辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(2)

(2)工事予定海域でのサンゴ生息調査と環境監視等委員会への報告

 

  沖縄防衛局は、環境省が策定した「海洋生物レッドリスト (2017)」にオキナワハマサンゴ等の15種のサンゴ類が掲載されたことを受け、2017年6月26日から9月18日にかけて辺野古新基地建設に伴う埋め立てを予定している海域で生息状況を調査し、絶滅危惧Ⅱ類のオキナワハマサンゴ2群体、準絶滅危惧のヒメサンゴ12群体を発見した。
 同局は、9月27日開かれた第9回環境監視等委員会に調査・確認結果の経緯を、「平成 29 年7 月5日から7 月22 日にかけて、オキナワハマサンゴ (2 群体)及びヒメサンゴ (12 群体)と思われるサンゴ類14群体を確認。これ14群体のうち、13群体のサンゴは調査時に白化が見られたことから、その生息状況を確認するため、8月18日、当該14群体について、再度確認調査を行ったところ、オキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ1群体の生存、オキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ5群体の死亡、ヒメサンゴ6群体の消失を確認。更に、9月1目、残るオキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ1群体について、再度確認調査を行ったところ、ヒメサンゴについては、藻類が付着し死亡が確認。 その後、9月18日に、残るオキナワハマサンゴ1群体について、再確認調査を行い、生息状況を確認」したと報告した。
 沖縄防衛局は、サンゴの死滅・消失について、「オキナワハマサンゴ確認位置に近い K-l護岸及び K-2護岸施工時の汚濁防止枠を 2重化(オキナワハマサンゴ確認位置から離れているN-5護岸施工時の汚濁防止枠は 1重として計算)することにより、本サンゴ1群体周辺の水の濁りは、海藻類や魚介類に対する濁りの影響濃度に関する知見を基に設定され(水産用水基準(日本水産資源保護協会。2006) )、サンゴ類が生育する海域を含め、海上工事中の水の濁りの影響の環境監視基準として広く適用されている環境保全目標値 2mg/L を下回る結果が得られたことからすれば、当該施工に伴い、本サンゴ1群体の生息範囲には同値を超える濁りは拡散しないと予測され、その生息環境は保全されるものと認識」していると工事の影響を否定。その根拠としてK-1護岸、N-5護岸着手時及び完了時の流れの変化・水温の変化・塩分濃度の変化をあげた。こうしたことから「移植対象としているオキナワハマサンゴ1群体は、確認当初(7月5日)と比較して、その後の夏季の高水温による影響と考えられる白化現象(部分由化)が進んでいる状況が確認されている」と結論付け、「高水温が今後も継続する可能性があることを考慮すると、早急に移植することが有効と考えられる」ことから「本委員会終了後、再度生息状況を確認した上で、沖縄県に対し特別採捕許可申請を行い、許可が得られれば、速やかに移植するよう努める」と表明した。
 委員からは「コントロールポイントとして、①実際の本群体のポイント、それから②工事海域のポイント、③工事海域から十分離れたポイント、④移植先のポイントという形で、例えばこれで、③のポイントもサンゴが死んでしまって、移植先でも死んでしまったら、全体の環境の悪化ということになりますね。ただ一方で、工事の海域や移植先で死んでいるけれども、③では生き残っていれば、工事の影響あるいは移植の影響が考えられるわけですから、周辺海域との比較で行わないと、工事の影響はどうかというのはわかりませんので、その点、今後の工事に際して十分注意してください。それから、現在一部白化しているサンゴを移植するということですけれども、もう9月になって水温が下がっていきますので、白化から回復している可能性が高いですが、白化したサンゴは弱っていますので、それを移植する際には、十分注意してください。今後も水温が下がっていくことからサンゴの生息状況を確認しながら移植するようにしてください」などの意見が出され、委員長は「水温のモニタリングをしっかりしなさいと、それからレファレンスの場所等適切に比較対照としながら、工事の影響を確認しながら進めていただきたいというところ。移植につきましては、サンゴの生息状況を確認しながら実施しなさいとの条件を頂きました。では、そのような条件を当委員会からの指導・助言として事務局に提示したい」とまとめている。