横浜と長崎のクルーズ船での集団感染から何を学ぶか

 新型コロナウイルスは、クルーズ船内での集団感染を引き起こし、大きな問題となったが、横浜に停泊していたダイヤモンド・プリンセス号は5月16日に横浜港を出港。長崎市香焼に入港していたコスタ・アトランチカ号は、今月中には出港できる見通しとなった。ダイヤモンド・プリンセス号は、乗員・乗客723人の患者が確認され、うち13人が亡くなった。コスタ・アトランチカ号は、修理のため香焼の三菱造船所に入港、乗客はなく乗員の623人だったが、陽性は150人以上となった。

[ダイヤモンド・プリンセス号での検証されるべき点]

 ダイヤモンド・プリンセス号の場合、まず、問題とされたのは、横浜港に入港する前から感染者が船内で発生したことが分かっているのに、なぜ、入港が拒否できなかったのかということだった。コロナ感染で入港を拒否され海上をさまよったクルーズ船が相次いだ。早急に入港させ、必要な医療を保障することは人道上、優先されるべきだが、現実には、受け入れ地に医療体制があるのかという問題がある。この点では、いますぐにとはなっていないが、日本政府も国際的なルールづくりが必要だと考えているようだ。

 寄港地の行政機関に対して、クルーズ船の運航会社が船内の情報(乗客の感染情報を含めて)をきちんと伝えていたかどうかも問題になった。ダイヤモンド・プリンセス号は、横浜港に着く前の2月1日、那覇港に入港したが、その時点で複数の発症者がいた(2月20日国立感染症研究所の資料)。ところが沖縄県には感染情報が伝わっておらず、ほとんどの乗客が那覇で一時下船した。そのため、乗客との接触があったのではと沖縄県内では大きな不安に襲われた。沖縄経済は、観光産業に負うところが大きい。その柱の一つが、中国・台湾・韓国などからのクルーズ船である。

 感染症の専門家がクルーズ船内の深刻な状況を発信して、ようやく、船内での検疫体制の確立が図られた。このことも大きな教訓となった。

[コスタ・アトランチカ号での検証されるべき点]

 コスタ・アトランチカ号の場合、乗客なしとはいえ、700人以上の乗員が対象となり、大規模なことから自衛隊の出動を要した。

 長崎のクルーズ船修繕の拠点化構想は、国も交えて進められてきたが、おそらく今回のような負のリスクは考慮されていなかったであろう。

 5月11日の決算発表会見で三菱重工業泉沢清次社長は、「(船内集団感染が)全て解決してから、(拠点化構想についても)どうするかの議論になる」との見解を示した(長崎新聞)。同構想の一定の見直しは必至であろう。

 中村法道知事は、寄港前のクルーズ船内の情報を入手できる仕組みを作り、感染症が発生した場合、関係機関が迅速に対応できる連携体制を構築する意向を明らかにした(5月12日の記者会見)。また、長崎県は、入港の見合わせや係留施設利用の規制などについて検討していく考えを示している。

 クルーズ船内での集団感染が発生した場合の対応については、医療体制、行政の体制、船会社の責任範囲の明確化、国際ルールなど、多面にわたる検証が必要である