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沖縄の心一つに チムティーチナチ(2)

 知事は北部訓練場返還式典を欠席した。菅官房長官は激怒したが、その知事の決断が、式典の欺瞞をあぶりだした。
 朝日新聞は「返還がかえって、県民と政府の溝を深めてしまったことだ。最大の原因は、沖縄の民意より、米軍の要求を優先する日本政府の姿勢にある」と批判し、「辺野古移設計画をめぐる訴訟で、最高裁は県側の主張を退けた。だが政府が強引に工事再開に突き進めば、県民の不信を高めるだけだ。そうなれば移設そのものにも、在沖米軍基地全体の運用にも、支障をきたすだろう」と警告した。
 
 政府にとって、式典にはどのようなねらいがあったのだろう。
●菅官房長官のあいさつ
 ・沖縄の本土復帰後、最大規模で、県内の米軍専用施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与すると考えている。
 ・米軍と密接に連携して住宅地上空の飛行を避けるよう対応に万全を尽くす。
 ・(再アセスについては)移設工事終了後、事後調査を実施する。
●稲田防衛大臣のあいさつ
 ・県民のみならず国民全体で安全性に大きな関心を持っている中、このような事故は残念だ。
ケネディ駐日米国大使
 ・返還式典は、日米同盟の節目を刻むものだ。
 ・約4000ヘクタールの返還は、沖縄における米軍のプレゼンスによる影響の軽減を目指し、私たちが持ち続けた決意を示すものだ。
在日米軍マルティネス司令官
 ・返還により、軍事利用に限られていた美しい自然を次世代が享受することが可能になる。文化学的、生態学的に貴重な財産になると確信する。

 

 まとめれば、米軍の抑止力を維持しつつ、日米合意に基づいて沖縄の負担軽減を考慮し、4000ヘクタールを返還するということである。米軍は沖縄の負担軽減をよく理解しているというメッセージを発すること、安倍政権も沖縄の負担軽減に取り組んでいることをアピールすることーこの点に日米政府にとっての式典の意味があった。そのねらいが沖縄県の不参加で、絵の構図が大きく崩れ、みすぼらしい絵になってしまった。ロシアとの交渉も不発。永田町では少し前まで衆院解散風が強まっていたが、急速に尻すぼみした。

 

 式典のみすぼらしさは、構図ばかりではない。語られた中身も、説得力がまったくなかった。高江集落を取り囲む6つのオスプレイ用の着陸帯をフルに活用した場合、東村はこれまでどおり生活できるのか―村民のこの際限ない不安にこたえる回答はひとかけらもなかった。オスプレイ名護市安部の海岸に墜落したことで高江区長は沖縄防衛局にも抗議に行った。
 式典では、返還される跡地の世界自然遺産登録に組み入れることも歌われた。しかし、その大前提となる「支障除去」の道は険しい。なぜかといえば、米軍がベトナム戦争時、そしてその後、訓練場をどのように使ったか、何によってどう汚染したか、履歴を公表していないからである。枯葉剤を捨てたという退役兵の証言もあるのに、である。

 日本は日中戦争で大量の毒ガスを日本国内で製造し、中国大陸に運び、貯蔵した。中国各地の戦場で日本軍は毒ガスを使用し、戦後は、国際法違反の追及を避けるために、投棄した。この投棄された毒ガスが、戦後数十年して、道路工事などで掘り出されてしまい、その際に多くの市民が被毒した。日本の司法では、その中国人被害者にたいする謝罪・賠償は退けられたが、日本政府は、世論に押されて被爆者援護に準じた形で、治療費の一部を払い、遺棄毒ガス除去に一定程度取り組んだ。こうしたことも考え合わせれば、米軍・米国が北部訓練場の土壌汚染を除去することは当然だ。それなのに、非協力的姿勢すらみせている。