サンゴ移植の許可失効と不許可 行政の厳正審査で

 沖縄防衛局が名護市辺野古で進めている新基地建設の埋め立て海域で見つかったサンゴの移植は、採捕が許可された「オキナワハマサンゴ」については、3月1日に期限が切れ、移植がおこなわれないまま、許可の失効となり、他の申請については不許可となった。一部報道では、「政治判断だ」という評価もあったが、やや不正確に思う。結論的に言えば、失効及び不許可は、政治判断という要素はほとんど見られず、徹底した審査に基づいて導かれた判断であった。平易な言葉で言えば、沖縄防衛局の採捕許可申請は、「試験移植」としての要件を満たしておらず、申請を出し直しなさいということである。自然保護団体の抗議を受けて、許可を取り消したり、認めなかったということではない。

 

 ●生態的な知見なく、慎重に審査
沖縄防衛局は、環境省レッドリストに載っている「オキナワハマサンゴ」(絶滅危惧種)、「ヒメサンゴ」(準絶滅危惧種)を「試験移植」の目的で、書類上、5件の申請を行った。
昨年10月26日に申請した「オキナワハマサンゴ」は、県が目安としている45日の「標準処理期間」を大きく超える113日の審査を行い、水産資源の保護培養の趣旨から総合的に判断し許可した。その後、食害が見つかり、移植しないまま3月1日の許可期限が過ぎ、失効となった。県の担当部局は、2カ月の延長をと言ってきたが、それがだとうかどうか判断できない、それよりも申請をやり直した方がいいでしょと、押し返した。
 審査が長期になった理由について、県は、オキナワハマサンゴに関する生態的な知見が十分集積されていず、慎重に対応する必要があったと県は言っている。
環境省は、県の問い合わせに「オキナワハマサンゴが内湾的環境に生息し、波高が低い場所に生息状況から推察すれば、同サンゴの移植先については、波浪、潮流の影響を受けにくいと考える場所を選定する必要があると考えられる」としながらも、「移植先については、必ずしも内湾的環境に限られたものと示されているものではない」と回答している。
 県は、移植後初期の状態把握が必要と判断し、「移植後、当分の間、おおむね1週間ごとに経過観察をおこない、そのつど、県へ報告をおこなうこと」という条件を付けて採捕を許可した。モニターは、何カ月と切るのではなく、移植したサンゴが健全になったことが確認されるまでで、防衛局と協議しながらやっていくのだという。

 

食害の発覚 防衛局は、県の主張を受け入れて環境監視等委員会を得ることにし、申請を出し直すことに
一旦、県の許可が出たものの、沖縄防衛局の観察の中で「食害」が見つかった。この新しい事態の中で県は、沖縄防衛局に環境監視等委員会の助言を得るよう求めた。沖縄防衛局は、県の指摘を受け、環境監視等委員会の助言を得ることにした。といっても最初は、何人かの委員に聞いて済まそうとしていたようだが、県は、それにダメ出しをし、あくまで環境監視等委員会を開いて助言を得るべきだと主張したという。このため3月1日までに食害対策をしめすことができないまま、期限切れを迎えた。沖縄防衛局は2カ月の延長を要請したが、県は、2カ月が妥当か判断できないとして、申請の出し直しを求め、許可失効となった。

 

