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高江オスプレイパッド建設差し止め訴訟(3)

 高江オスプレイパッド建設差し止め訴訟の訴状では、SACO合意の内容と合意の経緯、そして問題点について次のように整理している。

<SACO合意の問題点>
 1995年秋、米軍用地強制使用手続の更新期に発生した米兵による少女暴行事件は、それまで沖縄県民の中に鬱積していた米軍基地問題に対する怒りを表出させ、米軍基地問題のさまざまな矛盾や問題点を浮き彫りにして、国民的な批判を巻き起こし、日米両政府に沖縄基地の現状の根本的見直しを迫ることになった。その内容は、①基地の整理・縮小と、②日米地位協定の見直し、の二点に集約される。
 このような状況にあって、日米両政府は、沖縄に関する特別行動委員会 (SACO)を設置 して対応策を検討することになったが、その検討結果は、住民の要求とはほど遠いものであった。
 すなわち、①については、基地撤去の段階的プロセスとしての整理・縮小・撤去を、整理・統合・縮小にすり替え、基地を整理・統合して面積は現在の20%程度縮小するけれども、老朽化した基地を最新鋭のものに作り替え基地機能は強化する、というのである。その本質は、住民の要求を利用した基地の再編強化政策であり、在日米軍が沖縄に集中している状態も、まったく変わりはない。

<SACO合意のプロセス>
 ア  1995年 11月 19日 、村山富市総理大臣(当時)とゴア副大統領(当時)の会談で、「沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会 (SA CO)」の設置が決定した(但し、翌 1996年 4月15日のSACO中間合意以降「沖縄に関する特別行動委員会」に改称。)
SACOは、少女暴行事件がきっかけとなって強まった沖縄県民の基地の整理縮小という要求を受けて発足したものであったが、話し合いがどのような経過を辿ったかは、まったく報じられず、密室での作業であった。
 イ  1996年 1月30日、大田昌秀知事 (当時)のもと、沖縄県は2015年までに沖縄の米軍基地を段階的に返還させる「基地返還アクションプログラム」を発表した (以下:「アクションプログラム」と呼ぶ。) このアクションプログラムは、①2001年までに普天間飛行場など10か所、②2010年までに牧港補給地区など14か所、③2015年までに嘉手納基地など残りのすべてを返還させるという計画であった。
 1996年 4月12日、当時の橋本龍太郎首相とモンデール駐日大使は、「普天間基地を全面返還する。」と、共同記者会見で発表した。なんの前触れもなく発表されたこのニュースに、沖縄中、日本中が歓喜した。上記共同記者会見で発表された内容は、①普天間飛行場を5~7年以内に全面返還、②普天間飛行場の一部機能を嘉手納飛行場内に移転、統合、③嘉手納飛行場を中心とする沖縄県内の米軍基地内に、普天間飛行場所属部隊のヘリポートを新設する、④普天間飛行場所属の空中給油機12機を岩国飛行場 (山口県)に移転する、⑤岩国飛行場所属のハリアー攻撃機を 米国内の基地に移転する、⑥緊急の際の米軍による (日本の)施設利用に関し日米双方で共同研究する、⑦今回の合意事項を15日の日米安全保障協議委員会で確定、中間報告に盛り込む、というものであった。
 しかし、橋本・モンデール共同記者会見から間もなく、4月15日に発表されたSACO中 間報告では、普天間をはじめとする県内への「移設条件付き基地返還」へと後退していた。

<SACO合意の内容>
 SACOの合意内容は、概略下記のとおりである。
  (返還施設)        (返還条件)
普天間飛行場     1500メートルの滑走路などの機能移設後
② 北部訓練場       ヘリパッドを移設した後
③ 安波訓練場       海につながる新たな訓練場を取得した後
④ ギンバル訓練場     ヘリパッドをブルービーチに移設した後
⑤ 楚辺通信所 (象のオリ) 通信所を移設した後
⑥ 読谷補助飛待場     パラシュート降下訓練を伊江島に移転した後
⑦ キャンプ桑江の一部   海軍病院を移設した後
⑧ 瀬名波通信所     通信施設を移設した後
那覇港湾施設     浦添・牧港補給地区沖に移設した後
⑩ 住宅統合(キャンプ桑江と瑞慶費)  住宅を移設した後
 本件で問題となっている高江オスプレイパッド建設工事は、前記②の北部訓練場の一部返還の条件とされた、ヘリパッド移設のためのものである。
 SACO合意の後、1998年に後で述べるG地区ヘリパッド近くの高江の宇嘉川河口部の陸域38ヘクタールと水域121ヘクタールが日米合同委員会の合意により米軍に追加提供された。日米両政府がG地区をヘリパッド建設候補地とした理由は「米軍から運用上、特に新規提供された水域における訓練も含め訓練及び兵士の救助を支援する目的で必ず必要との強い要望」があったとされている (甲3「琉球新報」2016年7月26日1面)。
 米海兵隊ウェブサイトには、以下の訓練予想図が掲載されているところ、その地形が宇嘉川河口とほぼ一致していることから、後で述べるMV22オスプレイを活用し、宇嘉川河口部の陸域と水域を用いた新たな訓練の実施が予想されている。