米軍基地から流出したと考えられるPFOS(1)

 沖縄県環境部は2016年12月17日、「有機フッ素化合物環境中実態調査結果について(中間報告)」を発表した。
 今年1月18日に県内の河川の一部で有機フッ素化合物(PFOS)が検出されたことを県企業局が公表。国内では原則使用禁止となっているPFOSが米軍基地から流出している可能性があることから、県環境部が、普天間基地周辺や那覇空港など35地点での測定を行うことになった。
 8月から9月に採取した夏季の水質調査の結果では、普天間基地周辺で、米国環境保護庁が設定した飲料水に関する生涯健康勧告値を超えたところが3カ所確認された。
      普天間基地・チュンナガー 1200ng/L
      普天間基地・ヒヤカーガー180ng/L
      普天間基地・メンダカリヒージャーガー680ng/L
 これらの地域で地下水を利用して栽培されている農作物からは PFOS 等は検出されなかったことから、農作物への影響は無いことが確認された。
 県環境部は、引き続き冬季調査を行い、季節的な変動の有無を確認するほか、次年度以降も継続的なモニタリング調査を行うとしている。また、県環境部から沖縄防衛局を通じて米軍に対して普天間飛行場における PFOS 等の過去及び現在の使用・管理実態等を問い合わせるとしている。
 
 PFOSに関するこの1年の動きをまとめてみよう。

●県企業局が嘉手納基地周辺でPFOSが検出されたと発表
 1月18日、県企業局は「企業局水源地における有機フッ素化合物の検出状況について」記者発表をおこなった。有機フッ素化合物(PFOS、ピーホス)は、半導体用反射防止剤・レジスト製造、金属メッキ処理剤、泡消火剤、航空機用作動油などにかつて使われていた炭素・フッ素結合を持つ有機化合物の総称である。企業局は、PFOSの毒性について「明確な判断は示されていない。急性毒性はあまり強くない。発ガン性は国際主要機関おいて、評価分類が示されていない。しかし生物実験では、反復投与による死亡、体重及び臓器重量の変化等が示されている」と説明している。日本国内では、原則使用禁止になっている。米国では、暫定健康勧告200ng/L、要報告濃度40ng/Lの規制値が設定されている。
 2014年2月から2015年11月のPFOS検出状況は、▽北谷浄水場浄水15~80ng/L (平均30ng/L)▽北谷浄水場原水1~73ng/L (平均25ng/L)▽比謝川取水ポンプ場41~543ng/L (平均207ng/L)▽長田川取水ポンプ場3~408ng/L(平均88ng/L)▽嘉手納井戸群集合水41~100ng/L (平均58ng/L)▽川崎取水ポンプ場44~68ng/L (平均61ng/L)▽北谷浄水場以外の浄水場原水・浄水1~1ng/L であった。発生源の可能性について、「比謝川、長田川取水ポンプ場及び嘉手納井戸群においてPFOS濃度が高く、嘉手納基地内から比謝川に流入する大工廻川|において高濃度(l,320ng/L)が検出されていることから、発生源は嘉手納基地の可能性が高い」とし、「沖縄防衛局を通じ米軍に対して、過去に遡ってPFOS使用の有無を確認し、現在もPFOSを使用し基地外へ流出している実態が明らかになれば、使用の中止又は適切な処理を申し入れする」と今後の県の対応を示した。
 県企業局は給水している市町村を対象に説明会を20日に開いた。企業局はピーホスが法で原則製造・輸入・使用が禁止されているが、国内の規制基準がないため海外の基準に照らし、ただちに危険とは言えないと強調。「法にのっとり、安全な水を送っているが、厳正に対処していく必要がある」として、原因の特定と改善を急ぐ考えを示した。また、原因究明までの間、本島北部のダムや河川からの取水を増やし、北谷浄水場活性炭を使ったPFOS除去に取り組むことなど、同物質の濃度低減化策を説明、現在使っている活性炭の更新間隔を短縮することが必要になり、1億円単位での負担が増えるが、平良企業局長は「安心のためにはコストをかけても取り組まねばならない」と説明した。

