辺野古に新基地はつくらせず、県経済発展を推進する沖縄県予算が成立

 沖縄県議会は3月28日の2月定例会最終本会議で新年度予算を賛成多数で可決して閉会した。

 沖縄自民党は県提出の予算原案にたいし、知事訪米費用とワシントン駐在員の活動費用をゼロにする修正案を提出した。提案理由の説明では、ワシントン駐在員の活動費用の減額し、ゼロにする意見を自民党は毎年出してきたこと、知事の訪米は、日本政府と話しあわずに、米国に直接言うというのはおかしいというものであった。他府県はともかく、沖縄県の場合は、仲井真前知事も訪米活動を行っており、県の施策を前進するために訪米活動を行ってきているから、要は、辺野古新吉建設反対の主張を日本政府の頭越しに主張することはやめよということである。

 与党側は、会派「おきなわ」の新垣光栄議員と、共産党の比嘉瑞己議員が自民党修正案に反対し、予算原案に賛成する討論をおこなった。翁長知事4年目の総仕上げの年の予算であり、「辺野古に新基地は造らせない」という公約を県政運営の柱にすえるともに、「子どもの貧困解決」をはじめ、医療、教育、福祉など県民生活を守り、県経済発展を推進する予算であることを主張した。以下、比嘉議員の討論を紹介したい。
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 翁長県政は、辺野古新基地建設を許さないという「建白書の実現」を求める、沖縄県民の圧倒的な民意に支えられ、一期目の総仕上げとなる新年度を迎えます。翁長県政はこれまで、「辺野古に新基地は造らせない」という公約を県政運営の柱にすえるともに、「子どもの貧困解決」をはじめ、医療、教育、福祉など県民生活を守り、県経済発展のための産業振興や雇用創出を推進し、また、沖縄の魅力である離島の振興、豊かな自然環境の保全、ウチナー文化の普及促進などに取り組み、「誇りある豊かな沖縄」を実現するために全力で取り組んできました。
 こうした翁長県政の取り組みは、様々な指標からも成果が表れてきています。昨年度の入域観光客数は約940万人、そのうち外国人客は254万人と、5年連続で過去最高を更新するとともに、8月には月間で初めて100万人台を記録しました。観光関連産業の経済波及効果は遂に1兆円を超え、情報通信関連産業の売上高は4200億円、農業産出額は1000億円を達成し、全国一の伸び率となるなど、県経済はかつてないほど好調に推移しています。雇用状況については、年平均の完全失業率は平成25年の5.7%に対して、平成28年が4.4%、平成29年が3.8%と大幅に改善し、有効求人倍率も復帰後はじめて、年間を通じて1倍を超える記録をつづけています。
 「米軍基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因である」。基地関連収入が県民総所得に占める割合は、復帰前の昭和40年度には30.4%でしたが、本土復帰直後の昭和47年度には15.5%。平成26年度には5.7%と大幅に低下しています。一方、米軍基地返還跡地を見れば、那覇市小禄金城、与儀タンク跡、北谷町美浜、北中城村米軍泡瀬ゴルフ場跡地と、いずれの地域も目覚ましい発展を遂げています。那覇新都心地域では直接経済効果は32倍、雇用効果は93倍と、文字通り那覇市の新たな都市拠点として発展しています。「基地をなくしたほうが、沖縄は発展する」。多くの県民が確信をもって歩みつづけています。
 いよいよ、翁長県政のもとで好調な県経済をさらに発展させ、正規雇用の拡大、県民所得の向上へと繋げていく取り組みが実を結ぼうとしています。
さて、沖縄自民党から提出された修正案について反対の理由を述べたいと思います。修正案の提案理由は「ワシントン駐在員活動事業費jと「翁長知事の訪米事業」の削除を求めるものとなっています。

