翁長知事、稲嶺市長の訪米活動(2)

 現在、沖縄県議会2月定例会が開会中だが、翁長知事を攻撃する論点として、①“最高裁で県は敗訴したから、埋め立て承認の撤回はせず、新基地建設に協力せよ”②知事訪米の成果はなかった―などである。知事も与党3会派も精力的に反論しているが、ここでは②についてその一部を紹介する。
 訪米活動とその成果については、翁長知事は、ワシントンでの記者会見その他で語っているので、そちらで確認していただくとして、ここでは、知事帰国後だが、米連邦議会調査局が連邦議会議員向けに沖縄リポートをまとめたことを紹介しよう。
県議会で与党県議が「連邦議会調査局の報告書が発行されたが、これも訪米成果ではないか」と質問したことにたいして、翁長知事は「米国で調査局や補佐官などと話をしたが、しっかり要約されている。議員の政策を裏付けるために提言するような形でだされるもので、沖縄の思いがある程度伝わった」と成果を強調した。
連邦議会調査局自体、なじみが薄いが、謝花喜一郎知事公室長は「2015年の米議会連邦調査局の新規報告書などの件数は1264件であり、政策決定の参考にされるなど、連邦議会のなかでもたいへん重要な報告書の一つと考えている」と説明している。
 報告書で注目されるくだりをいくつか列記しよう。
① 更なる懸念は、最近日本政府が勝訴したにも関わらず、地元民の反対により、論争の的となっている沖縄の普天間基地の移設合意の実施についてである。
② 翁長知事は引き続き移設(計画)に反対しており、工事を阻止若しくは更に引き延ばすその他の方策を遂行している。
③ 日本政府もしくは米国政府による強引な行動は、反基地抗議を激化させる危険をはらんでいる。
沖縄県民に広く行き渡ったこのような不安のため、在沖米軍プレゼンスの持続性は、同盟にとって重大な懸念となっている。
日本政府は、最高裁で政府が勝利したから辺野古は絶対にできますと、一方的な情報を米側に伝えるばかりで、沖縄の民意は辺野古に新基地は造らせないだということをまったく伝えてこなかった。それゆえ、遠回りのようだが、沖縄の現状と民意をきちんと伝えることがどんなに困難であってもやり遂げなければならない課題になっていたのである。その意味で、一定の権威のあるところから、沖縄県の現状と新基地問題にたいする沖縄県の考え方などが正確に反映しているリポートがだされたことは、小さくない第一歩といっていいだろう。
県基地対策課は、近々、この調査局レポートを県のHPにアップするそうだが、「概要」の邦訳を以下に掲載する。

日本は、多くの外交政策面で米国の重要なパートナーである。特に、中国軍の近代化に対する防衛手段から北朝鮮の脅威に対処するなど、特に安全保障上の懸念があるためである。
(日米)同盟は、約5万人の米軍兵の前方展開及び日本におけるその他の米軍の利点を促進する。同盟の核心的要素は持続するであろうが、ドナルド・トランプ大統領下での総合的な関係は、オバマ政権下での関係性とは多少異なる可能性がある。2017年1月30日、米国は正式に環太平洋連携協定(TPP)の加盟国としての(署名を)撤回した。TPPは米国経済のリバランス、アジアの安全保障上の利益及び日本の安倍晋三首相の最優先事項として、オバマ政権の政策の目玉となってきた。2017年2月に行われたトランプ大統領、安倍首相間の首脳会談で、新政権で同盟関係が悩まされるといういくつかの懸念は軽減されたが、会談では、オブザーバーが問題視する争点は解決されなかった。大統領候補者であった際、トランプ氏は日本の貿易慣行及び、安全保障上の(同盟)関係への貢献度に非難を浴びせた。

北アメリカの外では、日本は米国の三番目に大きい輸出市場であり、二番目に大きな輸入源である。日本の企業は、米国において二番目に大きい海外直接投資源であり、日本の投資家は米財務省証券の最大の外国人保有者である。日本が協定を主張する中、米国がTPPから撤退することは、公式な経済関係における次のステップを不確かなものとする。一部の人々が2017年2月の首脳会談での二国間経済対話における議論は、公式なFTA交渉につながると主張してはいるが。

数年に渡る騒動の後、日本の政治は2012年12月の選挙で安倍氏並びに自由民主党が勝利してからは比較的安定してきており、自民党のその後の国会での利益をさらに強固にした。これらの勝利は、日本の自衛隊の権限及び順応性を強めるといったような安倍氏アジェンダに係る問題の多い主導権を執行するための国内における政治的資本を安倍氏に与えた。日本政府の政治的な一連の出来事は、日本経済を活性化し、日米同盟を強めるという安倍氏アジェンダを強化させた。2016年7月の参議院選挙における自民党内閣の圧勝は、さらに安倍首相の強さを確固たるものとし、野党の弱さを示した。

政権初期、安倍首相は20世紀の前半の日本の記録を含む敏感な歴史問題についてのコメントにより、身動きが取れなかった。歴史問題には、①第二次世界大戦時に日本兵に性行為を強要された「慰安婦」、②残虐行為を塗りつぶしていると批判者が主張している日本の歴史教科書、③A 級戦犯を含む戦没者がまつられている靖国神社への日本の指導者によるお参り、などがある。韓国との関係は悪化し、同盟3国間の協力を促進したい米国当局者の関心を引いた。安倍首相は、自らの発言を抑制し、韓国政府と暫定的な和解を開始することによって信頼を得たが、手に入れた物は、現在の韓国の混乱によって危機にさらされている。そ
の他、安倍首相は、オーストラリア、インド、ロシア、そして幾つかの東南アジア諸国と強固な関係を続けている。
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.日米防衛協力は、北朝鮮のミサイルの脅威や日中の島々を巡っての対立などの安全保障に対応し、強化、発展してきた。安倍首相は、2015年、議論となっていた安全保障法案を通過させたことにより、この傾向は加速された。この法律は、同年に改定された日米防衛ガイドラインとともに、大部分の実施はまだ先であり、同盟関係を完全に変質させるという目標を実現するためには、さらなる政治的資本や努力を要する。更なる懸念は、最近日本政府が勝訴したにもかかわらず、地元民の反対により、論争の的となっている沖縄の普天間基地の移設合意の実施についてである。
連邦議会調査局レポート
2017年2月16日