 ●県企業局が沖縄防衛局に照会
 翌21日には、企業局は、防衛局にたいし①現在米軍嘉手納基地においてPFOSを使用している実態があれば、その使用を直ちに中止するとともに、適切な対策を取るよう米軍に働きかけること②現在PFOSを使用していなくても過去に使用していた実態があれば、その使用履歴を明らかにするとともに、その対応策を示すよう米軍に働きかけること③県による水源水質検査のための基地内への立ち入り及びサンプリング採取を認めるよう米軍に働きかけること.―の3点を文書で求めた。

 

沖縄の心一つに チムティーチナチ(2)

 知事は北部訓練場返還式典を欠席した。菅官房長官は激怒したが、その知事の決断が、式典の欺瞞をあぶりだした。
 朝日新聞は「返還がかえって、県民と政府の溝を深めてしまったことだ。最大の原因は、沖縄の民意より、米軍の要求を優先する日本政府の姿勢にある」と批判し、「辺野古移設計画をめぐる訴訟で、最高裁は県側の主張を退けた。だが政府が強引に工事再開に突き進めば、県民の不信を高めるだけだ。そうなれば移設そのものにも、在沖米軍基地全体の運用にも、支障をきたすだろう」と警告した。
 
 政府にとって、式典にはどのようなねらいがあったのだろう。
●菅官房長官のあいさつ
 ・沖縄の本土復帰後、最大規模で、県内の米軍専用施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与すると考えている。
 ・米軍と密接に連携して住宅地上空の飛行を避けるよう対応に万全を尽くす。
 ・(再アセスについては)移設工事終了後、事後調査を実施する。
●稲田防衛大臣のあいさつ
 ・県民のみならず国民全体で安全性に大きな関心を持っている中、このような事故は残念だ。
ケネディ駐日米国大使
 ・返還式典は、日米同盟の節目を刻むものだ。
 ・約4000ヘクタールの返還は、沖縄における米軍のプレゼンスによる影響の軽減を目指し、私たちが持ち続けた決意を示すものだ。
在日米軍マルティネス司令官
 ・返還により、軍事利用に限られていた美しい自然を次世代が享受することが可能になる。文化学的、生態学的に貴重な財産になると確信する。

 

 まとめれば、米軍の抑止力を維持しつつ、日米合意に基づいて沖縄の負担軽減を考慮し、4000ヘクタールを返還するということである。米軍は沖縄の負担軽減をよく理解しているというメッセージを発すること、安倍政権も沖縄の負担軽減に取り組んでいることをアピールすることーこの点に日米政府にとっての式典の意味があった。そのねらいが沖縄県の不参加で、絵の構図が大きく崩れ、みすぼらしい絵になってしまった。ロシアとの交渉も不発。永田町では少し前まで衆院解散風が強まっていたが、急速に尻すぼみした。

 

 式典のみすぼらしさは、構図ばかりではない。語られた中身も、説得力がまったくなかった。高江集落を取り囲む6つのオスプレイ用の着陸帯をフルに活用した場合、東村はこれまでどおり生活できるのか―村民のこの際限ない不安にこたえる回答はひとかけらもなかった。オスプレイ名護市安部の海岸に墜落したことで高江区長は沖縄防衛局にも抗議に行った。
 式典では、返還される跡地の世界自然遺産登録に組み入れることも歌われた。しかし、その大前提となる「支障除去」の道は険しい。なぜかといえば、米軍がベトナム戦争時、そしてその後、訓練場をどのように使ったか、何によってどう汚染したか、履歴を公表していないからである。枯葉剤を捨てたという退役兵の証言もあるのに、である。

 日本は日中戦争で大量の毒ガスを日本国内で製造し、中国大陸に運び、貯蔵した。中国各地の戦場で日本軍は毒ガスを使用し、戦後は、国際法違反の追及を避けるために、投棄した。この投棄された毒ガスが、戦後数十年して、道路工事などで掘り出されてしまい、その際に多くの市民が被毒した。日本の司法では、その中国人被害者にたいする謝罪・賠償は退けられたが、日本政府は、世論に押されて被爆者援護に準じた形で、治療費の一部を払い、遺棄毒ガス除去に一定程度取り組んだ。こうしたことも考え合わせれば、米軍・米国が北部訓練場の土壌汚染を除去することは当然だ。それなのに、非協力的姿勢すらみせている。

 沖縄の心一つに チムティーチナチ(1)

