米ジュゴン訴訟報告会から

 名護市辺野古の基地建設がジュゴンに悪影響を与えるとして沖縄県民3人と日米の環境保護団体などが米国防総省を相手に工事の中止を求めた米ジュゴン訴訟で、サンフランシスコ連邦地裁は来年5月24日に審理を行うことが決定しています。現在は、5月のヒヤリングまでのディスカバリー期間で、情報公開制度を活用して情報をとる、裁判勝利に向けて全力で準備をする非常に重要な期間だといいます。そのなかで、自然保護団・米生物多様センター(CBD)が、辺野古や高江で現場を見、住民らと交流することで、裁判闘争の力にすることを目的に来日しました。12月2日、那覇市の自治会館で報告会を開きました。

 

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マイクを持っているのが真喜志好一さん 

 

以下、メモから
 【籠橋隆明弁護士のあいさつ】
 2003年に提訴し、10年以上たたかっている。辺野古新基地はアメリカが使うが、新基地建設をめぐる争いは、日本国民と日本の政府で、アメリカはどこにも出てこない。しかし、アメリカ政府も当事者だ。こう考えてアメリカで裁判をおこなうことを考えた。沖縄県内では那覇の弁護士たちが奮闘している。
 辺野古基地を建設しているのは日本政府であり、なぜ米国がさばけるのかと疑問に思っている人もいるだろう。日本国政府は、キャンプ・シュワブに造るには、米国の許可がいる。米国政府は、やるかどうかを決める権限を持っている。米国政府が基地建設をコントロールできる。そこに私たちは目を付けた。実際、基地建設の中身について、どんな基地がいいかも米国政府がすべて決めている。辺野古新基地建設を進めているのは日本政府だが、本当の主人公は米国政府だ。
文化財保護という法律がアメリカにある。その法律に、アメリカ政府は、世界の文化財を守る義務があるという条項がある。アメリカ政府には、日本の文化財を守る義務がある。ジュゴンは、日本では文化財保護法文化財として規定されている。だからアメリカ政府は、ジュゴンを守る義務がある。このアメリカの法律を、アメリカ政府が求めている辺野古新基地建設に適用させようとしている。
国防総省は、当初、ジュゴンは生き物だから文化財ではないと言っていた。しかし裁判所は生き物で会っても文化財であると言って国防総省の主張を退けた。そのうえで裁判所は、違法な状態であると判断している。サンフランシスコ連邦地裁で負けたのは、裁判官が代わったからだ。それが高等裁判所に行って、地裁判決が退けられた。アメリカの友人たち、アメリカの弁護士たちが奮闘して差し戻しになった。
 この裁判の意義がもう一つある。この裁判を通じて、アメリカの中に友人をつくることだ。今回、CBDメンバーを迎えることができたが、最も重要な到達点だ。これまでたくさんの成果を築いてきたが、それらすべて出し切って勝ちたい。沖縄の皆さんと一体感があって初めて勝てる裁判だ。連携を深め裁判を進めたい。


 【CBDの弁護士 Miyoko Sakashita】
 やんばるに行き、交流ができてよかった。辺野古でとても戦闘的にたたかっている若い女性が取った行動は、自分の土地に入れないのはどういう気持かということだった。大浦湾は、中に入れない制限地区で、ジュゴンに必要な海草がたくさんあるところだった。そこが破壊されようとしている。NHPA法(米文化財保護法)は、文化を保護して行こうという仕組みを持った法律です。その法律の根本部分には、米国政府は世界中の文化財を守るというものがあります。なぜ、この法律を適用させるのか。それは、米国でも適用できる数少ない法律だからです。NHPA法はアメリカの法律だが日本の法律を受け入れることができるからです。(日本の文化財法で守られる文化財があるなら守りましょうということ、というのが会場での和田重太弁護士の補足)
 CBDと日本が一緒にやっていくことが、この裁判の勝利のポイントです。私は、明るいものになるととらえている。それは、米国防総省が、工事がジュゴンに対して、生息地に影響を与えることはないというばかげたことを言っているからだ。大浦湾をまもること、そしてNHPA法を適用させる初めての取り組みとなっているということだ。
 NHPA法を適用させ、次のステップに向かい、最終的にはアメリカが基地建設を諦めるようにさせたい。護岸が造られようとしており、危機的状況に来ている。どのように協力し合って、たたかっていけるか、ぜひ、みなさんと話しあいたい。
ジュゴンにとってもオフリミットとされている海を開放させることが最終目的です。