3月2日の4件の申請 食害対策示されず、ヒメサンゴの移植先も不適切と指摘
沖縄防衛局は、移植許可が失効した翌日の3月2日、オキナワハマサンゴ、ヒメサンゴの4件の採捕許可を申請した。県は、この申請にたいしても、オキナワハマサンゴについては食害対策が不十分だと指摘し、ヒメサンゴについては、移植先のサンゴモ類の生育状況との関係を考慮するよう提起した。
 県が防衛局に送った文書では、次のような指摘をしている。
 「今回、貴局(沖縄防衛局)職員による報告のとおり食害であるとするならば、本種(オキナワハマサンゴ)における食害の影響は、その生残や再生産にとって非常に憂慮されるべき事象である。オキナワハマサンゴの移植技術を検討するにあたっては、これまでの一般的なサンゴ類の移植にとどまらず、小型種が対象であることを前提に、食害対策に係る計画の検討が不可欠であることがこの度判明したところであるが、本件許可申請においては、その計画はなされていない」
 「本件申請において、移植先で確認されているヒメサンゴは2群体のみであり、いずれも10ミリに満たない大きさで、群体の周辺にサンゴモ類の明らかな繁茂がみられることから、やがてサンゴモ類に覆われて死滅する可能性が高いと考えられる」
 沖縄防衛局の主張だけで移植を進めれば、サンゴの生存は危うい、そのことを顕在化させる指摘である。
環境監視等委員会にもサンゴの移植に関する専門家はいないというのは事実のようだが、それでもサンゴの研究をしている学者も入っている。その専門家の助言なしにことを進めることはできない。あくまで「試験移植」であり、その態をなさなければならない。
 そしてこの県の審査のあり方から見て取れるのは、行政としての厳正審査が、沖縄防衛局にとって巨大な壁となって立ちはだかっているということができる。この壁を前にして、沖縄防衛局はたじろぎ、焦っているのではないだろうか。

 

法令上の要件満たさなければ不許可もと翁長知事
 翁長雄志知事は、今後の申請に関して「法令上の要件を満たしていなければ不許可も含め厳正に対処する」としている。基地建設で移植対象となるサンゴは約7万4000件。工事前にサンゴの移植を行うとする留意事項を沖縄防衛局が遵守するのであれば、埋め立て開始がいつになるのか、見通しはたたないということにならざるを得ない。留意事項違反を承知で6月にも埋め立てを開始するのだろうか。追い詰められているのは沖縄県ではなく、政府の方であることは間違いない。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(5)

(5)沖縄県は沖縄防衛局の移植許可申請で何を質したか

  沖縄県が2月16日付でいったん許可したオキナワハマサンゴの特別採捕許可は、その後、食害が見つかり、事態が大きく変わった。最終的には、許可の延長ではなく、期限が切れたのだから失効とし、申請のやり直しを県は防衛局に求めた。この経過については、別の機会に取り上げたいと思うが、県が特別採捕許可を出すにあたって、防衛局との間でどのようなやり取りをしたかを見ておきたい。

【県の最初の質問文書】 
1 採捕対象となっている動植物について。
採捕対象となっているオキナワハマサンゴについて貴局で把握されている最新の状態を写真等を用いて具体的に説明してください。また、当該サンゴの状態が今回計画されている試験研究に与える影響について貴局の認識をお示しください。
2 採捕の期間について
 採捕に必要な期間について貴局で把握されている当該サンゴの最新の状態を踏まえたうえで採捕の期間、その設定理由、環境監視等委員会委員の指摘事項等の整合性について具体的に説明してください。
3 使用漁具及び漁法について
 当該サンゴの採捕方法について、今回計画した方法を別の方法と比較検討した経緯があれば、その検討結果を示してください。また試験研究結果に及ぼす採捕方法の影響を事後に評価する基準について具体的に説明してください。
その他、試験研究計画について
1 採捕対象サンゴの運搬方法について
 今回計画した方法を、別の手段と比較検討した経緯があれば、その検討結果を示してください。また、試験研究結果に及ぼす運搬方法の影響を事後に評価する基準について具体的に説明してください。
2 採捕サンゴの固定方法について
 今回計画した方法を、別の方法と比較検討した経緯があれば、その検討結果を示してください。また、試験研究結果に及ぼす固定方法の影響を事後に評価する基準について具体的に説明してください。
3 採捕対象サンゴの移植先の海域について
 サンゴ礁の地形構造の面から評価したうえで通常時以外も含め当該海域の波あたりや流れの特性に関する貴局の認識をお示しください。
4 採捕対象サンゴの移植先で確認されているオキナワハマサンゴ5群体について
 貴局で把握されている最新の状態を写真等を用いて具体的に説明してください。

