見通しのない辺野古工事に9300億円は許されるのか

 政府が辺野古新基地建設に2011年7月に着工して5年半、土砂投入を2018年12月に開始して1年たつが、安倍政権が思い描いたようには進展していない。海中に投入した土砂量は、1・1%程度にとどまる。このことは以前にブログで書いたが、大浦湾側に軟弱地盤が広がっており、沖縄県の承認を受けた工事設計ではその軟弱地盤の改良が想定されていないため、手を付けることはできなかったからだ。

 防衛省は、昨年12月25日に開催した「技術検討会」で、埋め立て工期が当初予定の5年から9年3カ月に伸び、埋め立て工事後の施設整備などをふくめれば基地完成までに12年かかると報告した。「1日も早い普天間の危険性の除去のための辺野古移設」というこれまでの政府は何だったのかと、宜野湾市長は渋い顔だ。

 12年というのは、沖縄県が設計概要の変更を認めてから、ということになるので、仮に工事が完成することがあるとしても、20年、30年かかるだろうと言われている。

 その設計概要の変更申請だが、年度内、つまり今年3月までに申請するのが国の考えだ。しかし、技術検討委員会に提出された資料で見る限り、検討されるべき課題がまだ整理されていないようである。とはいえ、“支障のない範囲”として、申請に踏み切るかもしれない。

 デニー知事は、辺野古新基地建設は認めない立場だが、申請書が提出されたら、受理し、審査しないわけにはいかない。サンゴの移植申請にたいする審査が非常に厳格で、移植先の環境についての検討が不十分であると考えられ、専門家の助言を受けるようにといって申請のやり直しを求めたりしたため、通常の数倍の期間がかかって、ようやく申請が通ったということもあった。現在、沖縄県が起こしている抗告訴訟での沖縄県の主張を考えれば、軟弱地盤の改良が不十分であるということだけでなく、環境に対する配慮がなされていない、活断層があるのに耐震設計がなされていないなどの問題を指摘し、出し直しを求めるだろう。これにたいして防衛省はどういう対応をするだろうか。申請を認めないのは違法だとして、代執行訴訟に訴えることも計算しているかもしれない。

 2014年に防衛省が示した辺野古の総工費は3500億円だったが、2・7倍の9300億円に修正された。安倍政権が、今の時点で示すことができると政治判断した額で、純然たる計算で導き出された数字とは考えにくい。それはともかく、財政難のなかでこれだけの巨費を辺野古に投入することが許されるのか、そういう角度からの国民的議論も必要になっている。