高江オスプレイパッド建設差し止め訴訟(2)

 北部訓練場は、国頭村及び東村にまたがる沖縄県最大の演習場(施設面積:78,242千m2)であり、海兵隊の管理の下に、海兵隊の各部隊のほか陸軍、海軍、空軍の各部隊が対ゲリラ訓練基地として使用し、米軍唯一のジャングル訓練場となっている。
 1957年(昭和32年)10月25日、北部海兵隊訓練場として米軍が使用開始し、1972年(昭和47年)5月15日、沖縄の復帰に伴い北部訓練場として施設・区域が提供された。
 オスプレイパッド建設差し止め訴訟の訴状は、在沖米軍基地の形成史を詳述してはいるが、北部訓練場のことが出てくるのは、1995年のSACO合意以降であるため、断片的にはなるが、ベトナム戦争時における北部訓練場がどのような問題を抱えていたかを少し見ておこう。
 1970年代のことであるが、米軍が北部のダムで水面に舟艇を浮かべ、渡河訓練、波乗り訓練のほか、ヘリによる水難救助、水陸両用車の利用訓練など戦闘訓練を行っていた。
 1974年4月7日付琉球新報が「水源地と米軍の訓練」と題する社説を掲載している。引用しよう。
 「県民の“命の泉”である北部のダム水面を米軍が戦闘訓練に使用する―の報道には、全くア然とさせられ、ついで怒りがこみあげてくるのを禁じえなかった。国頭村の米海兵隊安波訓練場内にある福地ダムをはじめ三つのダムで浮橋の建設や利用など各種訓練がなされることを暴露したのは五日、参院予算委第二分科会で質問に立った共産党の星野力氏。同氏は『このダム用水の大部分が住民の飲料水、生活用水として使われることから、水質保全の面からも米軍の訓練をやめさすべきだ』と迫ったのに対し、外務省側は『使用条件も厳しくしてある。演習所のダム用水は米軍自身も使うので中止させる考えはない』とにべもない答弁だ」
 「在沖海兵隊は平時・有事を問わず沖縄をはじめフィリピン、グアム、韓国、日本本土などで演習を行うほか一個大隊は常時、米第7艦隊の輸送船に乗り組み、洋上訓練を兼ね緊急事態に備えて遊よく中だ。沖縄を起点に極東の広大な範囲で上陸演習などをするだけに、平時でも伝染病を持ち込む恐れは十分考えられる」

 東村議の伊佐真次さんは、折に触れて、米軍が北部の水がめを汚染するのではないかと不安を口にされる。ダムでの演習をやめさせる大闘争があって、現在、渡河作戦のようなことは行われていないが、やんばるの森をこわされるだけでなく、水も汚染され、県民の命の水をも奪われてしまう、そういう危惧を強くお持ちなのだろう。