日本の防衛相はなぜ、ハリス司令官の「不時着は、安全な場所で満足」発言を批判しなかったのか

 小野寺五典防衛相は日本時間10日、米国ハワイでハリス米太平洋軍司令官と会談した。この会談の中で頻発している沖縄での米軍機事故・トラブルについても取り上げられている。以下、防衛省がHPに掲載した「臨時記者会見概要」による。

 

小野寺防衛相 (北朝鮮情勢と対応について意見交換したあと)最後に、沖縄における米軍ヘリの緊急着陸を含む一連の米軍の事故について、地元の不安と御懸念を踏まえ、これまで求めてきた再発防止策や点検・整備の徹底等に関して、今一度抜本的な対策を講じていただくよう申入れを行いました。また、在日米軍再編の着実な進展を含め、地元の負担軽減に引き続き日米で取組むことを確認しました。
記者 大臣の申入れに、ハリス司令官が年々減少していると、ここ2年減少している、これこそ安全運航の証だといったようなお話がありましたが。
防衛相 全体としては、米軍の航空機が、事故が減少していることなのだと思います。だからこそ、なぜ沖縄において今回の不時着事案を含めて続いているのか、このことはむしろ逆に深刻に受け止めていただきたい、そういう思いで今日はお話をさせていただいております。
記者 年間30件とか23から25件とかというのは、在日米軍の航空機の事故の件数として正しいのでしょうか。
防衛相 在日米軍の、おそらく数字上の数ではないかと思います。私も一方的なお話だったので、少し確認をさせて下さい。
記者 ハリス司令官からは、トラブルが生じたときに基地に戻るよりは、安全な場所で不時着をした方がいいというお話だったと思うのですけれども、大臣の見解は。
防衛相 私の理解では、もし万が一警告灯が表示されて、それでも無理に航行を続けて事故になるよりは、なるべく早く安全なところに着陸をして、そして、しっかり点検をするということが大切なのだと思います。ただ今回米軍が緊急着陸をした場所というのは、民家に近い場所であったり、あるいはたくさんお客様がいらっしゃるホテルの近くであったりということなので、これは沖縄の皆様を含め、私どもからすれば、確かに広場であっても、周辺にあれだけ人家があるということは、決して安全な場所ではないと思います。
記者 その点については、今日の会談で、我々が退出した後に御指摘はあったのでしょうか。
防衛相 今日は、他にも様々、北朝鮮その他の案件がありましたので、そこまで詳しくは、触れなかったと思います。

 

 ハリス司令官が会談で米軍の航空機事故は年々減少しているとの認識を示し、「これこそ安全運航の証だ」と主張したことが分かる。沖縄県民の不安と怒りをまともに受け止めていないようだ。さらに、不時着場所について、トラブルが生じたときに基地に戻るよりは、安全な場所で不時着をした方がいいとも話していたというのが防衛相の受け止めであった。
 メディアは「一番近い安全な場所に降ろす措置に満足している」という発言だったと報道している。
 小野寺防衛相は、今回の不時着地点が民家やホテルに近い場所であり、問題だという思いは持っていたようだ。しかし、ハリス司令官にたいしてそのことは指摘しなかった。「他にも様々、北朝鮮その他の案件がありましたので、そこまで詳しくは、触れなかった」という。 
 安全な場所どころか、生活の場所であり、あるいはリゾート地に不時着した。このことを米軍が理解しない限り、県民の生命、財産は脅かされ続ける。たとえ時間がなくとも、防衛相としてはきちんと指摘しておくべきであった。