韓国大法院の元徴用工裁判判決(1) 人権侵害救済を出発点に

 10月30日の徴用工として日本で働かされた4人の訴えにたいする韓国大法院(最高裁)判決について、日本政府は激しい批判を続けている。しかし、批判をする前に、そもそも元徴用工が訴えるような歴史的事実があったかどうか、そこから話を始めるべきではないか。

 訴えの概略をみよう。

 

 原告A:旧日本製鉄は、1943年頃、平壌で「大阪製鉄所で2年間訓練を受ければ、技術を習得することができ、訓練終了後、韓半島の製鉄所で技術者として就職することができる」とう募集広告を出した。この広告を見て応募。旧日本製鉄の大阪製鉄所で訓練工として働くことになった。大阪製鉄所では、 1 日 8時間労働で、炉に石炭を入れて砕いて混ぜたり、鉄パイプの中に入って石炭の残物をとり除くなどの作業で、ひと月に1、2回程度外出を許可されただけだった。賃金の大部分を貯金させられ、その貯金通帳と印鑑を寄宿舎の舎監に保管させた。提供される食事の量は非常に少なかった。また、警察がしばしば立ち寄り、寄宿舎でも監視する者がいたため、逃亡を考えることも難しく、逃げだしたいと言ったのがばれて寄宿舎の舎監から殴打された。

 原告B:1941年、大田市長の推薦を受け、保局隊として動員され、旧日本製鉄の募集担当官の引率によって日本に渡り、旧日本製鉄の釜石製鉄所でコークスを溶鉱炉に入れるなどの作業をした。賃金は全くもらえなかった。最初の 6カ月間は外出が禁止され、憲兵が半月に一回ずつ来て人員を点検し、仕事に出ない者をけったりした。1944年、徴兵され、神戸で米兵捕虜の監視員をさせられ、戦後、帰国した。

 原告C:日本製鉄の八幡製鉄所で線路を切り替えるポイント操作と列車の脱線防止のためのポイントの汚染物除去などの作業に従事した。逃走がばれ、約 7日間ひどく殴打され、食事の提供も受けられなかった。賃金は全く支給してもらえず、休暇や個人行動を許されず、日本の敗戦後、帰国せよという旧日本製鉄の指示を受け故郷に帰った。

 

 元徴用工は、このような訴えをしているというと、「最近も同じようなことを聞いた」という感想を持つ人もいた。

 外国人の「技能実習生」のことである。賃金不払い、監禁、などなどが行われていた。そして世界から「奴隷労働だ」と厳しい批判を浴びた。その反省もなく拡大されようとしている外国人労働受け入れ枠拡大。70年前の徴用工問題は、その源流であり、今の日本が直面している課題でもある。

 植民地支配を行い、侵略戦争を遂行するために、日本国内の労働力不足を補うために連れて来た「徴用工」、この人権侵害にたいする被害救済なしに、日本は世界から信頼を得ることができるのだろうか。その信頼を勝ち得る努力をせず、「請求権放棄で解決済み」という言葉を何十回繰り返しても、一歩も前に進むことはできない。

消費税怒りの30年 11月24日から全国で一斉行動へ

  安倍政権は、消費税10%と複数税率の実施、医療など社会保障の削減、軍事費を過去最高にする2019年度概算要求をだし、総裁選でも安倍首相は1年後には、消費税を10%にすると明言しました。これにたいして、断じて許さない全国的な運動をつくりだそうと、「消費税をなくす全国の会」が先月29日、東京都内で総会を開き、「くらし・営業悪化の消費税10%、9条改憲をみんなの力で阻止しましょう」とよびかけました。

 安倍政権による社会保障の改悪が、暮らしをいっそう困難にしています。医療費の窓口負担は70歳から2割に、入院給食費は毎年100円ずつ引き上げられ1食460円になりました。介護保険料滞納による差し押さえは過去最高の1万6千人、国民年金保険料の滞納も約4割となっています。国民健康保険料や住民税の滞納も増えています。