【2度目の県質問】
日付は12月15日。
Ⅰ 本件許可申請について。
1 貴職は本件許可申請において試験研究の目的をオキナワハマサンゴの移植技術の向上とされておりますが、貴職が認識されている移植技術とはどのようなものか、具体的に説明願います。
2 採捕対象となっているオキナワハマサンゴの状況について
 回答書によると貴局では、許可申請書提出前までに少なくとも3回の確認を行っていたにも関わらず、許可申請書ではその事実が反映されることなく、部分白化が進んでいる状況が確認されていることを前提とした試験研究計画となっております。本件許可申請で掲げられている試験研究の目的からすると、本件サンゴの状況が少なからず試験研究結果に影響を与えることは至極当然のことであり、そのため本件サンゴが部分白化が進んでいる状況にあるのか、または白化からの回復傾向にあるのか、もしくは白化から回復していると考えられるのかによって試験研究の計画はおのずと異なるものと認識しております。本件許可申請を行うにあたり、本件サンゴの最新の状況を反映させなかった理由について説明願います。
3 回答書の1―2
 本件サンゴの状態は、すでに移植しうる状態まで回復していると考えているとありますが、本件サンゴの現在の状況が、今回計画されている試験研究に影響を与える状態にあるか、貴職の認識を説明願います。
Ⅱ 採捕の期間について
 採捕の期間について採捕の許可申請書では、「当該オキナワハマサンゴ1群体は部分白化が進んでいる状況が確認されている。高水温が今後も継続する可能性があることを考慮すると、早急に移植することが有効と考えられる。以上のことを踏まえると当該オキナワハマサンゴ1群体については、上記期間に移植することが望ましいと考えられる」とあり、回答書では、「許可を得た後、準備期間及び海象解消を考慮したうえで移植作業を行うために必要な期間として設定したものです」とされております。採捕の期間の設定については、いずれの考え方をとられたものなのか、改めて説明願います。
Ⅲ 使用漁具及び漁法、運搬方法、固定方法について
1 貴職は、使用漁具及び漁法、運搬方法、固定方法という今回の試験研究における各種方法に関し、回答書において「今回の採捕方法による移植が成功すれば、今回の採捕方法は適切であったと評価できる」とされておりますが、何を持って移植が成功したと判断されるのか、具体的に説明願います。
2 また、適切であったと評価できるとする根拠について説明願います。
3 貴職は、「仮に今回の採捕方法による移植が失敗した場合であっても採捕方法が不適切であったのか、移植先が不適切であったのか等は、ただちに判明できないものと認識している」とされておりますが、何を持って失敗と判断されるのか、具体的に説明願います。
4 その一方で、「いずれにせよ当局としては、移植作業後、本件サンゴの生存状況等を確認するモニタリング調査を行うこと」としており、「当該調査結果や採捕の方法について移植後、環境監視等委員会に報告し、その意見を踏まえて検証する」とありますが、何についてモニタリングを行うこととされているのか、具体的なモニタリング項目と、その検証方法について説明願います。
Ⅳ 採捕対象サンゴの移植先について
1 許可申請書参考資料1の6ページにおいてオキナワハマサンゴの移植にあたっての必要な環境配慮のなかで「特に本種は内湾的環境に生息し、波高が低い場所に分布することから波浪、潮流の影響を受けにくいと考えられる場所を選定するよう留意する」と指摘されております。本種は移植先とされている海域は、サンゴ礁における自然地理学的には、前方礁原(礁堡)にあたると認識しており、うち湾的環境には当たらないと理解しておりますが、貴職の認識を説明願います。
2 貴職は、回答書において別添3の資料を示すことで本件サンゴの移植先の固定位置について荒天時の状況を勘案しても適切なものと考えられるとされておりますが、本職は、当該資料の意味について移植対象種の生息環境を考慮してその適地を移植先と選定したうえで、さらに移植したサンゴ類の生存率低下に影響する高波浪等の影響を緩和する措置として検討されたものであり、移植先としての海域選定の直接的な考慮要件ではないと理解しておりますが、貴職の認識を説明願います。

