地崎組東川事業所日誌の記載事項について(2)

 日誌の記載内容をもう一日見よう。

[昭和十九年十月二十九日日曜日雨天]

 起床 昨夜来ノ降雨ノ為午前五時四十五分

 朝食 午前六時二十分

 朝の行事 降雨ノ為行事中止。舎内ニ於テ点呼ヲ行ウ。就労一時中止スルモ止ムル見込ナク午前午後共ニ舎内ニ於テ日本語及作業用語ノ教育ナス

 夕食 十七時

 就寝点呼 十九時

 其他 異常ナシ

付記 華北労工協会員柴田準平氏来舎スルモ十五時頃退舎セリ。翻訳官荒金、中村代十六時退舎セリ

 

 「華北労工協会」とはどんな組織であろうか。西成田豊氏の『中国人強制連行』は、「華北労工協会本部は一九四四年三月、『対日供出ニ関スル指示・注意事項』を作成し、中国人強制連行組織としての性格を明確化している」と指摘している。この指示・注意事項では、「(中国の)訓練所出身供出契約時ニ於テハ、必要トスル医療ニ就キ特別ナル配慮ニヨル約束ヲナス」「食糧ノ必要量配給ニ関スル申請ヲ行フ」「船舶並ニ契約成立ト同時ニ大使館ヲ通ジ、海軍武官府ヨリ現地海軍部隊ヘ軍司令部ヨリ現地軍機関ヘ並ニ大使館ヨリ現地領事館ヘ必要なる手配を行フモノトス」などと定めている。これらは中国での華北労工協会の役割にかんするもので、日本では被連行者を事業所に引き渡すまでの「引率」を受け持っているだけであろうか。この日、華北労工協会の協会員が事業場へ来たのは、引率業務終了のあいさつだったのであろうか。