 まずはじめにワシントン事務所についてですが、同事業は沖縄の基地問題に関連する情報収集や、沖縄の状況などの情報発信を主な役割としており、平成27年の事務所設置から米国政府関係者と延べ668人と意見交換を行い、重要な成果をあげてきました。
なかでも、ワシントン事務所が取得した資格・外国代理人登録法(FA R A)に基づく活動は、123人の関係者と面談を行っています。FARAはアメリカの世論や政策等に影響を与えようとする団体がアメリカの外国人登録法にもとづいて登録をするものであり、こうした米国政府公認の活動によって、沖縄の主張を正確に情報発信していることは、費用対効果では測りきれないほどの大きな成果をあげています。
 特に昨年2月に公表されたアメリカ連邦議会調査局報告書に、辺野古新基地建設をめぐる沖縄の現状や、沖縄県の主張について明記されたことは大きな成果でした。報告書には、辺野古移設を巡る法廷闘争の一連の経緯を説明するとともに、県が最高裁で敗訴したものの、翁長雄志知事が「建設を阻止するための、さらなる戦略の模索を誓った」ことを指摘し、「地元住民の反対で、合意履行には懸念が残る」と分析しています。また日米両政府による「高圧的な行動が基地反対の抗議の激化を招く恐れが残っている」 ことも警告しています。こうした報告書がアメリカ連邦議会に伝わり、米国の政策に影響を与えることを考えれば、沖縄の主張を直接、正確に米国政府に伝えるワシントン事務所の役割はますます重要になっています。よって、「ワシントン駐在員活動事業費」の削除を求める修正案に反対をするものです。
 次に知事の訪米事業についてですが、戦後72年経った今なお、国土面積の約0.6%に過ぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の約70.6%が集中するなど、沖縄県民は過重な基地負担を背負い続けています。知事訪米事業は、こうした沖縄の米軍基地を巡る諸問題について、知事が直接訪米し、米国政府、米国連邦議会等関係機関に対し、地元の実情を伝え、米国側の理解と協力を促し、沖縄の米軍基地問題の解決促進を図ることを目的としています。
 沖縄県ではこれまでも、昭和60年以降、西銘知事、大田知事、稲嶺知事、仲井真知事と歴代の知事が訪米事業を行ってきました。保守・革新を問わず、その時々における在沖米軍をめぐる懸案事項について、米国政府等に直接、県知事が要請を行い、日米両政府の基地政策に影響を与えるなど、大きな成果を上げてきています。
 翁長知事がこれまで4回の訪米で米国政府との意見交換を行うとともに、延べ34人の連邦議会議員と面談を行ってきました。今回の訪米では、ワシントンDCで国内外の有識者と連携したシンポジウムを開催し、沖縄県の過重な基地負担の現状、沖縄の基地建設の歴史的経緯、辺野古新基地に反対する県民世論を正確に伝えることができました。
このように、知事が直接訪米し、その時々の沖縄の情報を正確に伝え、米側の理解を促す取り組みを継続することは、沖縄の基地問題を解決するためには必要であり、特に安倍政権が「辺野古が唯一」の解決策との考え方に固執している現在の状況では、これまで以上に、知事の訪米行動は重要な取り組みになっています。よって、「知事訪米事業」の削除を求める修正案に反対をするものです。

 ところで、安倍政権は県民の圧倒的な民意を無視して、辺野古新基地建設を強権的な手法で進めてきましたが、新基地建設計画は日米両政府の思惑どおりには進んでいません。仲井真知事が自らの公約を破り、辺野古埋立申請を承認したのは2013年12月のことでした。しかしその後、翁長知事による埋立て承認の取消し処分、訴訟結果としての和解による工事停止、そして決して諦めずに不屈にたたかう沖縄県民の日常的な抗議行動によって、新基地建設計画は既に3年も遅れています。
 日米両政府の計画通りに進んでいたなら、今年2018 年1 月時点では既に護岸工事のほとんどが完成し、埋立本体工事も約8割が完了している計画となっていました。しかし現在は、工事工程表で示された32項目のうち、5か所の護岸工事が着手されている状況であり、日米両政府の計画は大幅に遅れているのが、今の辺野古の現状です。
 さらに、これまで辺野古新基地建設が計画されている海域には、活断層の存在が指摘されてきましたが、このほど沖縄防衛局はその活断層の可能性が指摘されている部分を黒塗りにして地質調査結果を開示しました。沖縄防衛局は活断層の存在を黒塗りで隠蔽したいようですが、しかし、沖縄防衛局が開示した別の報告書には「活断層の疑い」がしっかりと明記されています。
 それだけではありません。報告書には、活断層の疑いを示す海底とは、さらに別の海底において、地質調査が成立しないほどの軟弱地盤が深さ40mにもわたって続いていることが、明らかになりました。基地建設などに使用される巨大な構造物の場合、地盤の強度を示すN値と呼ばれる値は50単位程が必要と言われていますが、報告書では「N値ゼロを示すものが多い」と記載され、地質専門家はマヨネーズ並みの脆弱地盤だと指摘しております。
 辺野古新基地建設は日米両政府の思惑通りには進まないし、必ずや沖縄県民の抗議行動によって断念へと追い込まれるでしょう。こうした沖縄の現状を正確に、当事者である米国政府に直接伝えるためにも、翁長知事の訪米事業はますます重要になっています。
 今回の沖縄自民党提出の修正案は、「あらゆる手段で新基地を止める」という翁長知事の取り組みに反対するものであり、沖縄県民の圧倒的民意を無視して強権的に工事を進める安倍政権の立場にたつものです。保革を越えた辺野古新基地建設反対の民意の分断を狙う修正案に、改めて反対を表明するものです。

