イトムカ探訪(10)

野村鉱業に務めていた高木良治氏が、故梅沢所長を追悼して、「所長の歯は水銀のガス中毒でやられた」という秘話を語っています。

 

梅沢さんは総入れ歯です。なぜかというと、やま(鉱山)は戦前から戦争に負けるまで鉱山の中で仕事をしていたのは、朝鮮人、中国人の捕虜ばかりで、日本人はほとんど坑内に入っていなかったのです。戦後彼らがいなくなった時に、関係のない事務や営繕の中から人を募って鉱山の中に入ったのです。そのとき、梅沢さんが真先に入って、私も一緒に一番ひどい所を掘ったものです。軍隊帰りという事もあってか、一番大変なつらい時期を二人で突破しました。そのときはあまりわからなかったが、その時に自然水銀のガス中毒で歯茎をやられたのです。本来ならば立派であるべき歯ですが、本当に一生イトムカのために、野村鉱業のために、心身共に歯まで犠牲にして務めた方です。   

                       (『梅沢良治追悼集』)