 これら二つの質問は、通り一遍の審査ではなく、法令にもとづいて一つひとつ厳格に判断する姿勢が貫かれていることを感じる。このことは、はっきり認識されるべきだろう。残念ながら、現段階では、防衛局の回答を入手できていない。しかし、環境監視等委員会で配布されている防衛局資料からは、県の質問にはまともに回答できなかったであろう。県の担当職員も「一般的な回答しかなかった」と述べているから、まともな回答と言えるものがなかったといいて、間違いはないだろう。そのことは、食害を受けたオキナワハマサンゴの件で沖縄防衛局は、採捕期間の延長を求めたが、県に環境監視等委員会の助言を得るべしと促され、県の言うことを受け入れざるを得なくなった。ここに、県の徹底審査が端的に表れている。
 防衛局にしてみれば、1件のサンゴ移植許可に何カ月もかかる、1万7000あるというサンゴの移植に何年かかるのかという深刻な問題に発展せざるを得ないかもしれず、大きな不安をもったことであろう。むろん、これまで何度も違法無法を重ねてきた防衛局が、もうサンゴの移植をやめたといって、埋立に走るかもしれない。そうなればいよいよ政府は、深刻な事態に立ち入ることになる。
 サンゴをまもるために採捕許可をしてほしくないとの思いは当然だが、国の違法無法とどうたたかうか、その角度から県行政を見る視点も必要と思う。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(4)

(4)沖縄防衛局の特別採捕許可申請
 サンゴの特別採捕許可申請書によれば、<採捕の期間>は、「許可の日から14日間のうちの1日使用」で、<漁具及び漁法>は、「潜水器使用による採捕(タガネ及びハンマーを用いた人力による採取)」としている。(サンゴ類移植に使用する船舶の一覧、採捕に従事する者の住所、氏名、潜水士免許証番号及び交付年月日も記載されているが、公開された申請書ではこの部分は黒塗りされている)
申請書に添付された「調査計画書」には、調査目的について次のように記載されている。

 「目的
 普天間飛行場代替施設建設事業の埋立等により消失する区域のうち、辺野古側において環境省「海洋生物レッドリスト(2017)J (以下「環境省レッドリスト」という。)に掲載されたオキナワハマサンゴ1群体の存在が確認されており、事業実施に伴う環境保全措置として当該サンゴ類の移植を実施することとしている。一方、サンゴ類の移植技術は、未だに十分に確立された状況にない。
 当局は、公有水面埋立承認願書(平成25年3月22日付け沖防第1123号)に添付した環境保全に関し講じる措置を記載した図書(以下「環境保全図書」という。)において、「事業実施前に、移植・移築作業の手順、移植・移築先の環境条件やサンゴ類の種類による環境適応性、採捕したサンゴ類の仮置き・養生といった具体的方策について、専門家等の指導・助言を得」ることとして、貴職から埋立承認処分を受けており、上記「専門家等の指導・助言を得」るために設置された環境監視等委員会の第9回委員会(本年9月27日)において、本件特別採捕許可申請の対象であるオキナワハマサンゴ1群体を本申請書記載の方法で移植することについて、指導・助言を得たところである。
 以上を踏まえ、本調査は、普天間飛行場代替施設建設事業の埋立等により消失する区域のうち、辺野古側で確認されたオキナワハマサンゴ1群体の移植を行うとともに、移植実施後の生息状況、成長度合いのモニタリング調査を実施することで、当該サンゴの移植の妥当性の評価を行い、その移植技術の向上を目指すものである。」

 調査計画書は、「基本方針」として「当該サンゴの移植に当たっては、オキナワハマサンゴ(ハマサンゴ属)の特性及び環境保全図書の記載、平成27年7月の第4回環境監視等委員会資料「サンゴ類に関する環境保全措置【サンゴ類の移植・移築計画】」を踏まえ、環境監視等委員会の指導・助言を改めて得た結果、一般のサンゴ類と同様に、「これまで得られた現地調査結果の情報や、沖縄県のサンゴ移植マニュアル等の既往資料の情報を踏まえながら、環境が類似し、同様なサンゴ種が生息するとともに、移植先のサンゴ群生への影響が少ないと予測される場所を選定し、最も適切と考えられる手法による移植を実施。さらに、その後の生息状況を事後調査する。」方針」であると述べている。
 「移植先の選定」については、「環境保全図書に記載した移植先想定地域のうち、同様の地形・地質と考えられる地点においてマンタ調査により底質状況、水深帯を観察し、移植元の環境と類似した場所において、定点調査を行い、同様のサンゴ種の分布状況を確認。調査の結果、移植元と環境が類似し、同様なサンゴ種が生息するとともに、移植先のサンゴ群生への影響が少ないと予測される場所として、「辺野古崎前面海域」を移植先とする計画。」と説明している。

