沖縄戦訴訟控訴審判決(1)

 福岡高裁那覇支部は2017年11月30日、沖縄戦民間人被害国家賠償訴訟について控訴人の請求を退ける判決を出しました。多見谷寿郎裁判長は「軍の統制下で組織的に自殺を教唆、手助けしたことにより生じた」と沖縄戦特有の被害実態に言及したことや1審がまったくふれることのなかった戦時下のPTSDにも言及したが、「国家無答責」に立脚し、控訴任側の「軍がおこなった不法行為にまで国家無答責は適用されるものではない」という主張を退けた。この論理展開は、判決文をよく見てもなかなか受け入れられるものではなく、一言でいえば屁理屈だ。控訴人からも国家の責任によって起こした戦争であり、なぜ個々の兵士の責任を認めるが国の責任を認めないというのは、あまりにも非常識だと激しい批判の声があがった。
 地上戦によって、軍人の死者よりも民間人の死者の方が多いということになった沖縄。この沖縄戦特有の事情ということを見なければならない。当時の県民60万人のうち、4分の1の約15万人が戦死し、両親や家族を亡くし生きる糧を失った人たちや、生き延びたものの身体的・精神的後遺障害に苦しむ人たちを多数生み出した。そのマイナスから沖縄は、再出発をした。それが戦後70年余、経ってもなお救済されていない。高裁判決は、地裁判決よりその認識は前進しているとはいえるが、戦争による民間人被害の救済なしに、二度と国家の責任による戦争を起こさせない「国のかたち」を築くことはできない、この視点を欠落させている。
 被害者らは2012年8月、40人が原告となり、1人あたり1100慢円の損害賠償を求めた。その後の追加提訴で原告は79人になった。2016年3月、那覇地裁は、戦前の国家の行為について責任は問われないとする「国家無答責」を根拠に原告の請求を棄却。また、事実認定は一定程度行ったものの、精神的後遺障害にはまったくふれない不当なもので、原告は、判決を不服として控訴した。