 こうしたことにくわえての消費税アップです。

 安倍政権は、消費税10%と合わせ「軽減税率」という名の複数税率を導入する計画です。しかし、これは飲食料品の一部と週2回以上の宅配の新聞を「8%に据え置く」だけで、10%を国民に押し付けるための口実であり、さらなる増税の布石です。

 「消費税をなくす会」は、現在、150万人以上の会員を擁しているそうです。この数年で、安倍首相の消費税引き上げ計画を2回延期させており、さらに会員を増やして3回目も断念に追い込みたいとしています。

 全国各地から集まった代表らが、地方議会に「消費税10%中止の意見書をあげてほしい」との請願陳情をおこなったとか、“国会議員は、地元の声に弱い。安倍首相の地元事務所でさえ、なくす会の要請に応対した”などの、経験を持ちよりました。

 11月24日から1カ月間、「消費税怒りの30年一斉行動」に取り組むそうです。

 

 総会で採択された「くらし・営業悪化の消費税10%、9条改悪をみんなの力で阻止しましょう」という呼びかけを紹介します。

                 ◆

 国民のみなさん

 西日本豪雨、台風、北海道地震と相次ぐ災害に、各地で必死に復興の努力がされています。犠牲になられた方に哀悼を、被災された方にお見舞い申し上げます。

 復旧・復興は個人や自治体任せにするのではなく、政府の支援がカギです。まさに税金の使われ方が問われています。しかも消費税は、災害でもいっさい減免のない過酷な税金です。

 また、東日本大震災から7年半がたちますが、いまだに福島では4万4千人が避難を続けています。安倍政権は2020年東京オリンピックまでに賠償を打ち切り、汚染水放出、放射線モニタリングの撤去などを行い、原発事故は終わったものにしようとしています。そして、各地で原発再稼働をもくろんでいます。この安倍政権に対して、国民の新たな怒りが広がっています。

 みなさん

 安倍政権は、2019年度概算要求で「骨太の方針」を基調にした消費税10%と複数税率の実施、医療など社会保障の削減、軍事費を過去最高にすることが明らかになりました。

 自民党総裁に3選された安倍首相は、アメリカ詣でを行い、トランプ大統領のいうままに軍備を増強し、軍事費をGDP2%(11兆円)まで検討しています。沖縄への新基地建設やオスプレイの全国配備など危険な軍拡は留まることがなく、その財源として消費税増税を狙っています。さらに財界や自動車などの大企業が、さらなる消費税増税と法人減税を要求しています。

 消費税導入から30年目をむかえました。この節目に消費税10%を許すならば、予算の歳入に占める消費税収は所得税を超えてトップとなります。今でさえ「生活が苦しい」と答えた人が56%にも上ります。子どもの貧困率は7人に1人と高く、日本の大学の授業料は経済協力開発機構OECD)加盟国の中でも異常な高さです。消費税8%増税後、貧困と格差はいっそう広がり、物価高、実質賃金や年金の減少、社会保障の負担増が国民生活を直撃しています。

 みなさん

 安倍首相は、「憲法『改正』を次の国会で」と明言していて、戦争する自衛隊に変える9条改憲を阻止することは、国民的急務となっています。

 私たちは、一貫して消費税廃止各界連絡会とともに世論と運動を発展させ、増税勢力が「小さく生んで大きく育てる」とした消費税2桁を阻止してきました。また、消費税10%を2度にわたって阻止してきました。

 マレーシアでは、5月の総選挙でマハティール氏が率いる野党が勝利し、公約に掲げていた消費税廃止(0%)を6月から実現しました。

 通常国会では、市民と野党共闘が画期的に前進し、「森友」「加計」疑惑の追及で安倍政権を追い詰めました。しかし、安倍政権は国会と国政を私物化し、数の力で「働き方改悪」法やカジノ実施法などの悪法を強行しました。

