機動隊員の差別発言と沖縄県議会(3)

 県議会各会派は、機動隊員の差別発言に対する抗議決議を全会一致で可決しようと調整が行われていたが、協議が整わなかった。そのため、与党3会派(社民・社大・結、共産、おきなわ)と維新、公明が共同で提出した「県外機動隊員による沖縄県民侮辱発言に関する抗議決議案(意見書案)」と自民会派提出の「高江現場における不穏当発言に抗議し警備体制の改善を求める意見書案」が県議会本会議に議員提案されることになり、10月26日に開かれた県議会運営委員会で10月28日に臨時会を開くことが決まった。

 与党および中立会派の「県外機動隊員による沖縄県民侮辱発言に関する抗議決議(案)」は以下のとおりである。

 東村高江では、県外から派遣された500名余の機動隊員による警備のもと、米軍のヘリパッド建設が進められている。
 去る10月18日、高江周辺の米軍北部訓練場のヘリパッド建設現場において、県外から派遣された機動隊員が市民に対し「土人が」と発言し、さらに、別の隊員が、「黙れ、こら、シナ人」と発言しでいたことが発覚し、県民に大きな衝撃を与えた。
 沖縄県警は19日、発言を事実と認め「差別用語としてとられかねない不適切な言葉だ」との見解を示し謝罪している。
 「土人」という言葉は、「未開・非文明」といった意味の侮蔑的な差別用語であり、「シナ」とは戦前の中国に対する侵略に結びついて使われて来た蔑称である。この発言は、沖縄県民の誇りと尊厳を踏みにじり、県民の心に癒しがたい深い傷を与えた。沖縄戦では本土防衛の捨て石にされ、戦後27年間は本土から切り離され米軍占領下におかれ、そして今なお全国の74%の基地が集中しているもとで沖縄県民は基地あるがゆえの事件事故に苦しめられ続けてきた。
 今回の発言は、沖縄県民の苦難の歴史を否定し、平和な沖縄を願って歩んできた県民の思いを一瞬のうちに打ち砕いたものと言わざるを得ない。
 法を守り、市民及び県民の人権を守る先頭に立つべき警察官である機動隊員らによる抗議参加者に対する一連の発言に対し、県内外から多数の非難が出ており、不信感が広がっている事実を警察関係者は真撃に受けとめるべきである。
 よって、本県議会は、市民及び県民の生命及び尊厳を守る立場から、沖縄に派遣されている機動隊員らによる、沖縄県民に対する侮辱発言に厳重に抗議するとともに、このようなことが繰り返されないように強く要求する。
 上記のとおり決議する。
  平成28年10月28'日
                        沖縄県議会
沖縄県公安委員長
沖縄県警察本部長宛て


 抗議決議案の作成段階で機動隊の撤退を盛り込む主張もあったが、全会派一致を目指すため、盛り込まなかったという。県議会が機動隊の撤退を求めなければ現地のたたかいにプラスにならないという意見はある。しかし、ある県議は、「『法を守り、市民及び県民の人権を守る先頭に立つべき警察官である機動隊員らによる抗議参加者に対する一連の発言に対し、県内外から多数の非難が出ており、不信感が広がっている事実を警察関係者は真撃に受けとめるべきである。』」という一文に込められた意味合いをとらえてほしい」とおっしゃる。9月県議会での代表質問、一般質問では県警と自民会派がタッグを組んだかのように、自民議員が「表現の自由は認められるべきだが何をやってもいいのか」と質問し、県警が待ってましたとばかりに、現地では道路交通法違反など違法行為が行われており、警察は安全確保のため職務を遂行しているとの答弁を繰り返し、議会の場を、抗議活動=悪という印象を与える舞台のようにしてしまった感がある(もちろん与党会派の県議さんたちはそれを打ち消す論戦を繰り広げた)。それを前提にすれば、機動隊員の発言で攻守入れ替わるチャンスであり、自民党に同調を迫り、機動隊が撤退しなければならないように包囲しようという戦略を立てたのだろう。「県民の自尊心を傷つけることは許さない」という旗のもとに集まろうという呼びかけであり、県内政党であればどこもこの立場に立つのではないか、そういう読みである。実際、公明、維新はこの案に賛成した。