 沖縄県の翁長雄志知事は12月22日に政府が名護市の万国津梁館で開催した北部訓練場返還式典への出席を拒否し、その式典の1時間ほど後に同じ名護市で開かれたオスプレイ墜落に抗議する県民集会に出席した。知事のこの勇気ある決断に多くの県民が心を打たれ、励まされたことは疑いない。その知事の訴えは次の通りだ。

 

 オスプレイが墜落した名護市安部で無残な機体を見て、すぐそばに新基地ができると思うと、不安が今後も続くことに強い憤りを感じ、オスプレイが飛ぶことがないようにしたいとあらためて決意した。
 四軍調整官は抗議に訪れた副知事に対して、パイロットは陸上を避けて水上を目指したので感謝するべきだと話をした。これでは良き隣人と言うわけにはいかない。
 日本政府は米軍の要求を最優先し、わずか6日後の飛行再開を一方的に認めた。県民を日本国民と見ていないとしか受け止められず、信頼関係を大きく損ねるもので強い憤りを感じる。
 北部訓練場ではオスプレイが東村高江に近いヘリパッドで運用されるため極めて問題だ。政府が北部訓練場の返還式典を強行したのは、県民に寄り添う姿勢が見えないと言わざるを得ないため、沖縄県としての出席を取りやめた。
 辺野古新基地建設問題では、最高裁が県の上告を棄却する判決を出したが、高裁判決とは異なり「辺野古が唯一」とは認定しなかった。前知事の埋め立て承認を最大限尊重しているが、逆に言えば、私の今後の埋め立て承認変更などさまざまな権限行使について幅広い裁量権限の行使を認めたと思っている。
 私は法令にのっとり厳正に審査し、承認変更などの要件も判断する。米軍統治下の時代、苛烈を極めた米軍との自治権獲得闘争を粘り強く闘ってきた県民は、日米両政府が新基地建設を断念するまで闘い抜くと信じている。
 私は(オスプレイ配備撤回、普天間飛行場の閉鎖・返還、県内「移設」断念を求めた)「建白書」の精神に基づく「オール沖縄」の立場で県民との公約を守ろうと全力を尽くしてきた。今後も県が持つあらゆる手法で辺野古に新基地を造らせない公約実現に不退転の決意で取り組む。
 グスーヨー、ムルサーニ、チムティーチナチ、クワァーウマガヌタメニ、チャーシンマキテーナイビラン。新辺野古基地ツクラサングトゥシ、オスプレイウチナーカラウランナイビーン、カンナジツクラサンネー、チバラナヤーサイ

 (心を一つに子や孫のためにどうしても負けてはいけない。新辺野古基地を造らせないことで、オスプレイが沖縄からいなくなる。必ず造らさないように頑張りましょう)。

 

 オスプレイの墜落直前には、宜野座村で集落近くでの物資をつりさげたままの飛行訓練を昼夜数日にわたって訓練を繰り返していた。地元や県の抗議を無視し、激しい訓練を続ける中で、空中給油訓練中に事故を起こし、機体をコントロールできずに墜落したのである。米軍機墜落でいえば、2015年には津堅沖でヘリ墜落、今年に入って9月にハリアーが墜落。民家にこそ落ちてはいないが、紙一重だ。そして、事故原因が明らかにされないまま、飛行を再開する。稲田防衛大臣は、米軍のオスプレイ全面飛行再開通告にいとも簡単に同意した。機体の残骸もまだ海に残されたままで。

沖縄県の猛抗議を無視してオスプレイの飛行が再開された

 米軍は、13日の墜落事故以後、オスプレイの飛行を中止していたが、きょう19日、沖縄県の猛抗議にも関わらず、再開した。17日に日本政府は飛行再開を認める方針を固めたという報道があったので、不意打ちを食らったわけではないが、まだ機体の破損部品の回収も終わっていないのに飛行再開である。
 米軍が、機体の構造的欠陥に起因するものではないと一言言ってしまうとそれで終わり、原因究明などどこかへ吹っ飛んでしまった。そして、その米軍に何も言わない日本政府。安倍政権もまた、軍事優先の思想にどっぷりつかってしまっているのだから手の施しようがない。まことに恐ろしい日米軍事同盟である。