 草の根で対話をひろげ運動を発展させ、地方選挙や参議院選挙で増税反対勢力を増やし、安倍政権に痛打をあたえ、増税や9条改憲をやめさせましょう。

 私たちは、第29回総会で、1年後の10%増税を阻止し、減税・廃止に踏み出す出発点にしようと決意しました。

沖縄戦国家賠償訴訟 最高裁が棄却

 最高裁判所第三小法廷は2018年9月11日、沖縄戦国家賠償訴訟について上告棄却を決定しました。棄却理由は、「(上告者は)違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由(民訴法312条1項文は2項)に該当しない」としています。裁判官全員一致の意見。

 被害者らは、米日両軍がおこなった地上戦により、多数の一般住民が犠牲となったが、①旧日本軍の行った軍事的公権力の行使である戦闘行為が、特別な危険を創出した②日本軍による住民をスパイ視し殺害、避難壕追い出し、壕内で泣き叫ぶ乳幼児を殺害するよう親に強制するなど、戦争遂行中とはいえ、国民保護義務に違反する不法行為が多数行われたこと③長期間にわたり救済法を制定せず、被害を放置し続けた不作為の違法ーを問うてきました。立法不作為については、人権侵害の重大性と継続性、立法義務の存在、合理的期間を超えていることを指摘し、2005年に最高裁が在外日本人選挙権剥奪違法確認請求事件で違憲と判断した3要件を満たしていると主張しています。

 沖縄戦訴訟弁護団は、抗議声明を出す意向です。

迫る沖縄知事選

 沖縄県知事選挙が目前に迫っている(9月13日告示、30日投票)。主要メディアは、冷淡だが、都内で開かれている市民集会を覗くとそうでもなく、関心が高まっているようだ。

 知事選に先駆けて9日開票された名護市議選では、定数1減のなか、与党は現状維持の13人、野党は1人減の12人、中立1人となった。2月に誕生した渡具知市長は、この間、与野党拮抗する議会にあって、苦しい市政運営を迫られてきた。その状況は基本的に変わらない。とくに、辺野古新基地建設を巡っては、反対を表明していた議員が賛成を大きく上回った。この結果を見る限り、知事選も、玉城デニー氏と佐喜真淳元宜野湾市長との激しいデッドヒートが繰り広げられていくだろう。

知事選の最大の争点は、佐喜真氏がどのような選挙戦術をとろうが、辺野古新基地建設の是非であることは疑いない。

今年初めの名護市長選挙で自民が推す新人候補が当選したとき、安倍首相は、辺野古新基地建設に反対する現職の稲嶺進氏を破ったことに狂喜し、「名護市民に感謝する」とコメントした。一地方の選挙に自分の首をかけたかのような執心ぶりだった。今回も政権が激しく動いている。菅官房長官は沖縄に入り、「選挙戦のすべりだしが肝心。名護市長選では、初めは鈍かったが、開けてみたら大差で勝った」と語ったという。また、自民と公明の連合について、「公明党はやるとなったらとことんやり、大きな力を発揮する」とも言ったという。翁長さんの弔い選挙だからデニーさんになるというような甘い見方をしていたらとんでもないことになる。

安倍政権が表に出れば出るほど、辺野古に焦点があたることになるが、それだけではない。沖縄県が仲井真元知事の埋め立て承認を撤回したことも、大きい。撤回の会見をおこなった謝花副知事は、くりかえし、純然たる行政手続きだと語ったが、県政の命運をかけた決断だ。謝花副知事は、撤回処分に対して防衛局から反論を聞いた聴聞手続きの結果として(1)事前協議を行わずに工事を開始した違法行為(2)軟弱地盤、活断層、高さ制限および返還条件など承認後に判明した問題(3)承認後に策定したサンゴやジュゴンなどの環境保全対策の問題―が認められ、違法な状態を放置できないという行政の原理の観点から、承認取り消しが相当であると判断したと述べた。

