K9護岸工事は本体工事ではなく仮設工事だった 北上田氏が解明

 

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 8月3日、辺野古のゲート前で、北上田毅さんからK9護岸工事は防衛局資料では本体工事ではなく、仮設工事であることが分かったと聞いた。「情報開示請求で入手した防衛局とK9護岸の受注業者の間で作成された『仮設工事 詳細施工計画書』では、『仮設工』と書かれていた」という。
この「本体工事着工」という言葉は、4月25日に沖縄防衛局が工事開始のセレモニーを工事現場で行い、メディア各社にこのニュースを流させたことから出回った。過去にも「本体工事」と報道されたが防衛局の設計概要では仮設工事となっており、県民に本体工事が始まったのだからもう引き返せないと思わせる、印象操作が行われたことがあり、それと同じじゃないのかという人も、当然ながらいた。それが正解であることが明らかになったのだ。 
北上田さんは、「護岸本体工事が進んでいる」ということを見せつけて、県民の諦めを誘うことが目的であることは明らかで、今行われているK9護岸工事は、仮設工事であることを覚えておいてほしい、今、工事を止めるために行動することが大事だと力を込めて語っていた。
 北上田さんは、その入手資料で判明したこととして次の2点をあげた。
1.K9護岸工は、当初から100mだけの施工が、「仮設工事」として予定されていた。現在、ちょうど100mの施工が終り、「仮設工事」は終了した。当面、100m以上に延長されることはない。
2.本来なら、基礎捨石の両側に被覆ブロック(9トン)を置き、海側に大量の消波ブロック(20トン)を置かなければならないが、今回の「仮設工事」では、基礎捨石の両側に根固用袋材(4トン)を置き、南側に消波ブロック(12.5トン)を設置している。このままでは本来の護岸とはならず、台風シーズンが終った後に、袋材、根固用袋材、消波ブロック(12.5トン)は全て撤去し、両側に被覆ブロック(9トン)を設置した上で海側に消波ブロック(20トン)を設置しなおすこととなる。
 北上田さんは、▽K9護岸工の石材搬入だけで大型ダンプトラック9000台が必要だが、まだ、それだけ大量の石材が搬入されていない▽工事用仮設道路も出来ていない▽被覆ブロック(9トン)は、2900個は必要だが、まだシュワブ内ではいっさい製作できていない―K9護岸に着工する準備はできていないこのような段階でなぜ、政府は、ともかく大浦湾に少しでも石材を投下しようとしたのかという問題を投げかけ、100mほどしか施工できず、大変な手戻り作業になることを分かった上で工事を強行したのは、もう引き返せないという諦めをつくりだすために行ったとしか考えられない、それは安倍政権の焦りだと指摘した。
 
 台風5号が沖縄本島に接近している。抗議船の船長の一人、仲本興真さんは、もうすぐフロートも陸に引き上げられるだろうと話していた。海では、台風に阻まれ、陸では毎日数十人がゲート前で抗議行動を行っている。この抵抗が、わけのわからない仮設工事を造り出したということだろう。
 

辺野古の浜での抗議集会

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 「違法作業をやめよ! 沖縄の海を守れ!」。7月25日午前中、抗議船やカヌーに乗った150人の「海上座り込み」が行われ、ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表は、「知事のあらたなたたかいが始まった翌日に大きな海上行動ができた」と誇らしげに語った。
 カヌーが71艇もでたというから、週末に続けられていた、カヌー教室開催の努力がこの一大行動の原動力になったことだろう。カヌー隊の一人も「これだけ出たら、海上保安庁もおとなしくするしかないね」という。日頃の口惜しさが、少し晴れたようだ。
 しかし、午前10時過ぎだったか、雨が降り始めた。雷注意報も出たらしく、午後の海上行動は中止に。午後の辺野古の浜での「海上行動に連帯する集会」は天候を見ながらの開催ということだった。
 辺野古の浜は、カヌーが並べられ、「NO BACE」「海を壊すな」などと書いた横断幕も掲げられるビーチらしさを感じさせるカラフルな砂浜になった。
 抗議船の船長の一人、北上田毅さんが工事の現局面を詳しく報告した。
 防衛局が本体工事に着手して3カ月になるが、K9護岸は100㍍ほどで止まり、取り付け道路工事も始めたもののこれも止まっていると、決して防衛局にとって工事が順調にいっているわけではなく、台風シーズンが終わったら、消波ブロックの位置を変えたりしなくてはならなくなるという。
 これから進められようとしているのが、辺野古の浜からも見える地点での工事。「けさ、船から確認したがネットに入った根固め用材が準備されていた。それを敷き詰めて、大型ダンプがすれちがえるようにしようとしている」と解説した。
 結論として、「今が決定的に重要な段階だ。海とゲート前が一体となって工事を止めていこう」と北上田さんは訴えた。
 

