中国の中央档案館が戦犯供述書をネット上で公開

 中国の中央檔案館(中央公文書館)が「日本人戦犯の中国侵略犯罪の供述書」をインターネット上で公開した(http://61.135.203.68/rbzf/index.htm)。きょう(2014年7月6日までに鈴木启久、藤田茂、上坂勝、佐佐真之助の4名分である。1954年に戦犯として起訴された45名が書いた自筆の供述書とその中国語訳が2005年6月に『日本侵華戦犯筆供』として出版されたが、その第1巻に出ているのがこの4名である。今回の公開では英文も付いている。まだ公開は始められたばかりで、1日に戦犯1人分のペースでネット上へのアップを続けていくようだ。

公開にあたって中央檔案館の李明華・副館長は記者会見で次のように説明している。(以下、人民網)

 

「中央公文書館が収蔵する日本人戦犯の捜査・審査・処理の関連資料は主に、紙面・写真・実物・録音・映像の5種類を含む。資料は内容別に、『日本人戦犯の事件捜査記録』『日本人戦犯の犯罪の証拠や物品』『日本人戦犯の帰国後の活動記録』に分けられる。

まず、『日本人戦犯の事件捜査記録』。日本人戦犯の記録は一戦犯一案件ごとにまとめられ、日本人戦犯1109人と案件3000件余りを含む。記録には、捜査関連の法的文書と犯罪認定の資料や証拠が含まれる。それぞれの案件の記録は、戦犯の追及のための受理書や捜査についての総括意見書、戦犯による口述・記述とその中国語訳、犯罪の要点を記した記録、検挙資料、告訴資料、犯罪調査表などからなる。起訴を受けた日本人戦犯45人の捜査案件は300件余りで、戦犯自身による口述や記述、そのほかの検挙材料や告訴資料、検察機関や捜査機関の法的文書などが含まれる。

次に、『日本人戦犯の犯罪の証拠や物品』。侵略日本軍の犯罪に対する被害者の告発書、証拠、調書などを含む。肩章や襟章などの日本人戦犯の記章、日本軍の細菌製造用のネズミ飼育カゴや細菌弾の破片、法庭尋問の録音、犯罪を裏付ける写真とそのネガ、日本人戦犯の管理・審判・釈放を記録した録音と映画「人道的寛待」(人道と寛恕)、釈放された日本人戦犯の送った錦の旗などがある。

最後に、『日本人戦犯の帰国後の活動記録』。資料の中心は写真で、「中国帰還者連絡会」(略称・中帰連)のメンバーの日本帰国後の生活とその後の中国訪問交流活動の状況を示している。中帰連は、中国政府が釈放した日本人戦犯が帰国後の1957年9月に設立した民間組織。第2次大戦中に中国侵略に参加し、多数の犯罪を行った人が、人道主義に立つ反省の上で、戦争に反対し平和と中日友好に貢献することを目的としている」

 

インターネット上での公開が、45名の供述書にとどまるのか、档案館が持っている資料全体に広げる方向なのか、記事からは分からない。

中国での日本軍の戦争犯罪は多岐にわたるが、こと強制連行に限っていうと、起訴された45人の証言は、強制連行にあまり触れられていない印象があった。4万人もの中国人を日本に連行したのだから、日本の将校と兵士の多くはなんらかのかかわりがあったはずなのである。供述書に毒ガスや従軍慰安婦、刺突訓練などの証言は頻出するのに強制連行についてはあまり語られていないのは、個個人のかかわりが断片であることからくるのかもしれない。戦犯1109人の記録が公開されれば、強制連行にかかわる証言が得られると期待される。また、「日本人戦犯の事件捜査記録」には、肉親を奪われた中国人被害者の訴えも記録されているようで、この公開も強制連行の実態を解明する材料になるのではないだろうか。