政府は、撤回の効力を止める執行停止などを裁判所に求める法的な対抗措置を検討しているとされているが、はっきりした動きは今のところない。選挙にマイナスにならないよう動きを止め、選挙後に一気に動きだす腹であろう。

それゆえ、候補者は、撤回にどのように対応するのかを県民に示す義務がある。玉城氏は、県の決断を断固支持すると明言した。佐喜真氏は、現段階での県の判断とし、その判断の根拠について十分承知していないとしている。両者の違いは鮮明である。

 それにしても、翁長知事の撤回にかける思いは、県民を大きく揺さぶった。妻・樹子さんは、地元紙にこう語った。

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 沖縄県の翁長雄志知事の死去から8日で1カ月を迎える。政治生活を二人三脚で支えてきた妻、樹(みき)子(こ)さん(62)は、那覇市長時代に胃がんを克服した翁長氏が、今度も病魔に打ち勝つと希望を捨てなかった。しかし、壮絶な闘病を世間に隠してまで公約を貫こうとする夫の姿に、政治家の妻としての思いは揺れ動いた。埋め立て承認撤回が目前までたどり着き、樹(みき)子さんは「後の命は要りませんから、撤回まで人前で真っすぐ立てるようにしてください」と主治医にすがっていた。

 翁長氏の体に変調が現れたのは、今年に入って体重が60キロ台まで落ち込んだことだった。樹子さんは「胃がんを患った際に『80キロを割ったのは中学校以来だ』と言っていたくらい元々は大きな人だった。痩せて見えないようにと、実は下着を3枚重ねて着ていた」と明かす。

 4月に検査入院で膵臓(すいぞう)がんが判明した。病部を切除する手術を受けたが、1週間後に心臓の不調を来した。検査の結果、がん細胞が飛び散り、肝臓まで転移していることが分かった。さまざまな抗がん剤を試したがどれも効果が出ず、副作用にも苦しんだ。口内炎がひどくなり食事も進まず、水を飲むことさえ困難になっていった。

 翁長氏は7月27日に記者会見で埋め立て承認撤回の方針を表明した。だが会見の前夜には、知事公舎に帰るなり、玄関に置いてあるいすに3分ほど座り込んだ。立ち上がってもすぐに台所やリビングのいすで休んでは息を整えた。玄関から着替えのため寝室に入るまで20分かかるほど、体力は衰えていた。

 会見の日の朝、「記者の質問に答えることができるだろうか」と弱音を吐いた翁長氏を、樹子さんは「大丈夫よ。できるでしょ」と送り出した。ただ「撤回という重大な決断をするのに、判断能力がないと思われてしまうわけにいかない。不安だったと思う」と夫の心中を推し量る。

 会見を終えて帰宅した翁長氏が「30分くらい自分の言葉で話ができた。よく保てた」とほっとした表情で報告するのを聞き、樹子さんは「神様ありがとう」と心の中で叫んだ。

 だが、会見から3日後の7月30日、病状が進み翁長氏は再入院する。翁長氏はがんの発覚後、死が迫ると感情を制御できず家族に当たってしまうことを心配していた。「そうなってもそれは本当のお父さんじゃないからね」と子どもたちに語っていたという。樹子さんは「治療の選択肢はどんどん狭まっていったが、最期まで死の恐怖に駆られることはなかった。最期までいつも通りのお父さんだった」と目頭を押さえた。

 保守政治家として「政治は妥協の芸術」を信条とした翁長氏だったが、辺野古新基地建設阻止だけは譲らなかった。「樹子、ウチナーンチュはみんな分かっているんだよ。生活や立場があるけれど、未来永劫(えいごう)、沖縄が今のままでいいと思っている県民は一人もいないんだよ」という翁長氏の言葉が忘れられない。樹子さんは「県民の思いが同じであれば、いつまでも基地問題を挟んで対立しているのは政治の責任でしかない」と訴える。

