宮浦坑で働かされた劉千さんの日本での法廷証言(4)

[企業や裁判所に訴えたいこと]

 

 ところで、あなたが強制連行されて強制労働をさせられているときに、先ほど来証言されましたように、日本人の監督のサカヤマさんからおので傷つけられるという目に遭ったんですけれども、今、もしあなたがサカヤマさんに会うことができたら、何か言いたいことはありますか。

 -もし会うことができたなら、私の足を返してほしいと言いたいと思います。当然、日本人の人も血が流れていると、同じ肉からできた体だと、私にしても同じだと、そういうことで、絶対その償いを彼にしてもらいたいと思います。

 サカヤマさんとかあなたの治療に当たった医者を雇っていた企業ですね、被告三井鉱山は、現在でもあなた方を強制労働させたことはないと、こういうふうな主張をしているんですけれども、これに対して何か言いたいことがありますか。

 -とにかく今は法治社会です。私たち強制労働者は異国の地に来て、死ぬ人は死ぬし、身障者になる人は身障者になってしまいました。で、結局、働いた対価というものは一銭も払われておりません。そういうことについては、絶対はっきりとしてほしいと思います。

 同じく、この裁判で被告になっている日本の政府のほうも、いまだにあなた方を強制連行したり強制労働させたという事実を正面から認めておらずに責任もないと、こういう態度を執ってますけれども、この場で何か言っておきたいことがありますか。

 -どんなにそれを否認しようとも、事実があります。証言する人も一杯おります。だから、ここはちゃんと、はっきり謝罪するところは謝罪してほしいと思います。  最後に、この裁判を担当している日本の裁判所の裁判官の皆さん方に、特に訴えておきたいということがあったら述べてください。

 -あります。まず、裁判官の皆様、そして弁護士の皆様、それから傍聴に来ておられる皆様、私たち強制労働者にこの裁判について非常に高い関心をお持ちいただきましたことに対して、私は強制連行されてきた人を代表して、皆様に感謝申し上げたいと思います。特に私たちと一緒に宮浦坑に来た強制労働の人たちを代表して、どうか公正な判断を下していただいて、私たちのこの苦しみをいやしていただくようにお願いしたいと思います。  

 

[質問者 原告ら代理人(弁護士 岩城邦治)]

 

 (おのでたたかれて大けがをしたときのことを聞きますが)、坑内で働いていたから、当然あなたは全身炭で真っ黒になっていましたね。

 -そうです。その上暑くて水気はあるし、真っ黒でした。  翌朝、8時間たって朝の8時に医者が来てくれて手術を受けたということでしたが、そのときも真っ黒だったんですね。

 -はい、そうです。そのままです。だれもかまってくれませんでした。

 三井炭鉱には三井病院というのがあって、この裁判所の別の裁判では、三井鉱山はこの三井病院について、日本でも有数の非常に優れた大病院であると、戦前からそういう病院をちゃんと作っていたというふうに主張しているんですけれども、その大病院、三井病院へ連れて行ってもらったことがありましたか。

 -そういう病院のことは話も聞いたことはありません