 さて、新年度一般会計予算案は、安全・安心に暮らせる優しい社会を構築するとともに、アジア経済の活力を取り込むことなどにより、県経済全体を活性化させ、安定的に発展させる好循環をつくりあげていくための大事な予算です。
安倍政権は辺野古新基地建設問題で対立する翁長県政に対して、新基地建設を認めろと言わんばかりに、沖縄振興予算の減額を続けています。沖縄が本土復帰を目前に控えた1971年(昭和46年)、政府は沖縄振興開発特別措置法を制定いたしました。悲惨な地上戦で甚大な被害を被り、戦後も長年にわたり米軍占領下にあった沖縄に対して、「県民への償いの心」をもって事にあたるとされたのが、沖振法の原点です。基地と振興策をリンクさせるようなやり方は許されません。
 また、安倍政権は沖縄振興予算について概算要求の段階で総額を決め、国直轄事業を優先的に確保した上で、県や市町村にとって自由度の高い一括交付金については大幅な削減を行いました。沖縄の自主性を奪うような政府の露骨な手法に、多くの県民が不信感を募らせています。しかし、こうしたなかでも翁長県政は県と市町村の一括交付金の配分について、5対3の配分を堅持するとともに、市町村への影響を最小限に抑えるために、さらに県から市町村へ12億円の支援を行うなど、きめ細やかな配慮を行っています。
 そして、新年度予算の主な施策には、多くの保護者のみなさんの願いであった、子ども医療費助成制度の現物給付の導入と一部自己負担の廃止、窓口完全無料化が実現いたします。さらに通院医療費無料化の対象年齢拡大については、県と市町村との協議会が設置され、さらなる制度拡充が検討されることになりました。待機児童解消に向けては、市町村の認可保育園増設を支援し、保育土の待遇改善事業にも取り組みます。沖縄の保育において、大きな役割を果たしてきた認可外保育施設に向けては給食費支援の大幅拡充が実現いたします。子どもたち一人ひとりに行き届いた教育の実現のために、少人数学級は小学校6年生まで拡大いたします。
 また、子どもの貧困対策では前年度比12億円増額の187億円の予算を確保し、放課後児童クラブ支援事業の拡充や、新たに「ひとり親家庭の高校生等に対する交通費支援」がはじまります。
 保健医療の分野では、性暴力被害者ワンストップ支援センターの施設建設、職員体制は30人から50人へと増員され、24時間365日対応へと拡充されます。北部基幹病院構想の実現に向けては、関係団体との協議会が設置され、建設にむけた議論がはじまっています。
 そして、経済振興の面では、アジア経済戦略構想の実現に向けた諸施策をはじめ、自立型経済の構築に向けた基盤整備、沖縄の亜熱帯性気候等を活かした農林水産業の振興、好調な県経済をさらに発展させるための諸施策が盛り込まれ、さらに、正社員雇用拡大助成金の創設など、雇用の質の改善に係る施策も充実しています。
このように、当初予算案は、沖縄らしい優しい社会を創りあげると共に、好況が続く沖縄経済をより発展させるための予算となっており、高く評価をするものです。
 よって、甲第1号議案「平成30年度沖縄県一般会計予算」について、沖縄自民党提出の修正案に反対し、原案に賛成するものです。