 承認を撤回して海上工事を止めれば、県の職員まで損害賠償が及ぶと国がちらつかせてきたことを翁長氏は知事として気に病んでいた。樹子さんは記者に対し「国が一般職員まで脅すなんて不条理が本当にあるのでしょうか。それにもかかわらず、そう出てくると言うならば、その時こそペンの出番ですよ」と言葉を掛けた。

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 佐喜真氏が翁長知事の遺志を受け継ぐと語ったことに、「わが耳を疑った」という思いを抱いた人は少なくない。前回の宜野湾市長選挙で、「机をたたいて普天間の固定化はだめだと迫った」と佐喜真氏は演説したが、そのとき以上のそらぞらしさ。

 「政権の冷ややかな仕打ちに直面しようとも、たじろがず、ウチナーンチュの誇りを持って臨んだ、翁長知事の勇気と行動が、少しずつ、少しずつ、国民の関心を呼び覚ましているのです。埋め立て承認の撤回を、私、玉城デニーは全面的に支持してまいります。私は、しっかりと翁長知事の遺志を引き継ぎ、辺野古新基地建設阻止を貫徹する立場であることをここに表明致します」―おのれの意思と気持ちを飾らずに語る玉城氏の姿勢とあまりにも対照的だ。

 

民間人戦争被害者はなぜ放置されてきたか 瑞慶山茂弁護士の講演

 「集団自決」をめぐる教科書問題を機に、沖縄の情報発信に取り組んできた「沖縄戦首都圏の会」が9月8日、文京シビックセンターで瑞慶山茂弁護士講演会を開いた。

 瑞慶山氏は、沖縄戦と南洋戦における日米軍の残虐非道な加害行為と被害実態を詳しく語ると共に、裁判所が被害事実を認定しながら、被害受忍論や国家無答責論に逃げ込んで、請求を棄却し、司法の役割を放棄した判決の不当性を批判した。

  瑞慶山氏は、パラオ生まれで、1歳の時に避難船が沈没させられた中、生還した体験を持つ。沖縄戦被害救済のため沖縄民間戦争被害者の会をつくり、裁判闘争を進めるととともに、戦災者救済のため、新法律制定運動を進めてきた。

  講演の骨子は、

1 沖縄戦・南洋戦被害-日米軍の残虐非道な加害行為と被害実態

2 国の戦争責任を法的に追及するために沖縄戦国賠訴訟を提起

3 請求棄却判決と不服申し立て

4 南洋戦・フィリピン戦国賠訴訟の提起

5 民間人救済法制定運動の現状

6 未だに国が戦争被害者救済しないことの重大な意味

である。

  瑞慶山氏は、日本の援護法体系について、次のように解説した。

  <先の大戦による戦争犠牲者は、「我が国の軍人軍属や一般邦人はもとより、戦火を交えた国々の兵士、さらに戦場となったアジア諸国の多数の人々など」に及んだ。このうち日本人に対しては、旧厚生省(現厚生労働省)を所管とする援護行政上、1952年「戦傷病者戦没者遺族等援護法」以降、十指に余る関連法が制定された。第二次世界大戦以降、欧米諸国(米・英・加・仏・旧西独・伊・奥)の戦争犠牲者補償制度では、国民平等主義と内外人平等主義がほぼ共通の特徴とされる。国民平等主義とは、軍人と民間人を区別することなく戦争犠牲者に平等な補償と待遇を与えることであり、内外人平等主義とは、自国民と外国人を区別することなく平等な補償と待遇を与えることを意味する。

一方、日本の援護立法体系では、空襲犠牲者等をはじめとした民間人犠牲者と旧植民地出身者などの外国人犠牲者が基本的に適用対象から除外されており、奇しくも、欧米諸国の補償制度で通例となっている二大特徴と正負相反する形で重なる。日本の補償制度では、「国家との身分関係」が要件とされ、また「内地すなわち銃後」との認識に基づき、一般戦災者は援護体系から除外され、外国人犠牲者の問題については、講和条約や二国間条約等により「解決済み」とするのが日本政府の立場である。>

