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法廷で裁かれる沖縄戦(1)

 日本軍の国家賠償責任を問う沖縄戦訴訟は、先月(2016年3月)、原告の請求を棄却するとした地裁判決を不服として、福岡高裁那覇支部に原告が控訴した。1審での法廷闘争を記録として残すために出版されたのが『法廷で裁かれる沖縄戦 訴訟編』(沖縄戦被害・国家賠償訴訟弁護団長・瑞慶山茂編著・高文研)である。
 沖縄戦では、地上戦を中心に、海・空からの攻撃により約15万人の死亡者を出し、地形は爆撃によって一変し、社会的生存基盤は破壊しつくされた。さらに日本軍による住民虐殺や「集団自決」など、残虐非道な行為も行われた。今なお、少なくない戦争被害者が、沖縄戦の戦場体験に起因する心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含む外傷性精神障害に苦しんでいる。こうした沖縄戦負の遺産は、世代間の連鎖をも引き起こしている。裁判では、指摘されていないようだが、「沖縄の子どもの貧困」もその一つであろう。
 このような多岐にわたる沖縄戦被害について、日本政府は謝罪も賠償もせずに放置してきた。

 本書が提起した論点の一つに、日本政府は沖縄戦の被害調査をしてこなかった問題がある。「被告国は、沖縄県以外の46都道府県については戦後間もない1947年には調査をしている。被告国は前述してきたとおり自らアジア太平洋戦争を開始し、沖縄戦を計画し遂行した結果、沖縄で人的物的精神的被害が発生したことは明白であるにもかかわらず、沖縄戦被害についてはまったく調査を行っていない」と指摘する。そして、1953年に琉球政府援護課がまとめた数は、「沖縄県民の戦没者数は、実際に戦没した個人を特定しての数字ではなく、一種の操作の末にはじきだされ」ており、「被害実態を正しく反映していない」としている。