施政方針で辺野古にふれず それは既定の方針だから

 首相の施政方針演説では、「辺野古」という言葉が出てこなかった。政府の方針に変化があるのではないか、そういう憶測もでたようだ。河野防衛相は1月21日の記者会見で、従来の方針に変わりはないと否定し、「工期も明確になったので、1日も早くできるように努める」と沖縄防衛局を叱咤した。

 

記者会見のやりとり―。 

Q:首相の施政方針演説ですが、これまで演説に盛り込んでいた普天間飛行場返還の移設先としての辺野古について、今回は触れませんでした。代わりに海兵隊のグアム移転が入ってきましたが、このような表現になったことについて、大臣のお考えをお願いします。

A:おそらくグアム移転は、沖縄の負担軽減に非常に大きく貢献をすることになると思います。いよいよグアム移転が本格的に始まることで、演説の中に盛り込まれたと思っております。

Q:辺野古の工期が12年かかる見通しで、2030年以降の完了となる見通しとなっており、政府のこれまでの「1日も早い普天間の危険性除去」という表現が言いづらくなっているのではないかという見方もあるのですが、この指摘について、いかがお考えでしょうか。

A:いよいよ辺野古への移転についても工期が明確になりましたので、しっかりと努力をして、それを1日も早くできるように、工期を1日でも短くできるように、政府としては努めていきたいと思います。

Q:「1日も早い普天間の危険性の除去」が言いづらくなっているという指摘はいかがでしょうか。

A:工期が明確になったことで、1日でも短縮していこうという目標が明確になったと思っております。

Q:従来の方針は変わっていないということでしょうか。

A:はい。

 

 河野防衛相は今月15日、エスパー米国防長官と会談した際、辺野古の工期が9年3カ月になったことを説明している。対米公約を何の相談もせずに、「辺野古が唯一」という方針を一方的に変更す、了解を得た。だから、日本政府が方針転換をしたのであれば、米国と改めて協議をするはずだがそんな形跡はない。だから、辺野古が進まないからと言って、日本の独自判断で「辺野古が唯一」という方針を変えるはずはない。

 記者会見の中で出された「2030年以降の完了となる見通しとなっており・・・1日も早い普天間の危険性除去という表現が言いづらくなっているのでは」という見方は、世間の人はそう思うのは当然だと思うが、そういう感覚が働かないのが、安倍政権だ。沖縄の民意が何度も示されたというと、「永田町には永田町の民意がある」と言い放ったことは記憶に新しい。

 安倍演説で注目する点があるとすれば、グアム移転が安倍首相にとってどういう意味があるのかという点であろう。沖縄の負担軽減の事例として持ち出しているのであり、安倍内閣が汗をかいて沖縄の負担軽減をおこなうという話ではないのである。

 沖縄の人たちは、海兵隊のグアム移転を“沖縄から撤退するのであれば、辺野古移設は必要なくなる”と受け取っているだろうが、安倍首相はおそらくそうではない。グアム移転と辺野古新基地建設は切り離して考えていることだろう。

 記者は「海兵隊のグアム移転が入ってきましたが、このような表現になったことについて、大臣のお考えをお願いします」と聞いている。これにたいする防衛相の「グアム移転は、沖縄の負担軽減に非常に大きく貢献をすることになる」という回答に満足せず、「ならば、辺野古移転の必要性はなくならないか」とダメ押しをすべきだったのではないか。