日韓関係、沖縄の民意、改憲問題など日本のありようが議論された「建国記念の日」

 「建国記念の日」の2月11日、この国のありようを考える講演会・集会が全国各地で開かれたが、どのような議論がされただろうか。

 

[日韓問題]

 東京都内では、一橋大学の加藤圭木准教授と日本平和委員会の千坂純事務局長が講演した。加藤氏は、日本で広がっている「韓国バッシング」の根底に、朝鮮半島に対する侵略・植民地支配への反省の欠如があると指摘し、問題を「人権侵害」の視点でとらえることが重要だと指摘し、謝罪と賠償問題を解決することは、「民主主義の質」に関わると提起した。千坂氏は、トランプ米大統領のもとでおこなわれたイラン司令官殺害事件と、そのことを批判せず、自衛隊を中東へ派兵する安倍政権に抗議した。

 徳島県では、徳島大学の饗場和彦教授は、徴用工判決をめぐる日韓の対立について、韓国憲法の核心は日本帝国主義支配の否定というところにあり、このことの理解なしには、日韓問題の解決はなく、植民地支配を棚上げにして強硬な反韓姿勢をとる安倍政権では事態をこじらせると指摘した。

 熊本県では、糟谷憲一・一橋大学名誉教授が「朝鮮植民地支配の歴史と向き合い、東アジアの平和を考える」と題して講演。「徴用工」訴訟韓国大法院判決(2018年)への日本政府とマスメディアの対応について、強制動員被害者の人権の無視と植民地支配への無反省を批判。植民地支配の歴史を知り、反省する必要があると指摘し、「日本が植民地支配をきちんと反省しなければ、東アジア内の隣国から深い信頼を得ることはできず、東アジア全体の緊張をなくして平和な地域とすることはできない」と強調した。

 

[沖縄戦から学ぶ]

 沖縄県では、「建国記念の日」は戦前の天皇中心の国家に戻すものとして、教育現場での平和学習について話し合うシンポジウムが開かれ、琉球大学の山口剛史准教授が「どのように人が動員され、協力させられ、参加させられていくのかという部分に、ていねいに沖縄戦の教訓から学ぶ必要がある」と報告した。

 

[沖縄の民意を受け止める日本に]

 奈良県では、辺野古新基地の是非を問う沖縄県民投票で県民投票の会の代表を務めた元山仁士郎氏が県民投票の経過と結果を報告。沖縄の民意を日本全体が受け止めることは、日本の民主主義の大きな課題であり、「辺野古の埋め立て反対の意見書採択を居住の市町村議員に働きかけるなどの取り組みを」と訴えた。

 

 

[報道のありようを問う]

 北海道では、武蔵大学永田浩三教授が「メディアと私たち~忖度(そんたく)・弾圧と表現の不自由に抗(あらが)う」と題して講演。「桜を見る会」の税金私物化や閣僚の不祥事など安倍政権の劣化が続く中で、NHKが安倍首相の旗振り役を果たしていることを憂えた。

 

[日米安保体制による矛盾の深まり]

 宮城県では、県高教組の豊永敏久氏が、「信教の自由」を圧迫する天皇の代替わりなど、思想、報道の自由をめぐる状況を報告。京都精華大学教員の白井聡氏は、アメリカのグローバルな軍事戦略のためという日米安保体制の本質が明らかになり、矛盾が深まっていると強調した。

 

[戦争する国づくりストップ]

 愛知県では、名古屋歴史科学研究会の岡田洋司氏が「建国記念の日」が2月11日とされていることについて、神話によるもので、歴史的根拠はないと指摘。「事実を尊重しない風潮に、不承認のつどいの存在意義がいっそう強まっている」と話した。

 明治大学山田朗教授は、「戦後生まれの世代にも、戦争を『忘れない責任』がある」と問題を提示。近代日本の脱亜入欧と軍事同盟路線の考え方を改め、歴史に学びながら現在と未来を見ていかなければいけないと語った。