オスプレイ墜落現場から

 オスプレイ墜落から5日目の12月17日、名護市安部区の浅瀬では、アメリカ軍が機体の残骸の回収を進めていた。安部集落から海岸に出ると、目の前の砂浜には米軍がブルーシートを広げ、そのこに、ゴムボートで運んできた胴体の一部とみられる破片をいったん並べていた。そして刷毛で白っぽい液体を塗っていた。腐食がすすむのを防ぐためだろうか。引きちぎれた配線もあった。
 米軍は14日午後から機体の回収を始め、真っ先にフライトレコーダーを運び出したようだ。
 現場は、安部集落から800メートル。ギミ崎の先端で、干潮時には岩伝いに歩いていけるところである。17日午後、安慶田副知事が名護署長の案内で現場を見に来ていた。「午前中にも来ようと思っていたが、干潮でないと機体が見られないという話だったので」「事項当時、イザリ漁をしていた住民もいたようだね」などと話していた。イザリ漁というのは、潮が引いた時にできる潮だまりでタコや魚、貝などをとる漁をいうようで、12月から3月頃がシーズン。
 墜落現場は、集落の至近距離であり、住民が漁も行う海辺である。「若いパイロットは、沖縄県民の安全のために、住宅地を避け、浅瀬を選んだ」とローレンス4軍調整官は、パイロットをヒーローであるといったが、とんでもない弁解で、許されない。まさに「大惨事一歩手前」だった。

 

 12月14日、在日米軍司令官ジェリーPマルチネス中将は次のコメントを発表した。
 「今の時点で米軍が得ている情報に基づくと、今回の事故はMV22自体全体もしくは今回の機体のシステム、機械的もしくはそれに関係する要因で発生したものではありません。昨夜、事故発生時、MV22オスプレイ1機が沖縄沿岸にて空中給油訓練を行っていました。報告によると、MV22のプロペラのうち1枚が給油装置のホースに接触して期待を損傷し不安定になりました。沖縄県民と乗員の安全を考慮し、パイロットは県民の住宅やご家族の上空を飛行することを回避し沿岸の浅瀬に着陸することを決断しました。乗員5名は日本の海上保安庁と第33救難飛行隊からの緊急要因に救助されました」とし、「米軍の最優先課題は常に安全性です。この機体のパイロットは沖縄の地域の安全を考慮しキャンプ・シュワブ沖に着陸することを決断しました。軍の運用においては常にいくつかのリスクが内在し、我々はそのようなリスクを減らすよう慎重に計画を立てています。今回の事故においては空中空輸訓練を洋上に設定された訓練空域で行っていたことがあげられます」

 防衛省は米軍の発表をうのみにして「MV22オスプレイの不時着水及び防衛省自衛隊の対応について(第3報)」という発表を行っている。
 「1.事案概要
 平成28年12月13日(火)午後9時30分頃、沖縄県名護市東海岸から約1㎞沖合で米軍機MV-22オスプレイ1機が不時着水。事故原因は不明。搭乗員5名は無事(うち2人は怪我)。
 上記情報については、引き続き確認中。
2.防衛省自衛隊の対応
(1)活動部隊 空自那覇救難隊(那覇
(2)活動規模 航空機2機
(3)主な対応状況
【12月13日】
22時28分 防衛大臣指示
 1 情報収集を徹底し、状況の把握に努めること。
 2 人命救助に万全を期すこと
 3 地元への説明など、対応を確実にすること。
23時05分 那覇救難隊のU-125×1機が捜索活動のため基地を離陸。
23時17分 那覇救難隊のUH-60×1機が捜索活動のため基地を離陸。
※要救助者は米軍機により収容
【12月14日】
0時頃~1時頃 沖縄防衛局長がコンウェイ在沖米海兵隊政務外交部長に面談し、事故に係る原因究明・情報提供、安全が確認されるまでの飛行停止について申入れ
2時20分~50分 防衛大臣マルチネス在日米軍司令官へ電話し、事故に係る原因究明・情報提供、安全が確認されるまでの飛行停止について申入れ
10時20分~40分 沖縄防衛局長がニコルソン在日米軍沖縄地域調整官と面談し、事故の状況や飛行停止の状況等について確認(※回答は下記と同様)。
10時42分~11時23分 防衛大臣マルチネス在日米軍司令官と電話会談。米側から、
・事故機が空中給油訓練実施時にホースが切れ、不具合を生じた
・飛行困難となりキャンプ・シュワブを目的地にして飛行するなかで、地元への影響を極小化するため海岸沿いを飛行していたが、途中で辿り着けず着水した
・機体はコントロールできる状態だった
・事故の原因が機体である可能性は極めて低い
・安全が確認されるまで一時飛行が停止される
ことについて確認した。」

