「北海道学」と中国人強制連行
北海道大学の小田博志さんのHPに「北海道の『民衆史掘りおこし運動』を掘りおこす」という文献表が掲載されています。http://www13.ocn.ne.jp/~hoda/minsyushi.html
北海道における「民衆史掘りおこし運動」について小田さんは、「北見の高校教諭・小池喜孝氏が中心となって始まり、のちに全道規模に広がりをみせた下からの歴史発掘運動です。この民衆史運動の大きな目的は、役所や主流アカデミズムが作成する『公式の歴史』では見落とされてしまいがちの『民衆』―そこには政治的抵抗者、囚人、タコ部屋労働者、女性、ウィルタ・アイヌなどの先住民族、中国人・朝鮮人強制労働犠牲者なども含まれます―がたどった歴史を目に見える形に記録し、そうした民衆の犠牲を追悼し、さらには彼ら/彼女らの功績を正当に評価・顕彰するということにあります」と解説しています。
この文献表は、2007年2月2日に公開されています。北海道各地の歴史の掘り起こしを通じて、民衆に歴史の光をあてた文献の数々を紹介しています。
[北見]小池喜孝 <1973『鎖塚―自由民権運動と囚人労働の記録』現代史資料センター出版
会><1982『北海道の夜明け―常紋トンネルを掘る』国土社>
オホーツク民衆史講座(編) <1978(小池喜孝 監修)『民衆史運動―その歴史
と理論』現代史出版会><1982『名もなき民衆の証言―オホーツク民衆史講座100
講記念』
[留辺蘂]常紋トンネル工事殉難者追悼碑建設期成会(編) <1983『トンネルの壁のな
かから―常紋トンネル工事殉難者追悼碑完成記念誌』>
[空知]空知民衆史講座編 <1994『朱鞠内・韓国・民衆 和解のかけ橋―続 笹の墓標』>
[札幌]札幌郷土を掘る会(編) <1989『海峡の波高く―札幌の朝鮮人強制連行と労働』
(札幌民衆史シリーズ3)
[室蘭]上野志郎 <1994『室蘭における中国人強制連行/強制労働の記録』>
などす。
2007年以降の更新分では、
「強制連行・強制労働を考える北海道フォーラム」 <2008『2007年浅茅野調査報告書―北海道浅茅野飛行場、朝鮮人強制動員の歴史を掘り起こす』>
「大府飛行場中国人強制連行問題愛知対策委員会 中国人強制連行問題訪中調査団」
<2010『愛知における中国人強制連行・強制労働―生存者と遺族を中国に訪ねて』>
「愛知・大府飛行場中国人強制連行被害者を支援する会」 <2013『みかん畑の大きなテント―大府飛行場に連行された中国人』>
小田博志 <2012「足もとからの平和―北海道の「民衆史掘りおこし運動」から学ぶ」>
越田清和(編) <『アイヌモシリと平和―〈北海道〉を平和学する!』法律文化社:73-98>
が加わっています。
小田さんは表作成の動機を、「歴史学や文化人類学の近年の展開からこの民衆史運動をあらためてみてみると、それは方法論や実践形態などの点で非常に新しく、注目すべき点があると思われます。新しい研究分野『北海道学Hokkaido Studies』の可能性をも予感させます」とのべておられます。