 沖縄防衛局は調査研究機関ではないから、「造礁サンゴ類の移植技術に関する試験研究」などありえず、「試験研究」として許可するのか疑問とする意見ももっともである。
 実際、昨年、沖縄防衛局は、工事予定海域の生息する希少サンゴを発見しておきながら白化の進行を止める手立てもとらないまま放置し、死滅したあと県に報告した。このような不誠実さが続く限り、県民から信用されないのは当然だ。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(3)

(3)沖縄県への報告の遅れを県は批判
 沖縄県にはその翌日の9月28日に説明した。翁長知事は、「環境保全の視点を欠き、工事を優先する姿勢は大変遺憾だ」と批判し、▽サンゴの発見は7月だったが県への報告がなかった▽事前協議なくK9護岸に係船機能を持たせた施工をしている-ことを問題視し、サンゴの保全対策とK9護岸の実施設計に関する協議が調うまで工事を実施しないよう求めた。
 県が沖縄防衛局に出した抗議文書は、留意事項に照らして不適切な内容として、「(1)事前協議が調わないままに工事に着手し、事業実施区域内で確認された環境省版海洋生物レッドリスト対象の2種14群体のサンゴ群体が7月に確認されたことについて県に報告しなかったこと。また、その保全対策を県と協議しなかったこと。(2) K -9護岸の施工において、事前協議を行わずに、当初の目的にはない係船機能を持たせた施工をしており、実施設計協議で示された設計内容と異なっている可能性があること」を指摘した。そのうえで、「(I)工事に係る県の立入調査に対し、速やかに応じること。(2) サンゴ類の環境保全対策について県と協議し、協議が調うまでは工事を再開しないこと。(3) K -9誕岸を桟橋として使用して海上運搬を行う件について、実施設計及び環境保全対策等について県と事前協議をやり直すこと。また、協議が調うまでは海上運搬を実施しないこと。」の3点を求めた。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(2)

(2)工事予定海域でのサンゴ生息調査と環境監視等委員会への報告

 

