菅官房長官の北部訓練場年内返還発言について(1)

 昨日10月8日、菅官房長官沖縄県を訪問、ヘリで北部訓練場を視察した後、記者会見でヘリパッドの建設工事は、防衛局の説明通り、年内には完成する見通しで、米国にたいして北部訓練場の「過半の返還」が実現するよう協議する旨語った。

 2016年中に北部訓練場の一部返還(「過半の返還」)をおこなうというのは、今回初めて期限が示されたということではない。今年6月18日ロイターが次のように報じている。

 <沖縄県に駐留する米海兵隊のトップ、ニコルソン中将は18日、ロイターとのインタビューで、本島北部の訓練場の一部を来年初めに日本へ返還する用意があることを明らかにした。19日に県内で大規模なデモが予定されるなど、反米基地感情が急速に強まる中、目に見える形で負担軽減に取り組む姿勢をアピールする。
 ニコルソン中将が言及したのは、7800ヘクタールの訓練場のうち、日米政府が1996年に返還で合意した4000ヘクタール。ヘリコプターの着陸地点(ヘリパッド)の移設を日本側が進めることが条件だが、環境への影響などを懸念する反対で、工事は進んでいない。
 ニコルソン中将は、在沖縄米海兵隊の司令部キャンプ・フォスターで取材に応じ「日米間で協議している」と説明。「今年下半期に動きがあると期待している」と語り、ヘリパッド移設工事が始まる可能性に言及した。着工すれば、およそ2カ月で完成する見込みだという。同中将は、「1972年(の沖縄の日本復帰)以来、最大の返還になる」と強調した。>

 「今年下半期に動きがある」と言っているのは、参院選が終われば工事が再開されるということを意味していた。この言葉通り、参院選の開票作業がまだ続けられている明け方に(参院比例の最終得票がまだ確定していなかった)、工事の資材が運び込まれた。
そして、ここで注目すべきは、「日米間で協議を進めている」という事実であり、米軍は、工事が始まれば「2カ月で完成する」と日本側から説明を受けていることである。参院選前に工事を強行すれば、選挙に影響するから参院選後に着工するが、それでもおそくとも10月には完成すると聞いているということである。
 米軍にとっての沖縄は、老朽化しており、さらに今以上に訓練を増やしたら抜き差しならない政治問題になってしまう普天間基地強襲揚陸艦が接岸できないシュワブ、陸海空を一体的に訓練できる場につくりかえる必要のある北部訓練場、オスプレイの増機とF35Bを受け入れられるように改修する伊江島。それらを一気に今日の米軍が求める水準に1日も早く引き上げたいが、それがいつになるのか、これが日米間での協議のテーマであろう。
 そのながれの中で、菅官房長官は訪沖して、ヘリパッド建設が防衛局の説明通りに進んでいるかを点検したのである。
 衆院来年1月解散説が注目されている。公明党も1月は早すぎると言って首相の専権事項を縛らないようにいまから準備をしておくのが与党というものだといっているらしいので、今回の菅官房長官の発言は、北部訓練場の一部返還を安倍内閣の目玉実績とするため、何がなんでもという計算もあることは容易に想像できる。
 ところが、現実には、10月に入って「G地区」「H地区」の工事が始まったことで明らかなように、工事は大きく遅れているとみてよいのではないか。防衛省の役人のことばは信用できるのか、大いに疑問ではあるが、「年内どころか、来年2月でも難しい」とぼやいているという。
 ヘリパッド建設工事を一気に進めようと、防衛局は違法・無法を繰り返してきた。あげたら切りがない。
▽重機を運ぶために、自衛隊ヘリまで使った
▽抗議行動を押さえるために全国から500人規模の機動隊を投入、非暴力で平和的に座り込んでいる市民を暴力的に排除。このやりかたに抗議の声を上げる人には「公務執行妨害」で恫喝。機動隊に押されて頭を道路に打ち付け出血する負傷者がでても知らんぷり。再三の救急車を呼べという市民の声に押されてようやく呼んだが、県議会では「市民同士のトラブルで負傷者が出て、県警が救急車を呼んだ」と答弁
▽米兵犯罪防止のパトロール隊まで高江警備に当たらせている
▽警察車両が工事作業員を運んでいる。