沖縄県民投票目前 抵抗をどう乗り越える

 沖縄県の玉城知事は1月11日、県庁で記者会見をおこない、県民投票を実施しない意向を示している5つの市が態度を変えなくても予定通り2月24日に県民投票を実施すること、実施に関する条例の改正は行わないことを明らかにしました。県民投票は、「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対し、県民の意思を的確に反映させる」ためにおこなわれます。県民投票をおこなわないことを表明しているのは、宜野湾市沖縄市宮古島市石垣市と、議会が投票の事務にかかわる予算を否決しているうるま市の5市。沖縄県は、引き続き、これらの市にたいして説得を続けるとしています。

 玉城知事が記者会見で出したコメントは次のとおり。

 ○県民投票に関し、先ほど与党代表者の皆様と面談を行いました。その結果、①県民投票は予定通り、本年2月24日に実施すること②条例の改正については、様々な課題があり難しいこと③予算措置がなされていない5市については、これまで通り最大限協力をお願いしていくこと―、以上のことを確認しました。

 ○今回の県民投票条例については、法定署名数の2万3171筆を大きく上回る9万2848筆の署名の提出をもって県民によって発案され、平成30年9月5日に、地方自治法第74条の規定に基づき同条例の制定が県に請求されたものであります。

 ○県民投票は、通常の選挙と同様に、投票資格者名簿の調製、投票及び開票の事務など、市町村の協力がなければ実施できないものであります。

 ○そのため、条例の制定にあたり、県民投票に係る事務の一部を市町村に移譲するため、県は、直接請求を受けた平成30年9月5日と同日付けで、地方自治法第252条の17の2の規定に基づき、市町村長への協議を行ったところです。

 ○当該協議を経て、県は、平成30年9月20日に条例案を県議会に提出し、議会での審議を経て可決され、平成30年10月31日付けで公布、施行されたところです。これにより、県民投票に係る事務の一部が市町村に移譲されております。

 ○また、県民投票に関する事務を執行するための予算については、地方財政法に基づき、県が全額交付金で措置することとしており、各市町村においては、それを財源とした必要経費について、補正予算に計上していただいているところであり、36市町村で予算措置がされております。

 ○一方で、残る5市については、議会に対して当該事務に係る経費が地方自治法第177条第1項で規定されている義務に属する経費として再議に付したものの、否決されており事務の執行に係る予算措置がなされておりません。

 ○自治法第177条第2項においては、義務に属する経費について、議会で削除しまたは減額したときは、市町村長はその経費を支出することができるとしておりますが、宮古島市宜野湾市沖縄市においては、再議で否決され、市議会の判断は重いなどとして、県民投票の事務を実施しないとしております。

 ○県としては、自治法第177条第2項の解釈について、義務に属する経費として再議に付したものであること、また、「できる」とされている規定は、権利等を与えられていると同時にその権利等を一定の場合には行使する義務をも負う、という意味も含むものと考えられ、市町村の長に裁量権を付与したものではない旨をご説明をしているところです。

 ○県民投票条例の施行により、県及び市町村は、同条例の規定に基づき、県民投票に関する事務を執行する義務があるものであり、仮に当該事務を執行しない場合には、同条例及び地方自治法の規定に違反することになると考えております。

 ○県としては、違法な状態になることを回避するため、対話を通して市町村に協力を求めるとともに、地方自治法第252条の17の4規定に基づく是正の要求も検討してまいります。

 ○県民投票の全県実施を断念した経緯はなく、引き続き、全ての市町村で県民投票が実施できるよう、全力を尽くしてまいります。

 

 2018年9月の知事選では、辺野古新基地ノーを掲げた玉城デニー氏が安倍政権が支援する相手候補に8万票の大差で当選しました。翁長前知事に続き、玉城知事も辺野古新基地建設ノーを最大の公約として当選したことから、沖縄の民意は辺野古新基地建設ノーであることは明確。安倍政権は、沖縄県民に寄り添うと言いながら、基地建設のために、大浦湾に土砂投入を始めました。こうしたなかで行われる県民投票です。

 基地建設を進める政府としては、県民投票をこころよく思っていないことは明らかです。投票事務を拒否している5市の市長も同じでしょう。沖縄市の桑江市長は、選択肢が○か×しかないのはいかがかなどと言っているようですが、県民投票の意義をうすめるための駆け引きの一つのように思われます。それは、過去、幾多の住民投票が選択肢を増やすことで、民意が不鮮明になった例をみれば、そう言わざるをえません。

 そもそも、全県で行われようとしている県民投票を、市長の考えによってその市だけが投票できないということがあってよいのでしょうか。憲法違反という指摘があります。沖縄弁護士会の天方徹会長は緊急の声明を1月12日に出しました。「一部の県民から県の意思形成に参加する機会を奪うことは決して許されない」とし、全県で県民投票の機会が保障されるよう求めています。天方会長は記者会見で、「(県民投票の)設問のあり方であるとか、これについてもご意見が色々あって、そういったことについても例えば、県民投票の場において白票を投ずるであるとか、棄権をするであるとか、何らかの記載をして投票するであるとか、いう意見表明をそれぞれできるはず」と話しました。

 市長が投票を行わないとしている市では、投票が行えるようにしてほしいという市民の要請活動が続けられています。

 市長や議会のリコール運動をするとか、市長を相手に損害賠償を求める訴訟を検討する動きもあるようです。時間的には、2月24日の投票には間に合わないと思われますが、市民の投票権を奪うことにたいし、強い抗議の活動をしたいという表明でしょう。

 市が管理する県民投票が行われない市では、市民が独自に呼びかける「模擬投票」を行おうという意見も出ています。「公的なものではないので、県民投票の投票結果にはんえいされることはないが、これだけの民意が切り捨てられたということを示すことにはなり、その意味は小さくない」と見ている人もいます。