 それにしてもお粗末だったのは、きょうになって空中給油機がKC130ではなく、MC130だと訂正されたことだ。空中給油訓練を行ったのは、発表では空中給油機1機とオスプレイ2機、そしてオスプレイではないヘリ1機、全部で4機である。その空中給油機を間違えた。米軍が間違えて説明したのか、情報を受けた防衛省が間違ったのか、それとも防衛省が単に空中給油機と聞いたのを勝手にKC130と思い込んでしまったのか。訂正理由も示されていない。
 沖縄の負担軽減の代名詞のごとく宣伝されたKC130の岩国移転。そのKC130がなんで沖縄に来て訓練をやっているのか、本籍を移しても現住所はもとのままかと思った人もいるだろう。
 沖縄の基地負担を絶えず気にかける人は、問題の航空機が岩国基地所属なのか嘉手納基地所属なのかも大きな問題になるのだが、そうでない人には、KC130でもMC130でもどうでもいいのかもしれない。

 

防衛省が発表した情報は、次の通りだ。
・不時着水したオスプレイは、沖縄北東の海上で、他のオスプレイ1機とともに米空軍嘉手納基地所属MC-130×1機から空中給油を受ける夜間訓練を実施していた。空中給油訓練は、常に陸地から離れた海の上空で行っているが、事故当時も陸地から数十Km離れた沖合上空で実施していた。
・空中給油機から出される給油ホースにオスプレイ側の受け手の給油管(プローブ)を差し込み、給油が行われた。給油が終了し、オスプレイのプローブとMC-130の給油ホースを分離させた後、21時5分頃、乱気流等により、給油ホースとオスプレイのプロペラのブレード(羽)が接触し、ブレードが損傷した。
オスプレイのブレードの損傷は回転するうちに大きくなり、飛行が不安定な状態となった。パイロットの判断により、訓練地点から相対的に距離が近いキャンプ・シュワブを目的地として飛行する中で、地元への影響を極小化するため海岸沿いを飛行していたが、途中辿り着けないことが分かったため、パイロットが意図した地点である浅瀬に不時着水した。

 

 翁長知事は、オスプレイが飛んだ事実を確認した後、メディアの求めに応じ、会見を行った。
 「県としては、オスプレイに対する県民の不安は一向に払拭されていないと考えており、飛行再開に強く抗議する」

オスプレイ墜落現場から

 オスプレイ墜落から5日目の12月17日、名護市安部区の浅瀬では、アメリカ軍が機体の残骸の回収を進めていた。安部集落から海岸に出ると、目の前の砂浜には米軍がブルーシートを広げ、そのこに、ゴムボートで運んできた胴体の一部とみられる破片をいったん並べていた。そして刷毛で白っぽい液体を塗っていた。腐食がすすむのを防ぐためだろうか。引きちぎれた配線もあった。
 米軍は14日午後から機体の回収を始め、真っ先にフライトレコーダーを運び出したようだ。
 現場は、安部集落から800メートル。ギミ崎の先端で、干潮時には岩伝いに歩いていけるところである。17日午後、安慶田副知事が名護署長の案内で現場を見に来ていた。「午前中にも来ようと思っていたが、干潮でないと機体が見られないという話だったので」「事項当時、イザリ漁をしていた住民もいたようだね」などと話していた。イザリ漁というのは、潮が引いた時にできる潮だまりでタコや魚、貝などをとる漁をいうようで、12月から3月頃がシーズン。
 墜落現場は、集落の至近距離であり、住民が漁も行う海辺である。「若いパイロットは、沖縄県民の安全のために、住宅地を避け、浅瀬を選んだ」とローレンス4軍調整官は、パイロットをヒーローであるといったが、とんでもない弁解で、許されない。まさに「大惨事一歩手前」だった。

 

 12月14日、在日米軍司令官ジェリーPマルチネス中将は次のコメントを発表した。
 「今の時点で米軍が得ている情報に基づくと、今回の事故はMV22自体全体もしくは今回の機体のシステム、機械的もしくはそれに関係する要因で発生したものではありません。昨夜、事故発生時、MV22オスプレイ1機が沖縄沿岸にて空中給油訓練を行っていました。報告によると、MV22のプロペラのうち1枚が給油装置のホースに接触して期待を損傷し不安定になりました。沖縄県民と乗員の安全を考慮し、パイロットは県民の住宅やご家族の上空を飛行することを回避し沿岸の浅瀬に着陸することを決断しました。乗員5名は日本の海上保安庁と第33救難飛行隊からの緊急要因に救助されました」とし、「米軍の最優先課題は常に安全性です。この機体のパイロットは沖縄の地域の安全を考慮しキャンプ・シュワブ沖に着陸することを決断しました。軍の運用においては常にいくつかのリスクが内在し、我々はそのようなリスクを減らすよう慎重に計画を立てています。今回の事故においては空中空輸訓練を洋上に設定された訓練空域で行っていたことがあげられます」

