなさいと、それからレファレンスの場所等適切に比較対照としながら、工事の影響を確認しながら進めていただきたいというところ。移植につきましては、サンゴの生息状況を確認しながら実施しなさいとの条件を頂きました。では、そのような条件を当委員会からの指導・助言として事務局に提示したい」とまとめている。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(1)

(1)沖縄防衛局のサンゴ採捕問題の視点
 沖縄防衛局は2017年10月26日、沖縄県に「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書に基づく環境保全措置を目的とした造礁サンゴ類の移植技術に関する試験研究」を目的に、「沖縄県漁業調整規則第33条第2項及び第40条」の適用除外の許可を受けたいとして特別採捕許可申請書を提出した。沖縄県は、これを受理し、審査をおこなってきたが、2月16日に特別採捕許可した。「標準的な審査期間は45日」とされていたが、防衛局は許可を得るのに110日を要した。
県が採捕を許可したことで、翁長知事に対し批判の声が出ている。サンゴを壊さないでほしいという思いからの批判である。新基地建設工事を止める知事権限の一つと言われていたから、失望した向きもあっただろう。
 埋立承認取り消しを取り消した以上、取り消し以前の段階に戻り、沖縄防衛局が出してくる諸手続きに対応しなければならないから、防衛局が法令にのっとりだしてきた申請については、審査の上、許可しなければならない。ただし、法令や県との約束に反する内容があれば、指摘し、取り下げて出し直しを求めることや、許可後に違反があった場合、許可取り消しを行う。こういう仕組みである以上、「敵失」がなければなかなか不許可にはならない。しかし、内容に不備があれば、その指摘を乗り越えるため、相当の時間を要することになる。この点に注目すれば今回のオキナワハマサンゴの移植許可をうるのに「標準的な審査期間」の倍以上の時間を要したことは、官邸からまだ許可が出ないのかとつめまくられたであろう防衛局は毎日が針のむしろに座らされている心境だったのではないか。実際、沖縄防衛局は、許可がいつおりますかと毎日のように県に問い合わせをかけ、しまいには「県庁に伺いますよ」と圧力をかけたという。自民党県議も代表質問で「採捕申請について引き延ばし続けている」と追及する質問通告も出していた。政府と自民党は、あらゆる手を使って県に圧力をかけたから、2月16日の許可は、タイムテーブルとしてはぎりぎりのところだったろう。
とはいえ、これだけで「県は国の攻勢に抗しきれなかった」という評価をくだすことは、適切だろうか。
 県が「法令に基づいて厳正に審査」し、標準日数を大幅に超える日数をかけたことに注目すべきではないか。防衛局の採捕許可申請は、第9回環境監視等委員会の検討に基づくもので、専門家の助言を得てのものであったが、県は防衛局の採捕計画について強い疑問をいくつも持ったのだろう。質問を2度も投げかけている。さらにレッドリストを所管する環境省にも紹介し、オキナワハマサンゴの知見を聞いている。オキナワハマサンゴの特徴が十分わかっておらず、移植技術も確立していないことが明らかになった。こうしたやりとりを通じてサンゴの移植を右から左に承認するのではなく、しっかりした報告を県にすることも注文したのである。
 県の質問に対する防衛局の回答は、現段階では公表されていないが、沖縄県は防衛局に何度も問い合わせや内容の不備を指摘し、一定程度の縛りをかけることができたのではないか。そういう評価が成り立つのであれば、採捕許可にたいする見方を大きく変えざるをえなくなろう。許可に至る経緯をていねいに見ていきたい。

オスプレイ部品落下で沖縄県議会が抗議決議

 沖縄県議会は2月21日、普天間基地所属の米軍MV22オスプレイがエンジン吸気口を落下させた事故に抗議する日本政府宛ての意見書と米軍にたいする抗議決議を全会一致で可決した。(意見書と抗議決議は、同文)
 オスプレイが落とした部品は、9日午前、うるま市伊計島の大泊ビーチ近くで漂流しているところを発見され、回収された。部品は約13キロあり、近くには最盛期を迎えたモズクの養殖場もあり、漁業関係者や住民、観光客をも巻き込む重大な事故にもつながりかねない状況だった。
 意見書および抗議決議は、日米合意に反して、部品落下の事実を米軍が日本側に通知しなかった点について、「隠ぺいの意図があったと疑わざるを得ない」と強く批判している。
(1) 事故原因の検証と公表、事故防止策
(2) 保育園・学校をはじめ民間地上空の米軍機の飛行・訓練の中止
(3) 直ちに普天間基地の運用停止
(4) 日米地位協定の抜本改定と、航空法の特例を廃止し、米軍に日本の航空法を遵守させること
(5) 在沖米海兵隊の早期国外・県外移転

(6)日米両政府は、米軍関係の事件・事故の改善に向け、当事者としての責任をもって対処すること
以上が要求内容である。

 今回の事故は、単なる部品ではなく、エンジンの空気取り入れ口であり、まさに心臓部での事故であり、航空機に知識のある人は一様に「あり得ない事故だ」と言う。アメリカのシンクタンクが少し前、海兵隊では機体の老朽化とともに整備士不足などが起きているとして重大事故につながる可能性があると警告していた。そういう警告も踏まえながらこの事故を見るべきであろう。

