地崎組の労務者使用状況報告書

  GHQ/SCAPの資料の中に、地崎組が「北海土木建築統制組合」に地崎組支配人・西田庄太郎名で提出した「労務者使用状況報告」(1944年1-11月分)」がある(Box1308 LS-2367523678)。のは、配給等を受けるための文書で、書類欄外には、「本報告ハ物資、労務者配給調整並ニ統計資料タルベキニ依リ正確ニ記入スル」よう注記が印字されており、「本報告ヲ怠リタル者ハ商工組合法罰則第七十八条ニ依リ処分サルル」「虚偽ノ申告ヲ為シタル場合ハ配給ヲ停止スルコトアルベシ」と警告も記されている。

同報告書の項目は、「発注者」「工事名称及事業場所在地」「工事種別」「工事期間」「工事金額」「工事ノ規模」「工事工程(工事の進捗状況)」「労務者現在職種別内訳」「異動状況内訳」「貨物自動車及馬車所有見込数」である。

この報告書によるイトムカの状況は―

地崎組は、野村殖産貿易株式会社から194411日から同年1231日までを工事期間とする土木建設工事を請け負った。工事の規模は、工費1020000円、継続の沈殿池土木工事及び各建物敷地の地均面坪60000坪、その他基礎工事で、「本工事ハ6ケ年ニ渉ル継続工事ニシテ今後モ相当継続セラルルモノニテ工事区分及名称金額共ニ各月別ニ明瞭ニ区分不可能ニテ現ニ工事ノ中ノモノニテモ金額未決定分モアリ此点特殊性考慮セラレタシ」とことわっている。

「現在保有労務者職種別内訳」と工事の進捗状況は、3月は、移入朝鮮人164人・先住朝鮮人8人・その他土工6人・大工45人・鳶20人・ブリキ屋4人・鉄筋工1人・建具屋10人・柾屋11人・砂利屋3人・人夫14人・馬夫6人・炊事25人・中華人481人・幹部24人の774人で、進捗率15%となっている。

 中国労工隊がイトムカに来た4月は、移入朝鮮人164人・先住朝鮮人8人・その他土工6人・大工26人・鳶25人・人夫14人・馬夫6人・炊事25人・中華人481人・幹部24人の774人で、進捗率は進まず、15%である。

 5月は、移入朝鮮人164人・先住朝鮮人8人・その他土工6人・大工20人・鳶7人・馬夫3人・建具工10人・柾名12人・鉄板工4人・鉄筋屋1人・砂利屋7人・左官屋3人・鍛冶工4人・中華人481人・幹部31人・炊事25人の計761人、稼働延べ人員19786人で進捗率15%。中国労工隊が来たからといって朝鮮人を他の事業場に移動させるということはなかったことが確認できる。

11月分の報告書では、進捗率は98%になっており、中華人は0になっている。これまで、水銀沈殿池そばに建てられた「水神」碑に「11月竣工」と彫られていることから、中国隊は水銀沈殿池の完成が近付いて愛知県に移動したと推測していたが、この11月の報告書で裏付けられたといっていいだろう。