普天間基地隣接の市民駐車場での人権侵害(3)

 では、日弁連人権擁護委員会は、米軍にたいしどのような勧告をおこなったのだろうか。

        勧告書(2016年2月26日付)
○勧告の趣旨
 申立人(駐車場の利用を拒否されたと訴えた5人)らは、2012年 (平成24年)9月 26日 以降、米軍によるオスプレイ配備に反対する意見を有し、ワッペンやシンボルカラーのチョッキ等を身につけ、抗議行動を行い、それに際して、普天間市民駐車場(以下「本件駐車場」という。)を利用していたものである。これに対して、貴殿(米軍海兵隊普天間基地司令官)は、2012年 (平成24年)11月 3日、「警備上の理由」として本件駐車場を閉鎖した。その後、宜野湾市との協議を経て、20 12年 (平成24年)12月 28日、本件駐車場の利用を再開したものの、米軍のオスプレイ配備に反対する意見を持ち、これに基づいて抗議行動を行っていることが明らかな申立人ら市民による本件駐車場及びその付設トイレの利用をさせないよう宜野湾市が監視することを再開の条件とした。そして、再開以降も、宜野湾市及び同市が管理を委託する宜野湾市観光振興協会(以下「観光協会」という。)に対し、ワッペンやそのシンボルカラーのチョッキ等を身につけるなどして、米軍への抗議の意思を持ち、こ れに基づいて普天間基地野嵩ゲート前や本件駐車場で米軍への抗議行動を行っていることが明らかな者の利用を拒否するよう強く求め、米軍への抗議行動を行う者が本件駐車場を利用していないか監視するため、米軍兵士を巡回させている。
 貴殿の行為は、日本国憲法及び国際人権(自由権)規約で保障された、申立人らの思想・信条の自由、表現の自由等を侵害するものである。よって当連合会は、貴殿に対し次のとおり 勧告する。
(1)今後米軍に対する抗議行動を行う市民が本件駐車場及びその付設トイレを利用することを理由として本件駐車場を開鎖しないこと。
(2)宜野湾市及び観光協会に対し、米軍に対する抗議行動を行っている市民に本件駐車場及びその付設トイレを利用させないよう求めないこと。
(3)兵士を巡回させて米軍に対する抗議行動を行っている市民が本件駐車場を利用しているか否かを監視しないこと。

 「米軍への抗議行動」は、平和的手段であっても認めないとしているところにこの事件の核心がある。したがって、日本国憲法および国際人権規約に保障された思想・信条の自由、表現の自由に対する侵害として勧告するというものだ。この勧告を米軍が拒否すれば、米軍は、日本国民の基本的人権と相反する存在であるとの批判をうけることになるであろう。