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沖縄戦訴訟控訴によせて(5)

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控訴状提出に福岡高裁那覇支部に向かう原告(控訴人)ら 20160329

 

 瑞慶山茂原告弁護団長は、控訴にあたって、次のように話す。
 「一審の結論は、まったく不当です。しかし79人全員の被害事実は認定している」とまず、地裁判決を評された。その一つの例として、原告団長の野里さんのケースを挙げられた。「野里さんのお母さんは、戸籍では死亡となっていないが、平和の礎の刻銘などから認められている。しかしPTSDについては全く触れられていない。事実認定をさせたことを土台に、控訴審では攻めていく」。
 瑞慶山弁護団長は、地裁判決が被害事実を認定したことを出発点とするとしながらも、その事実認定は、極めて不十分なものと見ておられるのだろう。

 別の文脈では、沖縄戦の場合、本土の空襲被害とまったく違っていて、とても悲惨な地上戦による被害であり、そこをしっかりつかまなければならないと繰り返し強調されている。もちろんPTSDという精神的被害にも地裁判決は触れていない。「ラフな判断ができるように、手を打ったのではないか」という推測も述べられた。

 控訴審での立証活動は、「法の下での平等の原則」に力点を置くという。軍人・軍属には、恩給から補償まで約60兆円が支出されてきた。それにたいして民間人は、被害の回復を図られず放置されてきた。「法のもとの平等の原則に反する、命は平等だ、というところを攻めて、道を切り開きたい」と。
 沖縄戦補償で「壕を軍に明け渡した」ことは戦争に協力としたものとして、補償が受けられた人もあるそうだ。むろん、自ら壕を進んで出た人などいないだろう。艦砲がひどくて壕に避難し、壕を一歩出れば、死に直結することはだれもが思っていたのだから。「戦争に協力する意思はなかったから靖国に入ることはできない」と拒否した遺族には、国はなんの補償も出さなかった。きわめて恣意的なやり方で差別が行われてきた。この問題についても追及されるようだ。むろん、PTSDの診断もさらに進め、被害実態をさらに浮き彫りにする考えだ。

 瑞慶山弁護団長に地裁判決が「国家無答責」を根拠としていることについて、中国人強制連行裁判では、途中から、その議論は出てこなくなったように思っていましたが、とお聞きした。瑞慶山さんは、「そうですが、ただ、そのあとの重慶大爆撃訴訟で、出てきたんですよ」と説明された。