安倍政権は辺野古新基地も高江も展望がないまま強行突破をはかろうとしている(1)

 参院選で新基地建設反対の民意が明確に示されたにも関わらず、安倍政権が繰り出してきたのは、キャンプ・シュワブの陸上部分での工事再開、東村高江の米軍ヘリパッド建設工事の再開、そして、「違法確認訴訟」を起こすというものだった。国と沖縄県辺野古基地問題に関連して協議する作業部会でこの3点を示してきたという。
 10万6000票という大差で現職大臣が落選したのにも関わらず。「これだけ大差がつけられて、安倍政権は辺野古オスプレイもあきらめただろうと思っていた。なに、これ」。そう思った県民は多いに違いない。
 このなかでも特に最も厳しい局面を迎えているのが高江。参院選の開票作業がまだ完全に終わらない11日未明から防衛局は工事用資材の搬入を開始した。
 この暴挙にすぐさま、沖縄県は反発した。翁長雄志知事は、「不意打ちで、到底容認できない」と厳しく批判。安慶田光男副知事も、防衛局の中嶋浩一郎局長に「こういうやり方をとるのが国の態度か」と猛抗議した。
 しかし、県の反対や県民の抗議を意に介せず、全国各地から機動隊をかき集め、強制排除で住民が手も足も出ないようにし、工事車両を基地内にいれて工事を強行するつもりである。15日には数県の警察車両が目撃されたが、伝えられるところでは機動隊約500人を投入するという。太平洋戦争では民間船を守るために護衛艦をつける「護送船団方式」をとったが、オスプレイパッド建設のため機動隊に守らせて抵抗する住民を強制排除しながら工事車両を基地内に入れるのである。辺野古では機動隊200人を動員したが、数百人が集まると機動隊も排除できなかった。そこから500人に引き上げたのだろう。
 だいたい政権が強硬手段に打って出るときは、追い詰められた時である。辺野古新基地建設がほぼ絶望的になったのは、疑いのないところだろう。

 元裁判の仲宗根勇さんは、新聞紙上で「県は係争委判断を不服として提訴するようなことをしてはいけない」と忠告されたが、まさにその通りだ。

 安倍政権は、新基地建設がなぜ辺野古でなければならないか、代執行裁判の中でも係争委に出した文書でも明確に示すことはできなかった。だから、国と県の協議による合意形成をと裁判所や係争委から求められて、県を説得できる論拠を示せない。それで、しきりに「沖縄県は、係争委判断を不服として裁判に訴えるべきだ」としきりに発言していた。

 国は裁判に訴えたが、結局、工事は1年以上止まり、再開できる見通しはない。それで「陸上部の兵舎の工事だから、和解合意の範疇ではない」などと言い出した。こんなことをすればするほど、新基地は無理だということを証明するようなものだ。

 では、高江ではどうだろうか。
 東村の村長は、ヘリパッド容認派に入るひとだが、「村道は工事には使わせない、体を張ってでも阻止する」と村議会で答弁している。この村長の発言を無視して工事をおこなえば、防衛大臣の首が飛ぶ、それくらい村長の発言は重い。工事が行われようとしている「N1」は県道が通っているが、「H」と「G」には、村道を通らなければ工事車両はいけない。
 さらに村議会は、現在、米軍が使っているヘリパッド2カ所について、使用禁止を求めている。オスプレイの騒音のひどさに耐えられないからだ。
 東村の子どもたちは、琉球大学の渡嘉敷健准教授が今年4月におこなったアンケート調査に「いつも飛んでいるときに落ちてきそうで怖い」「夜10時頃よく空を飛んでいるのでうるさい」と答えている。

 オスプレイの騒音で夜、眠れず体調を崩して、翌朝、学校に行けなかった子どもがでているのである。

 子どもの貧困問題は、経済的な問題だけではない。うるさくて授業に集中できない、怖くて校庭で遊べない。それどころか、静かに家で寝ることもできない。まさに命の危険にさらされているというべきだろう。緊急避難した家庭もあると耳にした。これらも第1級の子どもの貧困問題である。
 沖縄県も緊急に実態調査を行い、村議会の決議を尊重し、日米政府に先行提供しているヘリパッドの使用停止をもとべるべきであろう。