安倍政権は辺野古新基地も高江も展望がないまま強行突破をはかろうとしている(3)

 「米軍北部訓練場ヘリパッド建設に関する意見書」は自民党の反対討論と共産党の賛成討論があった。反対討論が複数あったのでバランスをとって賛成討論も複数にするということが議会ではわりにあるのだが、与党会派は、意見書そのものが非常にわかりやすいものであり、多言を要さないと考えたのであろう。
 とはいっても北部訓練場返還問題の全体像をどうとらえるかという点では、答えているわけではないから、比嘉瑞己県議の賛成討論を見ておきたい。

 

 1995年、米兵による少女暴行事件を契機に、「米軍基地の整理縮小」を求める県民の声が 大きく高まり、 翌年、日米両政府は日米特別行動委員会(SACO)最終報告を発表しました。 そこには米軍北部訓練場の部分返還が合意されていましたが、しかしそれは、返還される 区域にあった既存のヘリパッドを残る区域に移設すること、東村高江集落を取り囲むよう に新たに6カ所のヘリパッドを建設するという「条件付き返還」というものでした。
 わたしたち沖縄県民が自ら望んでできた米軍基地はひとつもありません。国際法に違反 し県民から奪った土地を「返してやる代わりに、新たな負担を受け入れろ」。条件付き返還 というSACO合意の欺瞞性は、普天間基地辺野古移設の問題と根源は同じです。わたし たち沖縄県民の土地である米軍北部訓練場・やんばるの森は、ヘリパッドの移設条件付き ではなく、無条件全面返還を求めることは、独立した主権国家として当然ではありません か。
 さらに政府は、北部訓練場の返還計画の当初から、危険な欠陥機オスプレイの配備を隠し 続けてきました。沖縄防衛局が実施した「自主アセス」なるものでも、オスプレイの運用をあえて隠ぺいし続けるズサンなものでした。県民の声を無視して配備されたオスプレイは、昼夜を問わず低空で集落の上を飛び、地域住民は騒音による深刻な健康被害や、いつ墜落してくるかわからない恐怖に怯えて暮らしています。今議会の軍特委員会では、今年 6 月の東村高江での夜間騒音発生回数が383回を数え、2014年と比較して24倍にも上ることが明らかになりました。オスプレイによる夜間の騒音の影響で睡眠不足となった児童が学校を欠席せざるを得なくなるなど、地域住民は、殺人的な爆音に、精神的にも肉体的にも大きな被害を受けています。日米両政府が「県民の負担軽減」の名の下で強行してきたことは、新たな基地機能の再編強化であり、県民へのさらなる負担増でしかありません。
 世界自然遺産候補地にも挙がるヤンバルの森には、国の天然記念物ヤンバルクイナノグチゲラなど貴重な動植物1849種の生息が確認されています。貴重な自然環境を破壊す るオスプレイパッド建設は断念すべきです。
 地元の高江区は区の最高意思決定機関である区民総会において、過去2回のヘリパッド 建設反対決議を挙げています。また東村の伊集村長に、わたしもお話しを伺ってきました。 伊集村長はヘリパッド移設容認の基本的立場を示しながらも、しかし危険なオスプレイが 配備されることは許されない。ご自身も建白書に賛成し、東京にも要請に行ったのでオス プレイ配備に反対の立場だと明確に述べていました。また、「今回のヘリパッド建設のため に工事車両が村道使用することは絶対にさせてはいけない。不退転の決意で守っていく」 とも表明しました。
 いま問題となっている米軍北部訓練場ヘリパッド建設は、在沖米海兵隊が欠陥機オスプ レイを使用するためにつくられようしている新たな米軍施設です。沖縄に駐留する海兵隊 は「日本防衛の任務をもっていない」とアメリカ政府も認め、実際にこれまでもイラクアフガニスタンなど、アメリカの戦争のために出撃してきました。日本の安全や抑止力の ために駐留しているわけではありません。
 県内で発生した米軍関係者による、民間人が犠牲となった殺人事件は本土復帰後だけで も13件。そのうち12件 92%が米海兵隊員、あるいは元海兵隊員による殺人です。「もは や我慢の限界は越えた、沖縄から海兵隊は出て行って欲しい」。これが圧倒的な県民の心の 叫びです。
 先ほど、意見書に対する反対の声のなかで、「ヘリパッド建設を容認し、北部訓練場の過 半の返還が行われれば、沖縄における米軍専用施設面積18%の軽減になる」との指摘がありました。一方で、県議会全会一致で可決した「在沖米海兵隊の撤退」が実現すれば、沖縄に占める在沖米軍専用施設面積の割合は、現在の73.8%から40.9%へと大幅に減少させることができます。
 わたしたち沖縄県議会は2012年 10月に「オスプレイ配備に反対する抗議決議」を全会 一致で可決をし、2013年 1月には、オール沖縄で「建白書」を政府に手渡し、危険なオス プレイの配備撤回を求めました。さらに、今年4月 にうるま市で起きた元米海兵隊員の軍 属による女性死体遺棄事件への抗議決議では「在沖米海兵隊の撤退」を求め、全会一致で可決をいたしました。数々の歴史的な県議会決議の重みを鑑みれば、高江オスプレイパッド建設の断念を求めることは、県民の負託に応える議会として当然のことではありませんか。
 去った参議院選挙の沖縄選挙区では、辺野古新基地建設反対・オスプレイ反対を掲げる 伊波洋一候補が、相手候補である安倍政権の現職大臣に10万 6千票余りの歴史的大差で勝利をおさめました。圧倒的な県民の民意が示された投票日の翌日、安倍政権はヘリパッド 建設のための資材搬入を強行しました。抗議をする県民に対しては、県外から500人もの 機動隊を導入し威圧しています。警察法第2条には「警察の活動は不偏不党かつ公正中立 を旨とし、いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権 限を濫用することがあってはならない」と警察の任務を定めています。高江に向かう車両 を一台一台止めては検問をする、ましてや沖縄県の管理である県道を封鎖することなど、 法治国家としてあるまじき暴挙は絶対に許されるものではありません。さらに政府は、度 重なる米兵犯罪の対策として防犯パトロールのために防衛省職員を派遣しましたが、その 職員にヘリパッド建設のための「警備要員」の任務も兼任させる計画も明らかになりまし た。どこまで県民を愚弄するやり方なのでしょうか。
 安倍政権の、地方自治や民主主義をないがしろにするような強権的なやり方は「平成の 琉球処分」と指摘され、圧倒的な民意を踏みにじり、巨大な国家権力によって、辺野古新基地建設や高江ヘリパッド建設を進めるその手法は、「現代の銃剣とブルドーザー」と非難されています。安倍首相はことあるごとに「沖縄県民の気持ちに寄り添う」と言いますが、これほどまでに、アメリカの顔色ばかりを窺い、主権者であるわたしたち沖縄県民の気持ちを踏みにじってきた首相は他にはいません。 `
 辺野古の海も、高江の森も、日米両政府のものではありません。安倍政権は沖縄県民の民意を尊重して、在沖米海兵隊の撤退をアメリカ政府に求め、辺野古新基地建設・高江オスプレイパッド建設を断念すべきです。
 よって、議員提出議案第1号「米軍北部訓練場ヘリパッド建設に関する意見書」に賛成 をするものです。議員各位のご賛同をよろしくお願いします。