  沖縄防衛局は、環境省が策定した「海洋生物レッドリスト (2017)」にオキナワハマサンゴ等の15種のサンゴ類が掲載されたことを受け、2017年6月26日から9月18日にかけて辺野古新基地建設に伴う埋め立てを予定している海域で生息状況を調査し、絶滅危惧Ⅱ類のオキナワハマサンゴ2群体、準絶滅危惧のヒメサンゴ12群体を発見した。
 同局は、9月27日開かれた第9回環境監視等委員会に調査・確認結果の経緯を、「平成 29 年7 月5日から7 月22 日にかけて、オキナワハマサンゴ (2 群体)及びヒメサンゴ (12 群体)と思われるサンゴ類14群体を確認。これ14群体のうち、13群体のサンゴは調査時に白化が見られたことから、その生息状況を確認するため、8月18日、当該14群体について、再度確認調査を行ったところ、オキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ1群体の生存、オキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ5群体の死亡、ヒメサンゴ6群体の消失を確認。更に、9月1目、残るオキナワハマサンゴ1群体及びヒメサンゴ1群体について、再度確認調査を行ったところ、ヒメサンゴについては、藻類が付着し死亡が確認。 その後、9月18日に、残るオキナワハマサンゴ1群体について、再確認調査を行い、生息状況を確認」したと報告した。
 沖縄防衛局は、サンゴの死滅・消失について、「オキナワハマサンゴ確認位置に近い K-l護岸及び K-2護岸施工時の汚濁防止枠を 2重化(オキナワハマサンゴ確認位置から離れているN-5護岸施工時の汚濁防止枠は 1重として計算)することにより、本サンゴ1群体周辺の水の濁りは、海藻類や魚介類に対する濁りの影響濃度に関する知見を基に設定され(水産用水基準(日本水産資源保護協会。2006) )、サンゴ類が生育する海域を含め、海上工事中の水の濁りの影響の環境監視基準として広く適用されている環境保全目標値 2mg/L を下回る結果が得られたことからすれば、当該施工に伴い、本サンゴ1群体の生息範囲には同値を超える濁りは拡散しないと予測され、その生息環境は保全されるものと認識」していると工事の影響を否定。その根拠としてK-1護岸、N-5護岸着手時及び完了時の流れの変化・水温の変化・塩分濃度の変化をあげた。こうしたことから「移植対象としているオキナワハマサンゴ1群体は、確認当初(7月5日)と比較して、その後の夏季の高水温による影響と考えられる白化現象(部分由化)が進んでいる状況が確認されている」と結論付け、「高水温が今後も継続する可能性があることを考慮すると、早急に移植することが有効と考えられる」ことから「本委員会終了後、再度生息状況を確認した上で、沖縄県に対し特別採捕許可申請を行い、許可が得られれば、速やかに移植するよう努める」と表明した。
 委員からは「コントロールポイントとして、①実際の本群体のポイント、それから②工事海域のポイント、③工事海域から十分離れたポイント、④移植先のポイントという形で、例えばこれで、③のポイントもサンゴが死んでしまって、移植先でも死んでしまったら、全体の環境の悪化ということになりますね。ただ一方で、工事の海域や移植先で死んでいるけれども、③では生き残っていれば、工事の影響あるいは移植の影響が考えられるわけですから、周辺海域との比較で行わないと、工事の影響はどうかというのはわかりませんので、その点、今後の工事に際して十分注意してください。それから、現在一部白化しているサンゴを移植するということですけれども、もう9月になって水温が下がっていきますので、白化から回復している可能性が高いですが、白化したサンゴは弱っていますので、それを移植する際には、十分注意してください。今後も水温が下がっていくことからサンゴの生息状況を確認しながら移植するようにしてください」などの意見が出され、委員長は「水温のモニタリングをしっかりしなさいと、それからレファレンスの場所等適切に比較対照としながら、工事の影響を確認しながら進めていただきたいというところ。移植につきましては、サンゴの生息状況を確認しながら実施しなさいとの条件を頂きました。では、そのような条件を当委員会からの指導・助言として事務局に提示したい」とまとめている。

辺野古新基地建設に伴うサンゴの移植問題(1)

(1)沖縄防衛局のサンゴ採捕問題の視点
 沖縄防衛局は2017年10月26日、沖縄県に「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価書に基づく環境保全措置を目的とした造礁サンゴ類の移植技術に関する試験研究」を目的に、「沖縄県漁業調整規則第33条第2項及び第40条」の適用除外の許可を受けたいとして特別採捕許可申請書を提出した。沖縄県は、これを受理し、審査をおこなってきたが、2月16日に特別採捕許可した。「標準的な審査期間は45日」とされていたが、防衛局は許可を得るのに110日を要した。
県が採捕を許可したことで、翁長知事に対し批判の声が出ている。サンゴを壊さないでほしいという思いからの批判である。新基地建設工事を止める知事権限の一つと言われていたから、失望した向きもあっただろう。
 埋立承認取り消しを取り消した以上、取り消し以前の段階に戻り、沖縄防衛局が出してくる諸手続きに対応しなければならないから、防衛局が法令にのっとりだしてきた申請については、審査の上、許可しなければならない。ただし、法令や県との約束に反する内容があれば、指摘し、取り下げて出し直しを求めることや、許可後に違反があった場合、許可取り消しを行う。こういう仕組みである以上、「敵失」がなければなかなか不許可にはならない。しかし、内容に不備があれば、その指摘を乗り越えるため、相当の時間を要することになる。この点に注目すれば今回のオキナワハマサンゴの移植許可をうるのに「標準的な審査期間」の倍以上の時間を要したことは、官邸からまだ許可が出ないのかとつめまくられたであろう防衛局は毎日が針のむしろに座らされている心境だったのではないか。実際、沖縄防衛局は、許可がいつおりますかと毎日のように県に問い合わせをかけ、しまいには「県庁に伺いますよ」と圧力をかけたという。自民党県議も代表質問で「採捕申請について引き延ばし続けている」と追及する質問通告も出していた。政府と自民党は、あらゆる手を使って県に圧力をかけたから、2月16日の許可は、タイムテーブルとしてはぎりぎりのところだったろう。
とはいえ、これだけで「県は国の攻勢に抗しきれなかった」という評価をくだすことは、適切だろうか。
 県が「法令に基づいて厳正に審査」し、標準日数を大幅に超える日数をかけたことに注目すべきではないか。防衛局の採捕許可申請は、第9回環境監視等委員会の検討に基づくもので、専門家の助言を得てのものであったが、県は防衛局の採捕計画について強い疑問をいくつも持ったのだろう。質問を2度も投げかけている。さらにレッドリストを所管する環境省にも紹介し、オキナワハマサンゴの知見を聞いている。オキナワハマサンゴの特徴が十分わかっておらず、移植技術も確立していないことが明らかになった。こうしたやりとりを通じてサンゴの移植を右から左に承認するのではなく、しっかりした報告を県にすることも注文したのである。
 県の質問に対する防衛局の回答は、現段階では公表されていないが、沖縄県は防衛局に何度も問い合わせや内容の不備を指摘し、一定程度の縛りをかけることができたのではないか。そういう評価が成り立つのであれば、採捕許可にたいする見方を大きく変えざるをえなくなろう。許可に至る経緯をていねいに見ていきたい。

