米国防総省がイニシアチブをとり、辺野古案の撤廃を 玉城沖縄県知事が米国防長官に書簡

 沖縄県玉城デニー知事は、米国のマーク・エスパー国防長官や在日米軍・第 5 空軍司令官のケビン・シュナイダー中将らに3月9日付で辺野古新基地建設に関する書簡を送った。「米国国防総省がイニシアチブをとり、辺野古案を撤回し、普天間飛行場がもたらす沖縄県民への危険の除去の代替案を探すこと、そのために米政府として沖縄県の現地を訪れて軟弱地盤等の調査を実施することを要請いたします」と訴えている。

 書簡は、日本の沖縄防衛局と米国国防総省は、基地建設と運用はジュゴンに悪影響は与えないと結論付け、2014 年 8 月に辺野古・大浦湾にフロートを設置し、埋立て工事を開始したが、その後、ジュゴンの行動に大変憂慮すべき変化が起こっていると指摘。2015 年の1月以降、大浦湾においてジュゴンは目視されていないこと、大浦湾を含む沖縄本島北部の海岸線で頻繁に目視されていたジュゴンの個体Cも、2015 年 6 月以降はどこでも目視されていず、大浦湾の北に隣接する嘉陽において常に目視されていたジュゴンの個体Aも、2018年 9 月以降、目視されておらず、沖縄防衛局と国防総省の結論とは相反するものだとのべている。さらに、2019 年 3 月の沖縄本島北部西海岸での雌のジュゴン、個体Bの死によって、沖縄のジュゴンの未来は更に深刻な状況になっており、国際自然保護連合は、辺野古・大浦湾における基地建設は脅威であることを指摘していることに鑑み、「この状況を是正するための早急な対策が必要」と訴えている。

 書簡は、軟弱地盤と基地建設の遅れについても、次のように言及している。

 「2019 年 1 月、日本政府は、基地建設地の大浦湾側の地盤が非常に軟弱であり、設計変更と大掛かりな地盤改良が必要であることを認めました。辺野古埋立工事については、地盤改良工事を行ったとしても、長期にわたる不同沈下の発生や、工事中の水の濁りによる環境への影響、外部の専門家チームが懸念する護岸崩壊の可能性など、様々な問題点が指摘されております。日本政府は、7 万1千本の杭を、深い所では水面下 300 フィートの地盤まで打ち込むとの試算を示しており、これは、辺野古・大浦湾の生物多様性豊かな環境に、取り返しのつかない悪影響を与えることになります。そして 2019 年 12 月、日本政府は、設計変更を沖縄県知事が承認した後、埋立てに9年3ヶ月かかり、普天間から新施設への移行は完了まで、少なくとも12 年かかることを認めました。なお日本政府は完了の日程を 2030 年代に設定していますが、今後も設計変更の承認など、沖縄県の様々な承認が必要であり、工事完了のめどはたっておりません」

 玉城知事は、「私は沖縄県知事として、沖縄の人々とともに、未来の世代のために、その生物学的、そして文化的すばらしさを未来の世代に残すために、ジュゴン辺野古・大浦湾の環境を守り、保全していく責任があります。私はまた、米国国防総省も、国家歴史保全法やその他の米国法、そして日本政府との合意にもとづいて、ジュゴン辺野古・大浦湾の環境を基地建設やその運用から守る責任がある」とし、「米国防総省がイニシアチブをとり、日本政府との協議の上、辺野古案を撤廃すること、そして、米国防総省がイニシアチブをとり、日本政府と沖縄県との協議を通して、辺野古案に代わる案を探していくこと、そのために米政府として沖縄県の現地を訪れて軟弱地盤等の調査を実施する」よう要請している。