翁長知事の施政方針(1)

 2月15日、沖縄県議会2月定例会が開会した。翁長知事は、2017年度一般会計予算などを議会に提案し、その趣旨説明を行った。趣旨説明ということにはなっているが施政方針演説といってもいい、中身の濃いものであった。翁長県政の2年間をきちんとみるうえで欠かせないと思うので、以下にその全文を紹介したい。
 宮古島市長選、浦添市長選と続けて、翁長知事が支持する候補が敗れ、翁長知事の2年後の再選が危うくなって来ているなどという論評も出ている。しかし、これは皮相的だ。
 菅官房長官は、「辺野古でのコンクリートブロック投下が浦添市長選でマイナスの影響を与えることはなかった」といっているが、市政刷新を訴えた候補が、どれほど辺野古新基地や那覇軍港の浦添移設について市民に語り掛けたか。参院選で発揮したオール沖縄の強みが見られなかったのは、そのあたりに起因しているのではないか。
 翁長知事の2年間の実績は、県民のよりどころである。これまで以上に厳しいたたかいになるであろう「第2ステージ」では、なぜ県民が団結するのかということを繰り返し確認することになるだろう。もちろん、辺野古の宝の海を守ること、しかしそれだけではない。「誇りある豊かさ」を求めてきた2年間の前進という宝をさらに大きくすること、これらにたいする確信が大きなとりでになると思う。

 

<2017年2月定例沖縄県議会での翁長雄志知事提案説明要旨>

I はじめに
 ハイサイ、グスーヨ一、チューウガナビラ。
 平成29年第1回沖縄県議会の開会にあたり、まず県政運営にあたっての私の所信の一端を申し述べ、県議会並びに県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

 第1に、「県政運営に取り組む決意について」申し上げます。
 県知事就任から2年余りが経過しましたが、この間、基地問題をはじめ、経済や文化、教育、福祉、保健医療など、様々な分野の課題に全力で取り組んでまいりました。
 基地問題については、県民の過重な基地負担の軽減を実現するべく、公約の着実な実現に向けて取り組んでおり、特に、辺野古に新基地は造らせないということを引き続き県政運営の柱に、全力で取り組んでまいります。
同時に、世界一危険とも言われる普天間飛行場の固定化は絶対に許されないと考えており、5年以内の運用停止を含めた危険性の除去について、政府に強く求めてまいります。
 経済面では、昨年3月に策定した「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」を着実に推進し、沖縄の経済産業の成長を実現してまいります。私は、知事就任以来、近隣諸外国、各地域へのトップセールスを積極的に展開する中で、各地の経済界関係者における沖縄への関心や期待の高さを実感しているところであります。昨年12月には、沖縄県福建省との経済交流促進に係る覚書も締結することができました。アジアの巨大なマーケットの中心に位置する地理的優位性と、沖縄が誇るソフトパワーなどの強みを活かし、各地の期待に応えるものを作り上げ、県経済の発展及び県民生活の向上につなげてまいります。
 また、しまくとぅばをはじめとするウチナー文化の普及継承、子どもの貧困問題の解消、沖縄全体の底上げにつながる離島の振興などは、沖縄の未来を築いていくために重要であり、引き続き積極的に施策を展開してまいります。
 私が先の知事選挙において掲げた公約については、ほぼ全てに着手できたところであります。
 完全失業率や有効求人倍率、小中学校の全国学力・学習状況調査における全国平均との差など改善の傾向が顕著な指標も出てきており、県政運営の成果は着実にあがりつつあります。
 しかしながら、課題は未だ山積しております。
 今後とも、関係各方面と丁寧に対話を重ね、沖縄県のさらなる飛躍と県民福祉の向上に向け、全力で県政運営に取り組み、「誇りある豊かさ」を実現してまいります。

 第2に、『沖縄を取り巻く現状の認識について』申し上げます。
国際社会においては、グローバル化が急速に進行する一方で、国際テロリズムや地域紛争に伴う難民の発生などが大きな課題となっております。また、情報通信技術の急激な進化と普及による「第4次産業革命」を迎える中、世界的に産業構造や社会環境の激変が生じており、沖縄県においても、この変革への対応が求められる状況にあります。また、本年1月に誕生した米国新政権の動向についても、世界中が注目しているところです。
 我が国においては、政府の平成29年度の経済見通しによりますと、雇用・所得環境が引き続き改善し、民需を中心とした景気回復が見込まれております。また、高齢化を伴う人口減少の時代を迎え、地方創生に向けた取組が引き続き全国各地で推進されております。
 沖縄県内の経済は、観光関連指標が前年を上回るなど、景気は全体として拡大しております。
 平成28年の入域観光客数は約861万人、うち外国人客が約208万人と4年連続で過去最高を更新し、観光収入は約6千億円、関連産業を含めた経済波及効果は1兆円を超えました。アジア各地との聞の直行便数も平成24年3月末の週49便から本年1月末には週175便と大幅に伸びており、那覇空港における国際貨物取扱量も着実に増加しております。
また、県外及び外資系企業による新たなリゾートホテルなどの進出も続いております。
情報通信関連産業についても、雇用者数は4万人を超え、生産額は4千億円を突破しました。
  年平均の完全失業率は、平成27年の5.1%から平成28年は4.4%と改善し、有効求人倍率については、年平均では復帰後最高値を更新し続け、直近の平成28年12月においても1.02倍と、雇用情勢は着実に好転しております。
  その一方で、求人と求職のミスマッチの解消、若年者等の高い離職率や、従業員の正規雇用化などの雇用の質の改善、県民所得の向上などが継続的な課題となっております。また、沖縄県の子どもの貧困率は29.9%と深刻な状況にあり、貧困の世代間連鎖の防止など、課題の解決に向けて全力で取り組んでまいります。
   周辺諸国との関係については、尖閣諸島の周辺水域を巡る状況を踏まえ、宮古八重山地域を始め、県民の平穏な生活環境及び県内漁業者の安全確保に向けて、国に要請するとともに、国の関係機関との連携を強化しているところです。国においては、関係改善に向けた取組も模索されており、沖縄県としても、文化や経済など多面的な分野の交流を通じ、諸国民との信頼の構築を図り、地域の平和と発展に貢献してまいります。