  さらに、質疑応答の中でも、「日本の援護立法の体系で国家との身分関係法という要件があって、その要件を満たす場合は補償を認める、身分関係と言うのは、軍人、国家から雇用されていたもの、あるいは軍属、国家と関連ある者という限定がついています。そうすると、民間人はそこに入らないように、仕組みとしてなっているんですね。なんでそういう条件になったかというと、戦後できた法律ですので、国として戦争被害にたいしてどういうふうに向き合うかという基本的な考え方がある」「昔の考え方が根底的に維持できるという発想があったと思うんですよ。明治憲法下の考え方を維持するとすれば、国との特別の関係、国家が国民より上なんだと、その上に立法をしています。これに正当な理由があるかというと、日本国憲法の体系からいうと、法の下の平等に反し、正当な理由にはならない。日本の現行憲法では平等主義ですから、理由にはならない。憲法違反だという主張を沖縄戦訴訟でも東京空襲訴訟でも断固として主張してきた」と見解を述べた。

 講演を受けて日本被爆者団体協議会の木戸季市事務局長は、被爆者援護法が制定されていない根本に、戦争犠牲受忍論と国による国民分断政策があることを指摘し、原爆被害者と空襲被害者、沖縄戦被害者が共同して国に戦争責任を取らせようとよびかけた。

 瑞慶山氏が繰り返し強調したように、戦争被害は国家災害であり、国に責任がある。原爆被害者も空襲被害者も、沖縄戦被害者も、国の分断政策に対し、社会的連帯による共同で、民間人戦争被害者にたいする補償制度を国につくらせることが求められる。

ベテランズ・フォー・ピースジャパンの井筒高雄さんが町田市で講演

  元陸上自衛隊レンジャー隊員で、ベテランズ・フォー・ピースジャパン代表の井筒高雄さんの講演会が9月7日、町田市の「町田市民フォーラム」であった。

 「米軍と一体化する自衛隊」が講演テーマで、①米国の軍事戦略のうえにある日本②自衛隊と日米新ガイドライン憲法9条の改正と緊急事態条項④防衛予算と戦争経済⑤日米地位協定―の5つを柱にしていた。

 日米軍事同盟と自衛隊問題を考えるうえで、大きな比重を占める沖縄。井筒さんは、沖縄県が作成した「数字で見る沖縄の米軍基地」や「日本とドイツ、イタリアの地位協定比較」をとりあげ、「沖縄の問題としてではなく、日本の問題としてとらえるべきだ」とのべ、辺野古新基地が「普天間+軍港+弾薬庫」であり、新たな巨大基地であることであることを指摘しつつ、海兵隊の大半がグアムへ移転し、実動部隊は2000人程度になるのだから、辺野古新基地は不要であると断じた。

 安倍首相が“憲法9条に自衛隊を書き加えても変わらない”と言っている意図については、「すでに安保法制という立法事実を作っているからということだが、私は変わると思っている」とコメントした。

 

 主催は、「まちだ市民連合」。同連合代表の藤井石根さんは、「今、自民党総裁選で安倍さんが動いているが、われわれは選挙で選べない。政権をやめさせるに運動は来年の参院選でしかできないから歯がゆい」「沖縄の翁長さんは、日本の政治には愛がないといっておられたが、もう一度、われわれはそのことを押さえなければならない」とあいさつした。

