『愛知・大府飛行場における中国人強制連行・強制労働』が出版(4)

調査報告書『愛知・大府飛行場における中国人強制連行・強制労働』の特徴の一つは、強制連行問題の中国側研究者・河北大学の劉宝辰教授の被害者調査報告が掲載されていることです。劉教授が西松建設の安野事件で被害者の掘り起こしにとりくみ、日本での裁判でも中国の研究者として証言にたち、和解にもとづく基金が設立されてからは、全面的な被害者調査をおこなう一人と調査をおこなっています。

劉教授は日本側から提供された事業場報告書の名前と住所をもとに実際に現地に行って探すという方法をとっています。住所といっても半世紀以上も前のもので、終戦前後はめまぐるしく行政の配属が変わり、村や県名も変わっているそうです。劉教授は、被害者がいると思われる県や村の担当者のところにいって情報を集め、さらに村の長老に村で日本に行ったものはいないかと聞いて回って被害者を探しだすという、体力、気力、そして費用もかかる方法で探し出しています。テレビやラジオ、新聞に“訪ね人”の広告も出したものの得られた情報は少なく、成果はあまりあがらなかったそうです。劉教授は、大府の被害者も同じ方法で見つけ出しています。

報告書の80ページに許東民さんのインタビュー記録が掲載されていますが、許東民さんは、このインタビューの数ヵ月後に亡くなっており、今となっては許東民さんの証言はこれが唯一の記録となりました。

健在の被害者は、ほとんどが80歳代後半か90歳代です。家族から連絡があってもご本人は、寝たきりで、訪ねて行っても話せる状態ではなかったときもあったそうです。