 防衛省は米軍の発表をうのみにして「MV22オスプレイの不時着水及び防衛省自衛隊の対応について(第3報)」という発表を行っている。
 「1.事案概要
 平成28年12月13日(火)午後9時30分頃、沖縄県名護市東海岸から約1㎞沖合で米軍機MV-22オスプレイ1機が不時着水。事故原因は不明。搭乗員5名は無事(うち2人は怪我)。
 上記情報については、引き続き確認中。
2.防衛省自衛隊の対応
(1)活動部隊 空自那覇救難隊(那覇
(2)活動規模 航空機2機
(3)主な対応状況
【12月13日】
22時28分 防衛大臣指示
 1 情報収集を徹底し、状況の把握に努めること。
 2 人命救助に万全を期すこと
 3 地元への説明など、対応を確実にすること。
23時05分 那覇救難隊のU-125×1機が捜索活動のため基地を離陸。
23時17分 那覇救難隊のUH-60×1機が捜索活動のため基地を離陸。
※要救助者は米軍機により収容
【12月14日】
0時頃~1時頃 沖縄防衛局長がコンウェイ在沖米海兵隊政務外交部長に面談し、事故に係る原因究明・情報提供、安全が確認されるまでの飛行停止について申入れ
2時20分~50分 防衛大臣マルチネス在日米軍司令官へ電話し、事故に係る原因究明・情報提供、安全が確認されるまでの飛行停止について申入れ
10時20分~40分 沖縄防衛局長がニコルソン在日米軍沖縄地域調整官と面談し、事故の状況や飛行停止の状況等について確認(※回答は下記と同様)。
10時42分~11時23分 防衛大臣マルチネス在日米軍司令官と電話会談。米側から、
・事故機が空中給油訓練実施時にホースが切れ、不具合を生じた
・飛行困難となりキャンプ・シュワブを目的地にして飛行するなかで、地元への影響を極小化するため海岸沿いを飛行していたが、途中で辿り着けず着水した
・機体はコントロールできる状態だった
・事故の原因が機体である可能性は極めて低い
・安全が確認されるまで一時飛行が停止される
ことについて確認した。」

 

 翁長知事をはじめ多くの人がまず指摘したのは、「大破した状況から見て墜落」であり、不時着というのは、事故を小さく見せかける意図があるのではないかということだった。また、聞かれたのは、オスプレイのプロペラの向きである。速度を出して飛行しているときは、プロペラを前向きにするが、着陸時は上に向きを変える。墜落したオスプレイのプロペラは前を向いていた、つまり着陸態勢の「ヘリモード」に変えることもできないまま墜落したという指摘だ。それゆえ機体をコントロールして不時着したということはないというのである。
 米軍発表にはこのような重大な疑問がぶつけられている。こういう態度を米軍が取っているため、米軍だけの事故調査で真実が明らかにされるか、不信も募る。ところが米軍は海上保安庁の捜査協力要請を拒絶している。日本政府は、このことには何も発言していないようだ。どこまでもアメリカいいなりの日本政府だ。日本の警察や海上保安庁も捜査ができるようにすべきだろうし、航空機などの事故を専門に扱っている事故調に、解明にあたってもらうべきではないか。地位協定を盾にそうしたことを拒絶すれば、ますます米軍に不信の目が向くだけである。

 もう一つ、米軍と日本政府が矮小化しようとしているのが、同じ13日深夜に起きたオスプレイ胴体着陸だ。
 ニュースは14日午後に流れた。出所はニコルソン4軍調整官の記者会見だった。この点では、完全に隠そうとしたわけではない。しかし、墜落とは無関係だと強調しているのである。稲田防衛相も同日記者会見で「着陸時に足が壊れたと説明を受けている」と述べている。しかし、本当に無関係だろうか。
 16日付の沖縄タイムスは、「2機で給油訓練を実施し、その後、墜落した機の捜索に当たっていた『僚機』のオスプレイが、燃料が少なくなったため、普天間に帰還。その際、着陸装置に不具合が生じ、胴体着陸していた」と書いた。


