熊谷組与瀬作業所の孫式恒さんの証言(13)

 強制連行は35企業が行い、全国135事業所に上る。その多くのところで非人間的な生活環境と極端に少ない食事、重労働を強いられ、たくさんの人が命を落とした。命を奪われなくとも病気やけがに苦しみ、まともな診察・治療をうけることはなかった――というのが日本の強制連行・強制労働の実態である。

孫式恒さんは、「過重な労働による非人道的な待遇は、まるで奴隷制社会の奴隷のようだ」「仕事を終えて寮に帰る時、突然、仲間が過度の疲労でふらふらして橋の上から河に落ちた」と回想録で語っているところからすると、与瀬事業所も他の134の事業所と変わらなかったようだ。孫式恒さん自身は、病気やけがになることはなかったのだろうか。熊谷組与瀬作業所の「傷害統計」では、公傷が77人。「疾病統計表」では355人が病気になっている。与瀬作業所の中国人は287人(青島での乗船者は292人)であるから、それぞれ26・8%、123・7%で、ある。病気をしなかった人は皆無と言っていいのかもしれない。