愛知における強制連行問題の取り組み(19)

岩田地崎建設側は宋殿挙氏や劉宝辰教授及び支援する会の要求をどう受け止めたのでしょうか。

 

〔宋殿挙さんの「兄の死亡についての説明を。そして謝罪と補償を」という要求にたいして〕

加藤氏 「皆様の今回要求されている内容については理解致しました。宋さんのお兄さんが地崎組[]働いておられて亡くなられたというお話で、他に亡くなられた方もいらっしゃいますが、それについては心から哀悼の意を表します。当社は6年前に地崎を、地崎工業を岩田建設が吸収合併して、岩田地崎建設と社名を変えております。地崎組、地崎工業がしてきたこと、施工してきたことに対しての責任というものは必然的に受け継いではおります。しかしながら当社は一貫して裁判所の判断に従うということで今までずっとお話をして参りましたし、今この時点でもお話、結論として一応そういう形であると言うことをまずは申し上げなければならないと思います。まあ、今日おうかがいした皆様の要求については、今後私どもの方で検討させていただくということで、今日は結論としてはそういぅご回答しかできないということをお許し願いたいというふうに思います」

〔南氏の「最高裁は西松判決で「関係者は解決のための努力を」と付言している。社会的、道義的責任に従って解決の努力をすべきだというのが裁判所の判断だが、それをどう考えているか」という提起にたいして

加藤氏 「関連した企業、現存する企業は幾つかあると思います。それで、団体を作っておりますので、もしそういう方向に進むのであれば、そういう団体が当然動いて、まあ入っている会員企業、おそらく当然皆入っていると思いますが、さっき申し上げた土木工業会、連合会ですかね[正確には「北海道土木建築業連合会」]、おそらくその前身[正しくは「後身]]が今も存続していると思います、おそらくそういう方向からアプローチがあれば、当然会員企業と一緒にやって行かなければならないことが出てくると思います」

〔南氏の「岩田地崎建設としても解決のための努力をするという意思はあるのか」という問いかけにたいして

加藤氏 「まあ、先ほど言った西松さんも鹿島さんもその団体には入っておられます。日本のリーダーとしても活躍する二つの企業ですから、その団体が、我々の入っている団体がそういう方向に動く可能性はゼロではないと思っております」「単体で動くということはかなり厳しい状況だと思います。まあ、西松さん、鹿島さんが動いて、どれほどの内容のことをしたかちょっとわかりませんが」

 〔交渉の感想を求められて〕

加藤氏 「団体の中で決められることに当社が沿うだけじゃないのかという発言がありましたが、当社もその団体の一員であります。ですから当社の意見はその団体の中では、きちんと言うべきことは言って行くことになりますので、そういうところでとどまって、やるべきことを、もしやる方向になるのであれば、やった方が大きな問題になるのではないかなという発言でした。何もしない、と言うふうに取られたんでは、ちょっと私の意が通じなかったかなと思います。現状としてのスタンスはもう今までのスタンスを今の時点で変えるということは無理なので、裁判所の指示に従うという意見はそのまま現時点でのスタンスです。今日要求されたことに対する回答は、真摯に受け止めて、させていただきたいと思います」

 

南守夫さんは交渉内容について、①宋殿挙氏はじめ私たちの要求内容を理解したこと、②宋学海氏をはじめとした死者に哀悼の意を表すること、③現時点では、「裁判所の判断に従う」という従来の立場を変えてはいないこと、④ただし、業界団体の中で解決の為の動きがあれば、単に受動的ではなく、しかるべき発言はする意思はあること―の4点を挙げ、「限界は明らかだが、一定程度、『真摯』な対応を見せた」と受け止めると話しています。