 防衛省はこの件について次のように説明している(16日)。
 「本件に関しては、これまで米側からは、
・ 事案が発生したのは、13日午後11時45分頃であること
・ 同機は、普天間基地に着陸時、着陸装置に故障を生じたものの、所定の手順に従い、通常の制御可能な状態で緩やかな着陸が行われたこと
・ 当該機は着陸装置以外の全ての機能は正常であったこと
・ 負傷者はなかったこと
・ 同機は、当時通常訓練を行っており、不時着水したオスプレイからの救難連絡を受け、着水現場に向かい、空中監視を行っていたこと
等の情報を得ている」


 この傍線部分の記述からすると、墜落機と名護の30キロ沖で訓練をしていた機とは読めない。いつ、どこで「救難連絡」を受け、何時何分に現場に着いたのか。墜落機と一緒に訓練を行っていた機はどうしたのか。疑問がわく。墜落機といっしょに訓練を行っていた機もトラブルを起こしたことを曖昧にしたかったのではないだろうか。外務省沖縄大使と沖縄防衛局長が14日午前に行った翁長知事への説明でも、胴体着陸を行ったオスプレイは、墜落した機といっしょに訓練を行っていた機ではないと述べているから、そういう意図があるとみていいだろう。

 米具、防衛省は、情報操作をやめて、県民、国民にきちんとした説明をすべきである。

 

オスプレイ墜落 怒りの島、再び

 米軍普天間基地沖縄県宜野湾市)に所属するMV22オスプレイ名護市安部区のリーフに墜落した事故で、市町村議会の抗議決議・意見書が相次いでいる。浦添市議会は14日に、読谷村議会は15日に可決した。さらにきょう16日、名護市議会、石垣市議会、嘉手納町議会、西原町議会、南風原町議会、宜野座村議会、恩納村議会、今帰仁村議会が続いた。
 宜野座村議会は、「オスプレイの即時撤去を求める抗議決議」および「オスプレイのつり下げ訓練と夜間飛行に伴う騒音被害に対する抗議決議」を可決した(全会一致)。
宜野座村は日常的にオスプレイに悩まされ続けてきた。今回のオスプレイ墜落の直前も数日間、夜も昼もオスプレイがつりさげ訓練をおこない、「村民に騒音被害を与え、恐怖と不安に陥れたことは、戦場さながら」の状況だったという。そういうなかで、とうとう墜落事故を起こしてしまった。
 名護市議会が可決した意見書名は、「MV22オスプレイ墜落に抗議する意見書」である。
 「墜落現場は、名護市安部区集落付近の海岸から80㍍の浅瀬で、事故当時イザリ漁をしていた市民もいた。一歩間違えれば人命にかかわる大惨事になりかねない重大な事故である」と述べている。
 意見書はさらに、「これまでの我々(名護市議会)の訴えに一切耳を傾けず、(オスプレイを)強行配備し、その後も本市上空での飛行訓練が頻繁に行われ、飛行経路となっている集落及び着陸帯に隣接する地域住民を不安に陥れている中で、このような墜落事故が発生したことは、日米両政府の責任は極めて重大である」と抗議し、①MV22オスプレイの配備を直ちに撤回すること②同型機配備を行う辺野古新基地の建設を直ちに中止・撤回すること―を要求している。
 米軍嘉手納基地を抱える嘉手納町議会は、米軍が民間地域を避けて海上に不時着させたとしてパイロットの判断を称賛していることを強く批判し、「欠陥機として危険性が指摘され、配備反対を強く訴えてきたオスプレイが現実に県内で事故を起こした」と真っ向から抗議している。
 米軍は、これまでにも墜落事故の際、死者が出なかったのはパイロットの腕が優秀だからだなどとうそぶくことがしばしばあったという。重大事故を起こしておきながら、米軍に感謝せよという態度に、占領者意識丸出しととらえる県民は少なくない。 
 西原町議会の決議(全会一致)は、「県民の暮らしと生命財産を全く顧みない軍事優先の米軍・米国に激しい憤りを覚える」とし、辺野古新基地や高江ヘリパッド建設に見られる日本政府の沖縄への基地の集中・固定化も批判した。
 オスプレイの即時撤去、在沖米軍基地の整理縮小・海兵隊の撤去を求めた決議もあった。

