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辺野古裁判の今後―仲山忠克弁護士の講演から

 2017年2月の判決が予想されている辺野古訴訟。福岡高裁那覇支部判決の問題点と最高裁判決はどうなるのか、そして、確定判決後の辺野古新基地建設は阻止できるのか。11月5日、新垣勉弁護士は与儀公園横の那覇市教育会館(主催:おきなわに地方自治の「研究所」設立をめざす準備会)で、仲山忠克弁護士は安里1区公民館(安里・大道・松川島ぐるみの会)で講演を行った。
 新垣弁護士も、仲山弁護士も高裁判決の問題点を厳しく批判し、最高裁は大法廷を開いて見直すだろうとの見立てをされた。お二人の講演をメモに基づいて報告するので、その批判点をじっくり吟味されるようお勧めするが、県を敗訴させるために、行政法専門家の通説や最高裁判例に反する独自の解釈を作り出すことまでやっているのが高裁判決である。憲法解釈が必要と最高裁が判断したとき大法廷を開くといわれるが、そればかりでなく、過去の判例との整合性が問題になるときも開かれるといい、今回の福岡高裁那覇支部判決は、その判決内容から見て、大法廷を開かざるをえないであろうというのである。
 なお、新垣弁護士は、沖縄タイムス10月11~13日付に、「違法確認訴訟判決の問題点」という論考を発表されている。

<仲山弁護士の講演の概要>
 まず、「関与の制度」について触れておく。戦後長い間、「機関委任事務」を押し付けることで、国は地方を下に置いてきた。しかし、それが地方分権改革の中で機関委任事務が廃止され、国と地方は対等の関係になった。そのもとで、地方による公益侵害がおきたときに国は是正ができるが、それはあくまで例外とされた。
 今回、国交相沖縄県に埋め立て承認取り消しを取り消すように指示したものも、「是正」の指示の一つです。最近の例では、竹富町が教科書採択でおこなったことにたいして国が行ったのが「是正」の勧告でした。改正された地方自治法では、地方の自主性を尊重しなさいと明記されている。だから国が地方自治体に関与することは例外的に行われる、このことをまずきちんと見ておくことが重要です。
 仲井真知事が埋め立て承認をしたことを翁長知事が取り消した。それにたいして、国交相が是正の指示を出したが、翁長知事は従わず、取り消さなかった。それで沖縄県は不作為をしており「違法」であるとして、国は「違法確認訴訟」という裁判を起こしました。
 私は初め、国の主張丸写しの判決ではないかと思いました。判決文全文を読んで、その最初の印象が間違っていなかったことを確信しました。
 事実認定ですが、普天間基地の危険性の除去をするには、辺野古が唯一だといい、辺野古への移転は負担軽減に資するとも言っている。被害を受けている県民が、辺野古移設は被害の固定化につながると言っている。被害者を無視した、上から目線の判決です。それから、海兵隊の県外移設は、即応能力が失われるとも言っている。
 辺野古普天間の代替基地ではない。新基地です。普天間基地にはなかった弾薬庫がつくられる。普天間の滑走路は1本だが、それが2本になる。強襲揚陸艦が接岸できるようになる。これまで沖縄には、強襲揚陸艦が接岸できる港はなかった。だから海兵隊が遠征するときは、佐世保まで行っていた。辺野古強襲揚陸艦が接岸できるようになると、辺野古から全世界に出撃することになる。
 普天間基地できて70年、老朽化しており、アメリカは、最新鋭の基地としての辺野古を求めている。飛行場と軍港が一緒になった基地は沖縄にはない。ホワイトビーチには原潜は入るが、大型艦船は入らない。あるのは岩国だけだ。
 そして辺野古に新基地が造られると、自衛隊も来る。2005年に米軍再編が定められ、日常的に共同使用がすすめられている。米軍と自衛隊が一体化する、そこを見ないといけない。
 仲井真知事が埋め立てを承認し、それを翁長知事が取り消した。仲井真知事の判断は適法だったのか、それとも翁長知事の取り消しが適法だったのか、これが裁判で争われた。知事には裁量権がある。その範囲であれば適法である。どちらでもいいように見えるかもしれないが、どっちに重点を置くかによって判決が変わる可能性があった。高裁は、仲井真知事の判断は適法だったとした。この入り口から判決は間違っている。
 翁長知事はどういう場合に、前知事の判断を取り消すことができるか。判決は、違法の時だけとした。しかし、学会、判例は違法だけでなく、不当もできるとしていた。ここに高裁判決の2番目の問題がある。
 どうして判決は、学者や判例と違うことをあえてやったか。そのからくりを暴かなければならない。
その最大のポイントは、国の説明する国防の必要性は、国の判断を尊重すべきだ―ここが最大のポイントです。沖縄県民がどのように言おうが関係ない。国防・外交は国がすることだと。ここから出てきている。
 地方自治の立場からすれば、沖縄の自主性、自立性を尊重するのが当然。判決は、地方自治、民主主義をないがしろにしている。そこが基本だということを押さえることが重要だ。
 国防・外交とは何か。安保体制、軍事同盟は神聖にして侵すことはできないというのが本音であり、沖縄県民がどんなに異議を唱えようが関係ないという判決だと思う。
 アメリカに自発的に従属するのが安保だと言われる。これまでは、自治体がそうだと言われてきたが、今回は司法が言われる。
 翁長知事は、次は埋め立て承認の撤回をすると言われている。行政法では、取り消しも撤回もできることになっている。判決は、撤回に対する予防線も張った。
 最高裁は、どういう判断をするだろうか。三つのパターンが考えられる。①高裁判決はおかしいとして、知事取り消しを有効とする判決を出す。これがベスト。②高裁判決を破棄し、埋め立て承認の取り消しを前提に高裁は審理をやり直しなさいという判決。おそらく県は、これを期待しているだろう。③県の上告は認めない、つまり県の敗訴。
私は、②の差し戻しを期待したいが、最高裁は安保が出ると理屈は認めない。だから、率直にいうと沖縄県の負けということになるだろう。理屈で言うと沖縄の勝ちなのだが。湖西の理屈はひっくり返すが、県敗訴の結論は同じという判決を出すかもしれない。私の予測が外れることを切に願う。
 大法廷が開かれる可能性はある。大法廷に出る裁判官は多くて18名。その18名で沖縄の未来を決めることはできない。買ったら喜び、負けたら泣くのは当然。しかし、どんな判決が出ようと、それにとらわれない。たたかいが沖縄の歴史を切り開いてきた。そのことが沖縄県民は問われる。
 判決がでたら何もできないか。そんなことはない。辺野古埋め立て工事の前提である岩礁破砕、この許可は仲井真知事が承認したのだが、それが来年3月に切れる。翁長知事は許可しないと言っている。それからサンゴの移植。これも国が前県政にたいして辺野古の環境を守ると言って約束したこと。サンゴを移植するには、サンゴを取らなければいけないが、それは知事の許可が必要になる。これも翁長知事は認めない立場だ。
 設計変更という問題もある。国が提出した工事計画はボーリング調査前のもの。ボーリング調査をした結果を踏まえたものに計画を変更することがでてくるが、それも知事の承認が必要である。実際、岩国基地は設計変更を8回した。
 名護市長の権限となっている事項も、防衛省はクリアしなければならない。その一つに美謝川の水路を変える付け替えもある。
 それらが適法に行使されれば、工事はできない。知事に与えられている権限を行使するには、知事を支える県民、たたかう民意が必要だ。県民の力だけでは足りない。全国に広げること。現地でのがんばりが全国に広がる。現地でのたたかいが強固であれば広がる。法的決着が最終決着ではない。最後は民意だ。
 きょうの会は、島ぐるみ会議だから、当然、安保について賛成、反対いろいろ意見はあると思う。しかし、私の考えでは、沖縄の基地問題の抜本的解決は、安保をなくすしかない、そのことをあえて言わさせていただきたい。
 裁判所まで安保に毒されている。「軍事力による平和」という考え方がある。他国や他国民を虐殺して自らを守るという考え方が、軍事力による平和。共存の考え方にまったく反する考え方です。日本国憲法9条は、軍事力によらない考え方をとっています。沖縄では7割が安保反対です。ところが本土は、安保容認が多い。長年、軍事基地が存在し、受け入れざるをえないことが反映している。
 新基地建設問題を考えるとき、無条件撤去、県外移設、容認と意見が分かれているが、このことが弱点になっているのではないか。普天間は無条件でなくせ。沖縄のたたかいはこの国の在り方を変える名誉あるたたかいだ。これに積極的に答えていこう。判決がどうであろうと、沖縄は屈しない。