 というのも、米軍機の墜落、不時着、緊急着陸、部品落下。さまざまな事故が繰り返し起きており、県民の不安が増しているといえる。「何か落ちてくるのではないかと気になって、空を見上げてしまう」と言う人が何人もいた。
 2月15日に開かれた沖縄県議会米軍基地関係特別委員会では、2017年1月から2018年1月までに合計10件の普天間基地所属の航空機事故が発生していることが県基地対策課から報告された。肌感覚だけでなく、この統計にもはっきり示されている。
 では、当事者の米軍はどう受け止めているのか。米軍は、点検し、安全性に問題はないと表明して、すぐ飛行を再開させてきた。事故原因を究明した報告書は、数か月後にやっとでてくる。後に続く事故が起きなければいいのだが、毎月のように事故が発生している。
 日米合意で事故が起きたら米軍は日本側に通報することになっている。それが無視されている。

 なお、県議会事務局と在日米軍司令部とのやりとりで分かったことだが、在日米軍司令官は2年前から抗議を受け付けなくなっているという。その理由は、はっきりしない。米軍基地特別委員会の委員の間では、米軍に対応させるため、日本政府や駐日米大使などに働きかけようなどの意見が出ていた。

南洋戦・フィリピン戦における一般民間人の被害救済を放棄した判決

 1月23日、那覇地方裁判所は、「南洋戦・フィリピン戦」被害・国家賠償訴訟で、被害原告の訴えを却下する判決を出した。戦後70年たってもなお、一般民間人の戦争被害が救済されないことが許されてよいはずがない。弁護団と原告は、判決後、記者会見を行い、「ドイツ、イタリアでは戦後、法律を作り、一般民間人を救済している。なぜ、日本でできないのか。国家無答責を理由に請求を退けたのは、司法の責務放棄だ」などと訴えた。

 以下、原告団弁護団の「声明」(全文)を紹介する。

 

             声明
―「南洋戦・フィリピン戦」被害・国家賠償訴訟
                 那覇地方裁判所判決(棄却)についてー

 本日(2018年1月23日)、那覇地方裁判所民事第1部合議A係(劔持淳子裁判長)は、先の南洋戦・フィリピン戦で被災した一般民間戦争被害者45名が原告となって、戦争損害について国に対して謝罪と1100万円の慰謝料を請求した「南洋戦・フィリピン戦」被害・国家賠償訴訟につき、原告らの各請求を棄却した。不当判決である。

 

1.原告らは、請求の根拠として、日本軍の残虐非道行為と、米軍との玉砕戦による戦闘行為とその結果生じた生命侵害・身体侵害・精神侵害の被害事実を主張・立証し、この事実を基礎として、①日本軍の違法な公権力の行使に対する民法不法行為責任、②公法上の危険責任、③国会が被害の救済法を制定せず長期間放置してきた立法不作為責任、憲法14条で定める法の下の平等原則違反等を主張した。特に精神的被害事実については、28名の原告が「南洋戦・フィリピン戦」に起因する戦争PTSD (外傷性精神障害)と診断された事実を、専門医の鑑定書と診断書の提出により立証した。
 これに対し、判決は、原告ら45名が戦争被害を受けた事実、28名の原告が戦争PTSDと診断された事実を認定し、原告らの心労や労苦が、その内容は様々であるにせよ、おしなべて筆舌に尽くし難いものであったことは明らかであり、こうした苦痛や労苦は、軍人軍属及び戦闘参加者を含む準軍属並びにその遺族らのものと本質的に違いはないということができる。したがって、原告らが、被告においては、原告らのような一般民間戦争被害者に対しても、軍人軍属等と同様に、立法により救済や援護をすべき義務があると主張することも、心情的には理解できるところであるし、政策的観点からは、そのような見解も十分にあり得るところであるとした。

 

2. しかし、①民法不法行為責任については、明治憲法下の国家の権力的行為について国は責任を負わないとするいわゆる国家無答責の法理により否定し、②公法上の危険責任については、法的効果を導き出すほどの具体的根拠に乏しい抽象的概念であるとして否定し、③立法不作為責任については、立法府の裁量判断に委ねられているとして否定した。④軍人軍属との差別や戦闘参加者と認定された一般民間戦争被害者との差別が憲法14条の法の下の平等原則に違反するとの主張については、不合理な差別とはいえないとして否定した。
 これら請求棄却の理由は、被害が甚大なものであることを認めながら救済を否定する不合理なものであって、法律の適用を誤り、日本国憲法基本的人権規定に反する不当判決である。

 

3. また、原告らは、「南洋戦・フィリピン戦」におけるアメリカ軍の軍事行動の国際法違反行為として、次の2点を主張・立証した。
( 1 )アメリカ潜水艦・航空機による民間船舶に対する無警告・無制限攻撃は、パリ講和会議の戦争法規慣例及びワシントン条約による砲撃等の禁止に違反する
(2 ) アメリカ軍の住民居住地等に対する無差別じゅうたん艦砲射撃は、戦時海軍砲撃条約等に違反する。
 これらの主張について、判決は何ら事実認定及び法律解釈をすることなく、判断を回避した。
 原告らの主張に対して応答をしない裁判所の態度は極めて不誠実・無責任であると言わざるを得ない。

