法廷で裁かれる沖縄戦(2)

 『法廷で裁かれる沖縄戦 訴訟編』は、「市町村単位の戦死率や一家全滅率で一般常民被害が鮮明に」なるという指摘も行っている。「平和の礎」に刻銘されたデータを基礎に算出された戦死率は西原町は63・60%、東風平町は53・24%、浦添市は51・92%、南風原町は50・20%と驚くべき高率である。那覇市も含めた中南部の激戦地の12市町村の合計平均戦死率は44・65%に達する。

 このように人口の半数近くが戦死したところは米軍が戦略的に重要と位置づけ大規模な空襲を行った東京や大阪などの大都市と原爆が投下された広島、長崎だけであろう。ただ、沖縄の場合は地上戦に加え、海と空から3カ月にわたって間断なく「鉄の暴風」が吹き荒れた。その点が東京や大阪の空襲被害とは異なる特徴があるとしている。
 さらに同書は、軍人より民間人犠牲がなぜ多いか、という問題を提起している。沖縄戦は20万を超える戦死者を出したが、そのうち住民の戦死は十数万といわれる。「戦争は常に、弱い立場にある住民を最大の犠牲者にする。日本軍は住民を守護したのではなく、『加害者』として行動したのである。軍隊は住民を守らない。これが沖縄戦の教訓である」と指摘している。