シュワブを包囲した2000人の「人間の鎖」

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キャンプ・シュワブメーンゲート前を中心に延びた1・3キロの「人間の鎖」=7月22日

 

 沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ前で昨日(7月22日)、「人間の鎖」行動が取り組まれた。午後2時からの1時間、日差し厳しく、33度の中での辺野古新基地断念を求める行動である。「この暑さは、(参加した)みなさんの怒りに煮えたぎる熱い思いでもある」と稲嶺進名護市長は表現し、「翁長雄志知事を支え、陸にも海にも基地は造らせない」と決意を表明した。参加した2000人は、滴り落ちる汗もぬぐわずに大きな拍手を送った。
 玉城デニ―衆院議員は、「あす旧暦6月1日は、沖縄にとって海の恵みに感謝する日」と話しかけた。「神々の物語」の中では、神々が金の鎖で沖縄の島を守ってくれているという。玉城議員は、「人間の鎖」を、その金の鎖になぞらえて、心をつないで基地を包囲する小屋孫の安全を守る行動だと語りかけた。
 沖縄防衛局が護岸工事に4月27日に着手して以降、2000人規模の集会は、3回目だ。
 護岸工事着手1カ月の5月27日は、「K9護岸」に焦点をあてた集会だった。ヘリ基地反対協議会の安次富浩共同代表は、「石材で築いた堤が陸地部分から数十㍍、海中に延びている。その堤の上に鉄板を敷いてクレーンによる石材投下をしているが、ちょっとした風でもクレーンが倒れる恐れがあり、工事がしょっちゅう中断している」と現地報告をしていた。それから1カ月半あまりたった現在、K9護岸は300㍍くらいに延びてはいるが、作業はそこで止まった。防衛局の説明では、「台風シーズンに備えて」テトラポッドを並べているという。そして反対側の「K1護岸」工事を始めた。工事を軌道にのせるためには仮設道路を造って資材を運ぶ段取りになっていたはずだが、仮設道路はできていない。その関連で、建設資材が不足しているのだろうと「読む」向きもある。
 6月10日は、「辺野古新基地建設断固阻止! 共謀罪は廃案へ!」を掲げたシュワブゲート前集会が1800人の参加で開かれた。国会包囲行動に連帯して企画されたもので、主催者は、「共謀罪NO!沖縄実行委員会」。実行委員長の高良鉄美琉球大学教授が、「共謀罪」は基本的人権を侵害し、人間の尊厳まで打ち破っていくと喝破し、「『共謀罪』がターゲットにするであろう新基地建設阻止の運動を強めよう」と呼びかけた。
 海でのたたかいも粘り強く続けられている。6月24日には、護岸工事開始2カ月にあたり、海上パレードを行った。カヌー20艇と抗議船4隻が瀬嵩の浜付近に集結。浜に集まった150人に送り出され、工事地点付近まで海上パレードをおこなった。工事開始から3カ月となる7月25日には、イメージカラーの「ブルー」のものを身につけて海上座り込みを行おうとヘリ基地反対協が呼びかけている。

辺野古工事阻止、共謀罪廃案に シュワブゲート前集会

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辺野古工事阻止! 共謀罪は廃案に!」を掲げた集会で訴える、前列左から、仲村未央県議、伊波洋一参院議員、高良鉄美教授、三宅俊司弁護士。

 

 

 昨日6月10日、米軍キャンプ・シュワブゲート前で1800人が結集する集会が開かれた。辺野古工事阻止と共謀罪を廃案に、の二つを掲げ、国会包囲行動と連帯して開かれた。 琉大教授の高良鉄三さんや参議院議員伊波洋一さんらが訴えた。

 月曜日と土曜日にゲート前の座り込みで運営責任者を担当している瀬長和男さんも車の上から「共謀罪を先取り」して弾圧を強めていると指摘されているゲート前の県警の警備についてリアルに報告した。

