普天間基地隣接の市民駐車場での人権侵害(5)

 宜野湾市の説明のうち、駐車場の閉鎖から再開までの経過を詳しく見ておきたい。
 人権擁護委員会報告書は、次のようにまとめている。
 2012年 (平成24年)11月 2日 午後2時、米軍から宜野湾市に対し、「警備上の理由」により本件駐車場を閉鎖するとの連絡があり、翌 3日午前 8時、本件駐車場は閉鎖された。閉鎖当初、米軍から宜野湾市に対し、「警備上の理由」という以外に閉鎖の具体的な理由について説明はなかった。しかし、本件駐車場の敷地内の利用において、普天間基地の管理、運用、警備に支障が生じる具体的な事態が発生した事実は認められない。ただし、同年9月 26日以降、普天間基地野嵩ゲート前では、米軍に対する抗議行動が連日行われるようになっており、申立人らを含む抗議行動の参加者は、自らの乗ってきた自動車を本件駐車場に停めたり、本件駐車場付設のトイレを利用するなどの行為をしていた。
 宜野湾市に対しては、本件駐車場の閉鎖以降、商工会からの早期再開要請があったほか、駐車場の利用再開を求める要望が市民から寄せられるようになった。 宜野湾市は、市民からの早期再開の要望を受け、同年11月 27日、米軍に対し、本件駐車場と同様に閉鎖されていた市民広場(ゲート 4区域。同年 9月26日閉鎖。)の利用規則(案)を提示し、市民広場及び本件駐車場の利用規則の策定について市民との意見交換も行いながら取り組んでいることを説明し、早期開放を要請した。なお、これに先立ち同月6日に開催された、宜野湾市と市内各団体との本件駐車場の利用に関する意見交換会において、宜野湾市から「現在のところ米軍から閉鎖した理由について明確な提示はない」ことを説明したところ、「米軍側が抗議集会に対して危険性の回避という判断で閉鎖している状況と思われる」等の意見があったため、上記利用規則(案)には、禁止事項として、「示威またはけん騒にわたる行為」や「許可なく拡声器、宣伝車等を所持もしくは持ち込もうとする行為」、「米軍ヘの抗議行動としての駐車場利用、凧揚げ、風船での抗議行為」が明記されていた。その後、米軍普天間基地司令官から宜野湾市長に対し、同年12月 6日付け文書で、本件駐車場の共同使用の提案があった。同文書では、共同使用を行うためには、「在日米軍基地の運用に害を及ぼしたり妨害するものであってはなりません」、「もし宜野湾市が当該地区のアクセスを要求するならば、適切な利用を宜野湾市による監視の方法の詳細を送付してください」とされていた。前記のとおり、米軍から閉鎖の連絡があった前後に、基地の運用を妨げる具体的な事件等はなく、ただ、本件駐車場の近隣で米軍に対する抗議行動を行う者が本件駐車場を利用するようになっていたこと、米軍は従前の宜野湾市の利用にあたって特段の利用方法に関する条件等を付していなかったところ、この時期になって、上記の共同使用の条件を挙げたことなどから、宜野湾市は、米軍に対する抗議行動を行う者が本件駐車場を利用することが原因となって米軍が本件駐車場を閉鎖したものであると判断した。これを受けて、同年12月、宜野湾市は別紙2のとおり「普天間市民駐車場管理要綱」(本件管理要綱)を策定した。本件管理要綱には、「駐車場使用にあたっての禁止事項」として、「駐車場使用目的から外れた行為(例、抗議行動のための拡声器・宣伝車の持込及び火気・プラカード の持ち込み等 ) をすること」が定められている。また、本件駐車場入口に「当駐車場ご利用のみなさまへ 当駐車場は米軍からの提供施設です。米軍への抗議行動でのご利用はご遠慮ください。」と記載された本件看板を設置することも本件管理要綱に明記されている。
 同年12月 20日、宜野湾市副市長と普天間基地司令官との間で本件駐車場の利用についての協議が行われた。この協議において、宜野湾市側は、本件管理要綱を提示し、再度早期再開を要請した。なお、同年12月 27日には、周辺住民及び事業者による「普天間市民駐車場の早急な運営再開」を求める署名(2939名分)が宜野湾市に提出されている。