 

 翁長知事をはじめ多くの人がまず指摘したのは、「大破した状況から見て墜落」であり、不時着というのは、事故を小さく見せかける意図があるのではないかということだった。また、聞かれたのは、オスプレイのプロペラの向きである。速度を出して飛行しているときは、プロペラを前向きにするが、着陸時は上に向きを変える。墜落したオスプレイのプロペラは前を向いていた、つまり着陸態勢の「ヘリモード」に変えることもできないまま墜落したという指摘だ。それゆえ機体をコントロールして不時着したということはないというのである。
 米軍発表にはこのような重大な疑問がぶつけられている。こういう態度を米軍が取っているため、米軍だけの事故調査で真実が明らかにされるか、不信も募る。ところが米軍は海上保安庁の捜査協力要請を拒絶している。日本政府は、このことには何も発言していないようだ。どこまでもアメリカいいなりの日本政府だ。日本の警察や海上保安庁も捜査ができるようにすべきだろうし、航空機などの事故を専門に扱っている事故調に、解明にあたってもらうべきではないか。地位協定を盾にそうしたことを拒絶すれば、ますます米軍に不信の目が向くだけである。

 もう一つ、米軍と日本政府が矮小化しようとしているのが、同じ13日深夜に起きたオスプレイ胴体着陸だ。
 ニュースは14日午後に流れた。出所はニコルソン4軍調整官の記者会見だった。この点では、完全に隠そうとしたわけではない。しかし、墜落とは無関係だと強調しているのである。稲田防衛相も同日記者会見で「着陸時に足が壊れたと説明を受けている」と述べている。しかし、本当に無関係だろうか。
 16日付の沖縄タイムスは、「2機で給油訓練を実施し、その後、墜落した機の捜索に当たっていた『僚機』のオスプレイが、燃料が少なくなったため、普天間に帰還。その際、着陸装置に不具合が生じ、胴体着陸していた」と書いた。


 防衛省はこの件について次のように説明している(16日)。
 「本件に関しては、これまで米側からは、
・ 事案が発生したのは、13日午後11時45分頃であること
・ 同機は、普天間基地に着陸時、着陸装置に故障を生じたものの、所定の手順に従い、通常の制御可能な状態で緩やかな着陸が行われたこと
・ 当該機は着陸装置以外の全ての機能は正常であったこと
・ 負傷者はなかったこと
・ 同機は、当時通常訓練を行っており、不時着水したオスプレイからの救難連絡を受け、着水現場に向かい、空中監視を行っていたこと
等の情報を得ている」


 この傍線部分の記述からすると、墜落機と名護の30キロ沖で訓練をしていた機とは読めない。いつ、どこで「救難連絡」を受け、何時何分に現場に着いたのか。墜落機と一緒に訓練を行っていた機はどうしたのか。疑問がわく。墜落機といっしょに訓練を行っていた機もトラブルを起こしたことを曖昧にしたかったのではないだろうか。外務省沖縄大使と沖縄防衛局長が14日午前に行った翁長知事への説明でも、胴体着陸を行ったオスプレイは、墜落した機といっしょに訓練を行っていた機ではないと述べているから、そういう意図があるとみていいだろう。

 米具、防衛省は、情報操作をやめて、県民、国民にきちんとした説明をすべきである。