活断層の上に基地 クローズアップされた辺野古新基地建設の問題点

 4月7日、沖縄県市町村自治会館で「3・13判決は何を審判したのか 活断層の上に基地!?」と題する緊急学習会が、辺野古訴訟支援研究会の主催で開かれた。検査で出席できなくなった翁長雄志知事に代わり、4月から副知事に就任した謝花喜一郎氏があいさつし「環境保全措置について看過できない事態があれば躊躇することなく必ず撤回をおこないたい」と知事のメッセージを伝えた。
 県の訴訟を担当する松永和宏弁護士、仲西孝浩弁護士が工事差し止め請求を棄却した那覇地裁判決の問題点について解説した。
 琉球大学加藤祐三名誉教授が、工事海域の断層が活断層であると推定される根拠について説明した。加藤名誉教授は、辺野古断層の延長線上の海底の地質図を示しながら、「沖積層が切れている。そうであれば活断層である。画像処理をしていない元データを見たい。15メートルくらいの落差になるが、これは日本最大の内陸地震である濃尾地震は6メートルくらいしか切れていないことからすると、何回も切れていることになる」と、この地域で繰り返し大きな地震が起こった可能性にも言及した。
(注:根尾村水鳥(みどり)地区での根尾谷断層は上下差6m横ずれ量4mにも及んでいる)
 行政法が専門の琉球大学徳田博人教授は、行政処分の撤回には「制裁型」「要件消滅型」「公益型」の3つがあるとし、▽制裁型は、相手方の法令違反等を理由として行うもので、損失補償は必要が無い▽要件消滅型は、埋め立て承認後に埋め立て承認の要件を満たす事実がなくなったことを理由に行うもので、相手方の瑕疵などが出てきた場合は補償が不要となる方向へ動く▽公益型撤回は、埋め立て承認後に行政側の都合により撤回するもので、公益の内容や我慢の範囲内かなどにより損失補償が検討される―と説明した。
 徳田氏は、軟弱地盤の問題や活断層の問題で撤回を行う場合、二つ目の要件消滅型になるとみる。
 「軟弱地盤の問題やあるいは活断層の問題は、仲井真知事が埋め立て承認した時に、事実としてこれほどピックアップされていなかったんですね。審査も形式的にしか処理されていません。埋め立て承認というのは二つの法律的な性格がありまして、当初は土地をどんどん広げていこうと、土地拡大のための法律でした。しかし昭和48年に公害悪化とかきれいな水が守られない、生物多様性が復興できないということで、環境や安全性の観点から厳しくチェックをいれてくださいよ、こういう法律に転換されます。いわば安全であるかどうか疑いがあると、できるだけていねいな調査をしてください、こういうふうに法律のしくみが転換するんですが、仲井真知事が埋め立て承認をした段階では、さきほど加藤先生がおっしゃったようなことを認識していなくて、現在、認識されている段階で、本来であればていねいな調査と事実を公表して、専門家の意見を聞いて、議論はここまでいっていますよと。ここを見ていく必要があります」。
 ただ、「後発的瑕疵等で安全性の観点から撤回せざるを得ない場合、損失補償のない方向になる」と指摘する。
 「今回の活断層問題とか軟弱地盤の問題は、その後の事情によってこれは中止をしたり調査をしてください、あるいは科学的にある程度、事実、環境に与える著しい影響を与えるだろうということが明らかになった場合には、撤回まで行くと思いますけれども、要件消滅型になるだろうと。ただし今まで沖縄防衛局がやったことはどういうことかいうと、たとえば埋め立て工事をする場合には、設計図をつくったときに、本当にその設計通りに工事をして安全かと実施設計で調査をするわけです。本来であれば、全部の図面を調査して安全が確保されて初めて工事を実施するんですが、それで初めて協議しなさいとやるんですが、一部だけ実施計画してまだ終わっていない、協議が整っていない段階で、工事を進めていく。さきほど、いろんな問題があるのに、もっとていねいな事実を提出してください、あるいは一時期調査をするので工事を止めてくださいと指導している。岩礁破砕や軟弱地盤の問題で、専門家がいろんな疑問を呈しているわけです。もっとていねいにしてくださいと言っているにも関わらず強行に工事を進めると、いわば要件消滅型の撤回の性格から、制裁型の撤回へと性格を持つんだろうと私は思っている」
  そして、「沖縄県は、政府が行っている事実の隠ぺいをあぶり出しながら、一つひとつ科学的な方法で撤回の事実を固めようとしていると思っている」と県の対応についても前向きの評価をした。