 沖縄は再び、「怒りの島」になりつつある。そのなかで県議会の決議がどうなるか注目される。
 県議会は14日に当初、開会予定がなかった米軍基地関係特別委員会が夕方、開催された。県議会としても墜落事故についてなんらかの対応をしなければと、各委員の間で話が進んだらしい。県基地対策課長が主に事件の概要と県の対応について説明、米側は「不時着」という言葉を使っているが、県としては大破しているなどの状況から墜落という認識だとの考えを述べた。捜査権は日本側にはないのかという質問やニコルソン4軍調整官の発言について事実関係の確認を求める質問もあった。質疑の中で事件の重大性がさまざまな角度から深められていった中で、本会で抗議決議を上げるべきだとの提案があった。これにたいして与党各会派は賛意を示したが、自民党委員は持ち帰り検討したいとした。

 その翌15日、自民党県連会長は、稲田防衛相らと面談し、原因究明までのオスプレイの飛行停止、オスプレイの県外への分散配備を米政府に働きかけるように要請したというから、まったく対応しないわけではないようだ。どの線までなら県議会与党の主張をのめるか、東京に行って感触をつかみたかったのだろうか。自民党県連は、県議選後、県議会の会派名を「自民党・おきなわ」にした。つけくわえた「おきなわ」にふさわしく、オスプレイ墜落に対する抗議決議に名を連ねられるか、ここも注目点である。

渡嘉敷健教授が明らかにした高江のN4供用による騒音状況

  •  琉球大学工学部の渡嘉敷健准教授が8日、県庁で東村高江へリ着陸帯におけるN4供用開始後の米軍機騒音の状況と氏の考察を発表した。
     高江住民らが着陸帯建設工事の差し止めを求めて那覇地裁に訴えていたが、地裁は暫定的な判断という性格をもつ仮処分申請に対して却下の判断をした。その理由は、被害者の被害を十分に立証する証拠が得られていないということだった。
     高江の騒音測定調査は現在2種類ある。一つは、防衛局が行っているもので、測定地点は、N4から約1・5キロ地点の牛道局での測定である。しかも提出されたデータは、1日の騒音の平均値である。これは被害実態を明らかにするうえで不十分であり、環境基準を満たしているという主張を導くための操作をおこなったものとみることができる。もう一つの測定は、渡嘉敷氏がおこなっているものである。
     渡嘉敷氏は、裁判所に意見書を提出し、高江の騒音の被害状況データを提出した。その立場から、「今年6月のオスプレイの訓練が激しかった今年6月の1カ月の測定データを出している。裁判所はそこを見ていないのではないか」と、裁判所の判断に疑問を呈した。そのため、「裁判所に意見書を出したときは、その内容を公開しにくかったが、こういうことが出たのでメディアのみなさんにも内容をお伝えしたいと思い、公表の場を持ちました」と発言された。

 以下、そのとき渡嘉敷氏が配布したペーパーの一部を紹介する。

1 北部訓練場周辺地域における騒音被害の状況
北部訓練場周辺地域において騒音測定を実施するに至った経緯
 本測定は、東村高江住民の要望があり、高江集落に近い N4着陸帯にオスプレイ他のヘリコプターの運用が開始されたことで騒音が激化している事を騒音レベルで、確認することを目的としてN4着陸帯から約647m 離れた安次嶺宅庭先 (以下測定点 1とする)に置かれたバスの屋根に三脚に騒音計マイクロホンを全天候型風防に設置(地上約 4m) して騒音及び低周波音測定を開始した。
 その後、東村教育委員会の要請(平成 27 年 11 月)で東村高江小中学校の構内外部手洗いの屋上(以下測定点 2とする)に三脚に騒音計マイクロホンを全天候型風防に設置(地上約 4m) して騒音及び低周波音測定を開始した。その後、N4 着陸帯から約571m 離れたブロッコリーハウスコンテナー屋上(以下測定点 3とする )に高江住民の会の要請(平成 27 年 12 月から平成 28 年 2月)で、三脚に騒音計マイクロホンを全天候型風防に設置(地上約 3.5m) して騒音及び低周波音測定を開始した。現在は、同じ場所において精密騒音測定器に変えて現在も測定を継続して行っている。

