翁長知事の施政方針(2)

 第3に、「今後の沖縄振興に向けた取組について」申し上げます。
 平成29年度は、沖縄21世紀ビジョン基本計画の中間評価を踏まえ、残された課題や社会経済情勢等の変化により明らかとなった新たな課題の解消を図り、安全で、安心に暮らせる沖縄らしい優しい社会を創りあげ、好況が続く経済をより高い次元へと進化させていくための第一歩となる重要な年であります。
 私は、沖縄がもつ地域力、文化力、伝統力、人間力、自然力、離島力、共生力、経済力などのソフトパワーが子や孫の世代まで大切に引き継がれ、未来を拓くエンジンとして十二分に活かされ続けていくことが、きわめて重要であると認識しており、このような考え方の下、「経済発展」、「生活充実」 、「平和創造」の3つの視点から、施策を展開してまいります。
 「経済発展」については、まず、「アジア経済戦略構想推進計画」に基づく取組の具体化を一層推進します。その一環として、アジア経済戦略課に「戦略推進室」を設置し、推進体制の強化を図ります。併せて、昨年11月の「沖縄県アジア経済戦略構想推進・検証委員会」による提言も踏まえ、スピード感を持って、成長著しいアジアのダイナミズムと連動した観光リゾート産業や情報通信関連産業などのリーディング産業の拡充・強化、国際物流拠点の形成等を推進し、平成33年度の目標である県内総生産5兆1千億円の達成や県民所得の向上に向けて取り組んでまいります。
 平成32年度の供用開始を目指し、本島東海岸地域の振興に資する大型MICE施設を、民間活力を導入して整備を進めるとともに、沖縄観光に「ビジネスリゾート」という新機軸を打ち出し、産学官と連携したMICE関連産業の創出に取り組みます。
ITの活用による沖縄の産業全体の国際競争力を高めるため、「IT戦略センター準備室」を立ち上げ、長期的な成長戦略を構築する官民一体となった「沖縄IT産業戦略センター(仮称)」の、平成30年度の設置に向けて取り組みます。
 平成30年沖縄県で初めて開催する「第56回技能五輪全国大会、第38回全国アビリンピック」の成功に向けて、実施計画の策定や選手の育成など、着実に準備を進め、青年技能者の育成や障害を持つ方々の職業能力の向上と雇用の促進を図ります。
 また、那覇港において最大22万トン級の大型クルーズ船に対応した港湾整備を促進し、国際交流・物流機能の強化を図るとともに、那覇空港へ建設する航空機整備施設の平成30年度の供用開始を目指し、航空関連産業クラスターの形成を図ります。
鉄軌道を含む新たな公共交通システムについては、構想段階における計画案を策定し、併せて特例制度の創設や事業化に向けた取組を進めます。
 「生活充実」については、「しまくとぅば」をはじめとするウチナ一文化の普及継承をさらに推進してまいります。沖縄伝統空手・古武道を保存・継承・発展させるため「空手振興ビジョン(仮称) 」を策定するとともに、「第1回沖縄空手国際大会」の平成30年8月開催に向けた取組を進めるなど、沖縄空手会館を拠点に、世界中に1億人いるともいわれる空手愛好家の受け入れ体制の強化や交流拡大を図り、「空手発祥の地・沖縄」を世界に向けて強力に発信してまいります。
 また、平成32年度供用開始に向けて「工芸の杜(仮称) 」の整備に取り組みます。
 子どもの貧困対策については、昨年11月に、「子ども未来政策課」を新設し体制を強化しました。「沖縄県子どもの貧困対策推進基金」を活用し、市町村における子どもの学びと育ちを支援するとともに、国と連携し、子どもの貧困対策支援員の配置や居場所づくり等に取り組みます。また、国・県・市町村や関係団体等で構成する「沖縄子どもの未来県民会議」を中心に、児童養護施設退所児童等への大学等進学に必要な授業料等の給付を拡大するなど、県民運動として子どもの貧困問題の解消に向けて取り組んでまいります。
 また、「黄金(くがに)っ子応援プラン」 に基づき、市町村が実施する保育所整備や、認可外保育施設の認可化を支援するとともに、保育士の確保に努め、平成29年度末までの待機児童の解消に向けて取り組みます。
 心理的に不安定で、社会生活への適応が困難な児童に心理治療等を行う「情緒障害児短期治療施設」の平成30年4月開所に向けて、必要な施設整備を支援し、要保護児童等に対する支援の充実を図ります。
 今年4月に「中央児童相談所宮古分室」を新たに開設し、宮古島市及び関係機関と連携し、離島における迅速な児童虐待対応体制の強化を図ります。
また、「医療政策課」及び「地域保健課」を設置し、地域医療構想の実現や健康長寿おきなわの復活に向けた取組の強化を図ります。
 沖縄の「離島力」の向上に向けて、下地島空港については、離島振興及び沖縄県の経済発展に資するよう、利活用事業の実施に向け引き続き取り組んでまいります。また、離島の重要性や魅力に対する認識を深める「島あっちぃ事業」について、対象離島や派遣人数を拡充するなど、離島地域の活性化等を図ってまいります。
 きめ細やかな教育指導が可能となる少人数学級を小学5年生まで拡大し、学校教育の充実に取り組みます。
 平成28年度に開始した給付型奨学金の取組を着実に実施し、経済的に進学が困難な生徒の県外難関大学等への進学を支援してまいります。
また、公立、私立を問わず県内の高等学校1年生を対象に海外渡航予定者のパスポート取得を支援し、グローバル人材の育成をさらに推進します。
 那覇市内への新たな特別支援学校の設置については、平成33年度開校に向けて取組を進め、障害のある児童生徒の教育の充実を図ります。
 平成31年度に沖縄県平和創造の森公園等を会場として開催される「第43回全国育樹祭」の成功に向けて、万全の体制で準備を進め、花と緑あふれる県土づくりに取り組みます。
 「平和創造」については、昨年の「第6回世界のウチナーンチュ大会」において、10月30日を「世界のウチナーンチュの日」として定めました。今後、同日を中心とした式典開催などの各種取組により、ウチナーネットワークの継承・発展を一層強化してまいります。
 基地問題については、過重な基地負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、騒音問題や米軍人軍属による犯罪など基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。
 私は、日米安全保障体制の必要性は理解しております。しかしながら、戦後71年を経た今もなお、国土面積の約0.6%である沖縄県に70.6%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがありません。日本の安全保障は、日本国民全体で真剣に考えるべきであります。このような沖縄県の主張をうけ、全国知事会に「米軍基地負担に関する研究会」が設置されるなど、国内外において、理解が広がりつつあり、心強く感じているところであります。こうした取り組みにより、日米安全保障体制や沖縄の米軍基地負担の実情等についてさらに理解を広げ、過重な基地負担の軽減につながるよう全力で取り組んでまいります。
 普天間飛行場の移設については、引き続き建白書の精神に基づき、辺野古の新基地建設に反対し、県外移設を求めてまいります。
 平成29年度の県政運営にあたっては、「アジア経済戦略構想の実現」、「すべての人が希望を持ち安心して暮らせる社会の実現」、「地方創生の推進」、「健康長寿おきなわの復活」、「安全・安心・安らぎの確保」の5項目を「重点テーマ」として、沖縄振興を力強く推進する施策に取り組んでまいります。
 私は、郷土沖縄を愛する心と既存の価値観にとらわれることのない柔軟な発想、向上心をもって、持てる能力が最大限発揮される県庁づくりを進め、限りある行政資源の下で、より大きな成果を上げる行財政運営に努めてまいります。