【CBD Peter Galvin】
 訴訟とはソーシャルムーブメントとらえている。
 米国防総省の文書から、1966年から辺野古に基地をつくることを狙っていたことがわかった。米国政府が日本政府に対して基地が満たすべき項目が詳細に書かれている。ドアノブがどうでなければいけないかということまで書かれている。
米国政府は、地元の、影響を受ける人と直接話さない、東京と話すという態度です。この訴訟は初めて、裁判所によって米国政府が沖縄の人と一緒に座って、きちんとその目で確かめて、ジュゴンの飼育環境が壊されよとしているか確かめなさいという初めてのことです。実際にはうまくいっていない。どんなにひどいことが行われているか、米政府は直接、地元(沖縄)の人と話し合うというプロセスを避けようとしている、何が行われているか、暴露されることを恐れています。国防総省が初めて沖縄の人々と話し合わなければいけないプロセスが始まろうとしているのです。
辺野古基地建設の歴史を考えるときに、エイリアンとアバターを思い出す。同じシチュエーションだ。エイリアンは、地球を襲ってきて彼らをやっつけるのは困難だ。エイリアンとの戦いに負けるのは想像できないことだ。アバターは、私たちのケースに近いと思う。手にいれられない物質を手に入れようと行こうとする。その映画で見たようなことを大浦湾でみたように思う。アメリカムービーのいいところは、エンディングは正しい人たちが必ず勝つ。
 訴訟の中で、どのように展開されていくか。5月までは集中的にたたかっていかないといけない。オスプレイに対しても影響を与えるぐらいにどんどんやっていかなければならない。
 きょう会場にきている(先住民族の)マティさんは、スタンディングロックのたたかいをやった。世界中に知られることになった。辺野古についても政界中の人たちに何が起こっているのか、何が問題か知らせていきたい。
 1回目の訪日では、真喜志好一との出会いがあった。2回目は、やんばるの森を見た。やんばるの森は地球上でも重要な森の一つだ。そこにヘリパッドが造られている。ノグチゲラの生息地だ。ヘリパッドだけでも十分負荷がかかっている。おそらくオスプレイが追加され、大きな影響を受ける。騒音、振動がノグチゲラその他に影響を与えることははかりしれない。今回5回目の訪問で、ジュゴンを見ることができた。といっても博物館で、だ。生きていないものだったが、それでも感動した。次は6回目。それでも見れなければ、そのあと、ジュゴンが自由に沖縄の海を回遊している姿を見たい。


【吉川秀樹】
 サポーターとしてかかわっている。国防総省がやったという協議について話したい。二つある。国防総省自体が日本のとんでもないアセスを取りいれたことだ。2点目。国防総省は県教育委員会、名護市の教育委員会に行ったと書いて、いかにも沖縄で話し合っているように書いた。それを検証するために、県庁や名護博物館で来ていましたか、聞いていましたかと聞きました。「来てないはずよ、記憶もないし、記録もない」というのが答えでした。やはり、国防総省が沖縄の人と話し合うと、基地はつくれないことが分かる。
                     ◇
 同訴訟は、2003年9月に提訴。原告は、ジュゴンは日本の文化財保護法で天然記念物に指定されており、基地建設にあたって米国防総省は米文化財保護法(NHPA法)に基づき、ジュゴンの保護策を示すよう求めました。
 2015年2月、連邦地裁は、司法による政治介入を避ける「政治問題の法理」を理由に原告敗訴の判決を出しましたが、今年8月、サンフランシスコ連邦高裁は、「原告らは差し止めを請求する原告適格を有し、差し止め請求は政治問題ではない」との判断を示し、差し戻しを決定しました。