3 測定地点の選定
測定点 1  N4着陸帯から騒音測定場所安次嶺宅まで:647 .1 9m
測定点2  N4 着陸帯から測定点高江小中学校まで1.69km
測定点3  東村高江ブロッコリーノ入ウス測定場所 :N4着陸帯からの距離 571.73m

3.1 騒音レベル
 マイクロホン設置場所は、平坦な地面上等とし、高さは1. 2m~ 1. 5mとされているが、今回の測定においては低周波音測定において建物による反射、遮音の影響が少ない地点を選定し、構造物場の上に設置したため、測定点 1では地上約 4m、測定点 2では地上約 4m、測定点 3では地上約 3.5m とした。
 受音面を上向きに設置し、測定点 1では周りの建物から約3m離れておいた。測定点2では測定点が回り半径約 10m最も高い場所に設置し、建物による反射、遮音の影響が少ない地点を選定した。測定点 3では N4着陸帯方向に樹木が約 2mに接近しているがそれ以外の方向は周りより最も高い場所に設置し、建物による反射、遮音の影響が少ない地点を選定した。

3.2 低周波音レベル
 屋外の測定点の選定にあたっては、暗騒音レベノレが高くて対象となる低周波音が精度良く測定できない場所や建物や地形による音の反射、遮蔽、回析によりごく局所的に音圧レベルが変化するような場所は避けた。
 マイクロホンの高さは、3. 1騒音レベルと同じである。
 風の影響とマイクロホンの保護のためすべての測定において風雑音減少効果の高い全天候型防風スクリーンを使用した。

防衛局東村高江牛道局と東村高江ブロッコリーハワスでの Lden の比較
考察
 2016 年 6月一月の東村高江ブロッコリーハウス ( 表 3) の Lden を計算した結果は、 64 . 1dB になった。防衛局東村高江牛道局(表 2) の Lden は 53 . 8dBと報告されている。 それを表 3に示した東村高江ブロッコリーハウスの Lden比較を行った。
 ここで、航空機騒音評価から地域類型については次の様に示されている。
地域類型 1: WECPNL70 以下→Lden 57 以下、地域類型 II : WE CPNL 75 以下→Lden 62 以下である。防衛省は、住宅防音工事の対象を第1種区域法( 4条) WECPNL75 以上としている。今回の調査において、Lden : 64.1dBはWECPNLに換算するとWECPNL77 . 1となる。つまり、定点3のブロッコリーハウスのある高江地区は、WE CPNL75を超えていることから、第一種区域の防音工事対象エリアであると考えられる。つまり、実測調査を行った、高江ブロッコリーハウスでの騒音測定結果から計算で得た、Lden=64. 1 dB は、 WECPNL= 77 . 1dBとなる。牛道局より10 dB 以上も大きな値であることから、政府が言う環境基準値を満足していると言う説明はまだ早すぎると考える。測定箇所をもっと増やし更に測定を継続調査する必要があると考える。

7 まとめ
 北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)環境影響評価図書の中のヘリコプター騒音 ( 単発騒音暴露レベル)予測コンターと現地実測調査データとの比較では、予測値より大きな値が測定されている。また、ヘリコプター低周波音の予測値と現地実測調査データとの比較でも参照値の閾値より大きく上回る値が測定されている。さらに、政府が、国会で言う環境基準値を満足していると言う説明に反して、現地実測調査データとの比較でも訓練が激しいと住民から指摘があった平成 28 年 6月一か月の Lden が防衛局が測定した牛道局 53 . 8dB より10dB 以上大きな値の 64.1dB と計算された。ここで、Ldenが大きくなった理由を説明すると次の様になる。
1.測定場所が N-4 着陸帯に近いこと。
2. 測定点上空でも航空機が飛行訓練しているため騒音レベルが大きな値であること。
3. 訓練が夕方や夜間にも多く行われていること。
 つまり、3の訓練が夕方や夜間に行われることで、時間帯補正の夕方+5dB 、夜間+10 dB となるためLden が大きな値になると言う事になる。政府が言う環境基準を満足していると言うからには、夕方や夜間の訓練は行わないことを明確に米側に要求する必要があると考える。

 本来ならデータを含むすべてを掲載すべきだが、データのアップが困難であったことから省いてしまったことをお詫びしたい。