オスプレイ部品落下で沖縄県議会が抗議決議

 沖縄県議会は2月21日、普天間基地所属の米軍MV22オスプレイがエンジン吸気口を落下させた事故に抗議する日本政府宛ての意見書と米軍にたいする抗議決議を全会一致で可決した。(意見書と抗議決議は、同文)
 オスプレイが落とした部品は、9日午前、うるま市伊計島の大泊ビーチ近くで漂流しているところを発見され、回収された。部品は約13キロあり、近くには最盛期を迎えたモズクの養殖場もあり、漁業関係者や住民、観光客をも巻き込む重大な事故にもつながりかねない状況だった。
 意見書および抗議決議は、日米合意に反して、部品落下の事実を米軍が日本側に通知しなかった点について、「隠ぺいの意図があったと疑わざるを得ない」と強く批判している。
(1) 事故原因の検証と公表、事故防止策
(2) 保育園・学校をはじめ民間地上空の米軍機の飛行・訓練の中止
(3) 直ちに普天間基地の運用停止
(4) 日米地位協定の抜本改定と、航空法の特例を廃止し、米軍に日本の航空法を遵守させること
(5) 在沖米海兵隊の早期国外・県外移転

(6)日米両政府は、米軍関係の事件・事故の改善に向け、当事者としての責任をもって対処すること
以上が要求内容である。

 今回の事故は、単なる部品ではなく、エンジンの空気取り入れ口であり、まさに心臓部での事故であり、航空機に知識のある人は一様に「あり得ない事故だ」と言う。アメリカのシンクタンクが少し前、海兵隊では機体の老朽化とともに整備士不足などが起きているとして重大事故につながる可能性があると警告していた。そういう警告も踏まえながらこの事故を見るべきであろう。

 というのも、米軍機の墜落、不時着、緊急着陸、部品落下。さまざまな事故が繰り返し起きており、県民の不安が増しているといえる。「何か落ちてくるのではないかと気になって、空を見上げてしまう」と言う人が何人もいた。
 2月15日に開かれた沖縄県議会米軍基地関係特別委員会では、2017年1月から2018年1月までに合計10件の普天間基地所属の航空機事故が発生していることが県基地対策課から報告された。肌感覚だけでなく、この統計にもはっきり示されている。
 では、当事者の米軍はどう受け止めているのか。米軍は、点検し、安全性に問題はないと表明して、すぐ飛行を再開させてきた。事故原因を究明した報告書は、数か月後にやっとでてくる。後に続く事故が起きなければいいのだが、毎月のように事故が発生している。
 日米合意で事故が起きたら米軍は日本側に通報することになっている。それが無視されている。

 なお、県議会事務局と在日米軍司令部とのやりとりで分かったことだが、在日米軍司令官は2年前から抗議を受け付けなくなっているという。その理由は、はっきりしない。米軍基地特別委員会の委員の間では、米軍に対応させるため、日本政府や駐日米大使などに働きかけようなどの意見が出ていた。