「墜落」と「着水」 那覇沖でのMH60ヘリ事故をめぐって

 米陸軍特殊作戦用MH60ヘリコプターが1月25日、那覇市の東およそ170キロの太平洋上に墜落した。沖縄県玉城デニー知事は同27日、「強く憤りを感じた」と語り、米軍に原因究明と再発防止を求める方針を示した。玉城知事は、「完全に飛び上がれない状態で落ちたということは、(不時着水でなく)墜落だ」と指摘した。

 この事故で多くのメディアは、「墜落」と言う言葉を避け、防衛省の発表にならって「着水」と言う言葉を使っている。「多くのメディアは」と書いたが、日本のメディアの中にも「墜落」が妥当で、「着水」は問題をわい小化するとして、与しない立場を表明している社もある。

 沖縄県は、墜落との見方をとり、抗議をしている。基本は、上に紹介した玉城知事のコメントで明確だが、謝花副知事が28日に沖縄防衛局の田中利則局長と外務省沖縄事務所の官澤治郎副所長を県庁に呼び出し、抗議した言葉も挙げておこう。

 「ヘリコプターが艦艇まで戻ることができなかったことは実質的に墜落と変わらない状況と考えております。沖縄周辺において在沖米軍所属機だけでなく、ほかの部隊に所属する米軍機による事故が度々発生していることは、県民に大きな不安を与えております」

 県民、漁民の声明、周辺の海域を通行する船舶の安全を第一に考える行政のとらえかたとして、うなずける。

 

 一方、河野防衛相は1月28日の記者会見で、記者団と次のようなやりとりをしている。

 Q:沖縄での米軍機事故について、事故発生後、防衛省の報道については「着水した」という表現でしたが、米軍側の発表では事故機は「went down」というふうになっておりまして、これは「着水」の他にも「墜落」という表現もできるかと思いますが、「墜落」と「着水」では日本語としての受け止めがだいぶ異なってくると思うのですが、大臣としては防衛省の報道の「着水」という表現は適切な表現だったと思いますでしょうか。

A:パイロットのコントロールの下に水に降りた。そこに陸があれば、「着陸」ということができたのだろうと思いますが、沖縄から90マイル離れた、90マイルということは100数十キロですから、コントロール下にあったが、水の上に降りざるを得なかったということで、「着水」という表現をしたのだと思います。私も聞いて、特に違和感はありませんでした。

   河野防衛相は「コントロールされていた」と繰り返している。それにたいしこの記者は、米軍からコントロール下にあったという説明を受けているのかと確認を求めている。

Q:米軍では調査中ということですが、コントロール下にあったという説明は、防衛省としては受けているということでしょうか。

A:はい。

Q:そこに落ちてしまった理由についてはまだでしょうか。

A:調査をしていると理解しております。

 

   どういうトラブルがあったのか、乗組員はどのようにして脱出したのか、機体はどうなったのかなど記者会見では、明らかにされなかった。今回の事故について、「乗員5人はライフジャケットを着用、航空自衛隊機や米軍機が救助し、米軍キャンプ瑞慶覧(沖縄県北谷町など)やブルーリッジに搬送された」(共同通信)、「アメリカ軍と航空自衛隊海上保安庁が救助にあたり、乗員5人はアメリ海兵隊のキャンプ・フォスターに搬送され、命に別条はないという」(沖縄テレビ)などと報道されたが、「防衛省関係者によれば」というもので、メディアが直接確認している訳ではないし、詳しいことが分っていない。こんな状況で「墜落ではない」と断定するのはいかがだろうか。オスプレイが名護沖に墜落・大破したときも防衛省は「不時着」として「墜落」とは認めなかった。そのときのことがあるので、こだわるのである。