 

4. 判決は、原告らの被害事実として、艦砲射撃や銃撃、空襲、戦争下での栄養失調等による親族の死亡や、本人の負傷、戦争孤児となったこと、戦争PTSDとの診断を受けたことなどを認定している。判決が認定した戦争被害の実態は、いずれも極めて深刻かつ重大なものである。その深刻な被害がいまだ救済されることなく放置されていることは、決して容認できるものではない。
 先の南洋戦・フィリピン戦は日本の敗戦が決定的になっていたにもかかわらず、国体(天皇制)護持と日本本土防衛のために南洋諸島・フィリピン群島に住む国民の命を犠牲にした捨て石作戦(玉砕戦)であったことは歴史的にみて疑う余地がない。その強いられた玉砕戦争によって、南洋諸島・フィリピン群島に住んでいた日本国民10 万人のうち、沖縄県出身者8万人中2 万5000人以上が命を奪われ、戦争孤児も多く発生し、身体的障害者及び戦時・戦場体験に起因する心的外傷後ストレス障害(PTSD)など精神的後遺障害者が現在も発生している。今も原告らとその家族は戦争の惨禍に呻吟し続けている。「南洋戦・フィリピン戦」は、国の謝罪と被害の全面救済がない限り終わるものではない。

 

5. 明治憲法下でも保障されていた生命・身体・精神に対する戦争被害は人類普遍の原理である基本的人権の根本的破壊である。先の大戦は日本が開戦し、遂行してきたことは自明のことであり、日本国はその戦争によって被った国民の被害について謝罪し損害賠償する法的責任を負うことは、原告らがこの訴訟の中で法的主張を行い、証拠でもって立証してきたとおりである。

 

6. 被告国は、先の大戦の被害について恩給法・援護法を制定して、軍人軍属には総合計60兆円の補償を行ってきたが、一般民間戦争被害に対しては全く補償を行ってこなかった。南洋戦・フィリピン戦の一般民間戦争被害については、その一部の一般民間人については戦闘参加者として戦後になって認定し補償を行ってきたが、約l万7000人の死者と多数の後遺障害者に対しては謝罪も補償も行うことなく放置している。ここに軍人軍属との差別に加え、一般民間人の中にも差別が生じている(二重差別)。そこで、この放置された一般民間戦争被害者が、人生最後の願いとして国の謝罪と補償を求めたのがこの訴訟である。
 にもかかわらず、那覇地方裁判所は原告らの切実な請求を棄却したのである。基本的人権救済の最後の砦であるべき裁判所が、司法の責務を放棄したものと言わざるを得ない。

 

7. 原告らは、この不当判決に対して強く抗議し、国民・県民の皆様に広く訴えるとともに、直ちに控訴して引き続き闘うことを宣言する。
 最後に、原告団弁護団は、県民・国民とともに全民間戦争犠牲者の救済と恒久平和の実現のために闘い続けることを表明する。

                                201 8年1月23日
               「南洋戦・フィリピン戦」被害・国家賠償訴訟弁護団
                           団長 弁護士 瑞慶山茂
               「南洋戦・フィリピン戦」被害・国家賠償訴訟原告団
                           団長 柳田虎一郎

オスプレイ配備に沖縄の首長の7割が依然反対

  琉球新報は1月15日付で、沖縄県内41市長村長の約7割がオスプレイの配備撤回を求めていることがアンケート調査で分かったとする記事を掲載した。2016年12月に名護市安部海岸に墜落するなどして事故率の上がるオスプレイだが、そのアンケートに首長の9割近くが「不安がある」と回答した。安倍内閣と気脈を合わせる首長もオスプレイは不安だと答えていることを直視すべきだろう。
 アンケートは、昨年12月13日に沖縄県内の全市町村長にファクスで質問を送信。今年1月10日までに得た39人の回答を集約した。
 オスプレイの配備について、「撤回すべき」と答えた首長は70・7%の29人に上った。「分からない・どちらでもない」「無回答」「その他」は29・3%。普天間基地の建設予定地となっている名護市の稲嶺進市長は「撤回すべき」と回答した。
 琉球新報は「普天間飛行場への配備から5年が経過したが全県的に配備反対の声が根強いことが読み取れる」と分析している。
 また、記事では、辺野古新基地建設についても言及し、「新基地建設後、緊急時にオスプレイが100機配備される可能性も指摘されている」と注釈を施している。
 このほか、アンケートは、オスプレイ普天間基地への配備撤回、同基地の県内移設断念を求めた「建白書」が現在も意義を持っているかどうかを聞いている。これにたいし29市町村長が「意義は失われていない」と依然高く評価している。

 「建白書」は、知事になる前の翁長氏が中心になってつくり上げたもので、2013年1月に41市長村がサインし、国に提出された。翁長氏は、3年前の知事選でこの建白書の実現を訴えて当選。以後、この建白書実現が県政の最重点課題の一つとなっている。