辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(1)

(1)沖縄防衛局のサンゴ採捕問題の視点
 沖縄防衛局は2017年10月26日、沖縄県に「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書に基づく環境保全措置を目的とした造礁サンゴ類の移植技術に関する試験研究」を目的に、「沖縄県漁業調整規則第33条第2項及び第40条」の適用除外の許可を受けたいとして特別採捕許可申請書を提出した。沖縄県は、これを受理し、審査をおこなってきたが、2月16日に特別採捕許可した。「標準的な審査期間は45日」とされていたが、防衛局は許可を得るのに110日を要した。
県が採捕を許可したことで、翁長知事に対し批判の声が出ている。サンゴを壊さないでほしいという思いからの批判である。新基地建設工事を止める知事権限の一つと言われていたから、失望した向きもあっただろう。
 埋立承認取り消しを取り消した以上、取り消し以前の段階に戻り、沖縄防衛局が出してくる諸手続きに対応しなければならないから、防衛局が法令にのっとりだしてきた申請については、審査の上、許可しなければならない。ただし、法令や県との約束に反する内容があれば、指摘し、取り下げて出し直しを求めることや、許可後に違反があった場合、許可取り消しを行う。こういう仕組みである以上、「敵失」がなければなかなか不許可にはならない。しかし、内容に不備があれば、その指摘を乗り越えるため、相当の時間を要することになる。この点に注目すれば今回のオキナワハマサンゴの移植許可をうるのに「標準的な審査期間」の倍以上の時間を要したことは、官邸からまだ許可が出ないのかとつめまくられたであろう防衛局は毎日が針のむしろに座らされている心境だったのではないか。実際、沖縄防衛局は、許可がいつおりますかと毎日のように県に問い合わせをかけ、しまいには「県庁に伺いますよ」と圧力をかけたという。自民党県議も代表質問で「採捕申請について引き延ばし続けている」と追及する質問通告も出していた。政府と自民党は、あらゆる手を使って県に圧力をかけたから、2月16日の許可は、タイムテーブルとしてはぎりぎりのところだったろう。
とはいえ、これだけで「県は国の攻勢に抗しきれなかった」という評価をくだすことは、適切だろうか。
 県が「法令に基づいて厳正に審査」し、標準日数を大幅に超える日数をかけたことに注目すべきではないか。防衛局の採捕許可申請は、第9回環境監視等委員会の検討に基づくもので、専門家の助言を得てのものであったが、県は防衛局の採捕計画について強い疑問をいくつも持ったのだろう。質問を2度も投げかけている。さらにレッドリストを所管する環境省にも紹介し、オキナワハマサンゴの知見を聞いている。オキナワハマサンゴの特徴が十分わかっておらず、移植技術も確立していないことが明らかになった。こうしたやりとりを通じてサンゴの移植を右から左に承認するのではなく、しっかりした報告を県にすることも注文したのである。
 県の質問に対する防衛局の回答は、現段階では公表されていないが、沖縄県は防衛局に何度も問い合わせや内容の不備を指摘し、一定程度の縛りをかけることができたのではないか。そういう評価が成り立つのであれば、採捕許可にたいする見方を大きく変えざるをえなくなろう。許可に至る経緯をていねいに見ていきたい。