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米軍属事件の裁判移管について(1)

  沖縄県うるま市の住んでいた二十歳の女性が米軍属(元海兵隊員)の男性容疑者に殺害された事件で、被告人の弁護人は4日、那覇地裁に裁判管轄を沖縄でなく、東京地裁に移すよう請求した。この裁判は、裁判員裁判で行われることになっており、沖縄県で選ばれる裁判員では、裁判の公平性が維持されない恐れがあるとの言い分である。本日、弁護人が地裁に書類を提出、受理されたという。裁判の移管を認めるかどうかは、最高裁が判断するようだ。

 

 「管轄移転請求書」の「請求の原因」には次のように書かれている。
 本件自白の内容、物証の存在などがマスコミで報道され、沖縄県民すべてが事件について予断を持っているだけでなく、県下の女性は「被害者は私だったかも」との被害意識を持ち、男女と(ママ)問わず被害者の両親と同じく悼み(ママ)を共有して、被害者家族の親族との意識を持っているので、那覇地方裁判所管内の裁判員候補者全てに裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「裁判員法」という)第 17条 1号及び2号及び同法第18条の不公平な裁判をするおそれ等の事由と刑事訴訟法第256条 6項が保障する予断排除の原則に悖る事由があり裁判員として欠格である。
 その上沖縄県内の全行政組織、各議会、各政党及び団体が本件に対し抗議声明を発表しただけでなく、ある団体はうるま警察署前道路で拡声器を用いて同署留置場の被告人に向け「黙秘するな、事実を話せ」など叫ぶ抗議行動に出た。沖縄県民の民心は被告人への「憎悪」で凝り固まっている。更に上記各団体が本件を理由として地位協定改定、基地撤去の政治活動を行い、沖縄県民は反日、反米を標榜していると言っても過言ではない。これらの政治活動は本件の審理に大きな影響を与えずにはおかない。
 このような状況下にあるのに敢えて本件を那覇地方裁判所で審理を行うと、その審理は日本国憲法が被告人に与えている公平な裁判所の裁判を受ける権利を奪うことになる。よって管轄移転を請求する。

 

 報道によって沖縄県民は全員事件について予断をもっているから、裁判員として不適格であるという。しかし、日本中のみならず、世界中の人々がとても残忍な事件が起きたと思っており、沖縄で選ばれた裁判員も東京で選ばれた裁判員も検察がきちんと立証すれば、同じ結論を出すことだろう。
むしろ、問題は、弁護人の被告人に対する接し方ではないのか。弁護人だから被告人に有利な判決を導くために最善の努力をすることは当然だろうが、人間としての再生の機会を摘み取ってはならないのではないか。被告人は、弁護士との接見以降、黙秘に転じたというから、だれもが裁判の中では真実を明らかにしてほしいと思っているだろう。そうでなければ、彼女の無念も晴れないだろうし、本当の再発防止策も打ち立てられない。そして一番肝心な真実と向き合い、謝罪することで、人間として更生するきっかけを掴むように励ますことが大事なのではないか。
 被告人弁護人は、米兵犯罪事件で米兵側の弁護人をされた経験をお持ちのようである。そうであるならなおさら、「沖縄県民は、反日、反米を標榜しているにすぎない」と一方的に攻撃する前に、米兵や米軍属にたいし、沖縄県民が日常的に米軍基地による騒音被害や経済的な損失を受け、そのうえ、戦後71年、米兵・軍属による凶悪犯罪に尊厳を奪われてきたことを少しでも受け止めるように話すべきではないのかと思う。彼にも家族があるのだから、更生して社会に復帰することが許されるのであれば、裁判が始まる前の今こそ、大事な時だと思う。沖縄を離れれば多少緩い判決が出ると期待しているのだとすれば、とんでもないことだ。