愛知における強制連行問題の取り組み(18)

 この交渉で、遺族の宋殿挙さんが岩田地崎建設に要求したことは、謝罪と補償とともに、愛知県の大府飛行場建設工事で亡くなった兄の死に関する「説明」を求めたことでした。

「私のお兄さんが御社で当時亡くなりまして、御社は何らかきちんと説明していなかったです。私はもう七十を過ぎているんですが、日本に来るのもとても難しいんですよ。また、何らかの説明をしてもらいたいですね」

宋殿挙さんの遺骨は、日本の敗戦で祖国に帰ることができた中国人たちのうちの同郷の人たちが宋さんの兄・宋学海さんの遺骨を持ち帰り、遺族のもとに届けられました。宋殿挙さんは、そのときまだ3歳でしたが、村を挙げて葬式がおこなわれたそうです。遺骨は遺族のもとに戻りましたが、宋さんらは、兄の死について企業から何の「説明」も受けていない、「死亡診断書もくれなかった」と企業の不誠実さを批判しました。