 以下、質疑応答。
問い:最高裁判決はいつ。
 答え:政府は2月と言っている。撤回すると、ふたたび工事は止まる。
 問い:判決が出てしまって、判決に屈しないというのは?
 答え:この判決は、違法確認訴訟だから、埋め立て承認取り消しの取り消しをする義務は発生しない。しかし知事は、確定判決(つまり最高裁判決)に従うと言っており、最高裁で敗訴すれば埋め立て承認取り消しを取り消す。撤回も可能だから、撤回するか検討しているだろうが、撤回したら、国がまた訴える。撤回もだめとなると、工事はふたたびできることにはなる。しかし、知事が行政手続きを承認するかどうかは別だ。解雇事件で、最高裁で負けたが、運動の力で会社に復帰を認めさせた例がある。逆に、7回裁判には勝ったが職場に戻れなかった例もある。運動がなかったからだ。判決の存在を否定することはできない。しかし、運動で工事を止めることはできる。裁判に従うのは知事だが、県民に従う義務はない。
 質問:仲山弁護士は、他府県の力が必要と仰ったが、海外の力も有効ではないか。
 答え:国内しか言わなかったが、ご指摘の通りだ。反対のあるところに軍事基地は置かないというのがアメリカの政策。日本政府が一番弱いのは国際世論だ。沖縄の基地強行は、安倍政権の体質でもある。安倍政権をどう打倒するか、それが新基地にも直結する。