 瀬長さんは、座り込みの際、一人ひとりの判断を尊重した話し方をし、カマボコ車の前に集中してくださいとは言わない。参加者をあおるようなこともなく、いわば情報提供型の運営をされているといっていいだろう。 そして、座り込みの時に立つ位置は、車道の反対側のスピーカーが置かれている側にいることが多い。集会参加者の安全を確保するためには、指揮者は全体の様子を常に掌握し、適切な指揮を執る必要があり、指揮者が機動隊にごぼうぬきされてはいけないと考えてのことのようだ。

 これまでゲート前では、工事車両を基地の中にいれる際に、座り込んでいる人たちを排除したが、工事車両が通れるスペースができれば、それ以上、力ずくで人を移動させることもなかった。

 それが、2週間ほど前から変わったという。 しかも、機動隊の中隊長は、指揮者に座り込みの中止の指令を出すよう要求までしてきている。むき出しの集会妨害であり、指揮者が座り込んでいなくても、参加者を扇動しているとして拘束するのだから、まさに共謀罪の先取りといっていいだろう。

 瀬長さんは、中隊長に私の言葉のどの部分が扇動に当たるのかと聞いたが、回答できなかったという。恣意的な現場判断で、犯罪ではない行為が犯罪にされてしまうおそれがたぶんにある。そういう根拠(弁護士は「武器」と表現していたが)を警察権力に与えるのが共謀罪であるという指摘は、説得力があると思う。

 

 さて、今回の集会は、5月27日の「K9護岸工事阻止」を掲げた集会に続く大規模なものである。聞くところによれば、労働者も仕事が休みで参加しやすい土曜日に大きな集会をもって、確実に工事を止める日にしたいという意見があったという。しかも、毎回訴えるポイントをしぼるのだという。

 それで5月27日は今やられている工事が、工事図面で「K9」と呼ばれている部分での護岸工事であることがわかるように集会名称にしたらしい。

 ここから推察できるのは、護岸工事の一部だということであり、埋め立てはもっと先のことである。

 国は、埋め立て工事が始まったのだからもう後戻りはできませんよと、イメージ操作をねらっているようだ。K9護岸工事でサンゴが破壊されることは絶対に許されないが、埋め立てが本格的に始まるのは設計図にあるすべての護岸工事が終わって囲われてからのことである。工事に対する怒りとともに、工事そのものがどのように進められようとしているのかは、正確につかんでおくことが、諦めずにたたかいを継続するうえで欠かせない情報となるのは確かだ。そういうことを考えた集会名称ということだろう。 

 

K9護岸工事ストップ! キャンプシュワブ前県民集会

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隣の人と手をつなぎ万歳する「オール沖縄方式」で団結がんばろーを三唱する集会参加者

 

 26日、「辺野古基地を造らせないオール沖縄会議」の呼びかけで、米軍キャンプ・シュワブゲート前で県民集会が開かれた。

 県民集会は午前11時からだが、7時半には20人ほどが集まり、ゲート前での座り込みが始まった。形式的には県民集会とは区別され、この座り込みは毎日行われている通常行動。徐々に人も集まってきて、9時半にはゲート前の座り込みには90人ほど、テントには120人ほどか。大型バスも次々に到着した。

 座り込みで話が出たのは、K9護岸工事の様子と、昨日の機動隊のこれまでにない動き。

 昨日の機動隊の異常な動きというのは、こうだ。ゲート前行動の指揮をとっていた瀬長和男さんにたいし「座り込みをしろと指示を出しているのは問題だ」と言って、機動隊の隊長が瀬長さんを取り囲んで別の場所に移動させたというのだ。ある人は、「共謀罪法案が衆院強行採決されたことから、座り込みにたいし、これからは共謀罪が適用されるぞ、と脅したのではないか」と話していた。瀬長さんに直接聞いたわけではないので、どこまで正確かははっきりしないが、注視したい事柄だ。

 K9護岸工事については、ヘリ基地反対協の安次富浩共同代表が詳しく報告した。

 「陸上部から海に向かって「ずり石」や「捨て石」などが積み上げられているが、2、30メートルほどだ。その上に鉄板を敷き、その上にクレーンが載って、石を投下している。カヌー隊の監視行動で分かってきたが、カヌーが出せるほど海が穏やかな時でも、クレーンが動いていないことがあり、ちょっとした風でもクレーンが倒れる危険があるから中断しているようだ。農家には申し訳ないが、台風が来れば工事が止まる。風頼みみたいだが」

 護岸工事開始のセレモニーまでやって工事を始めた政府だが、おそらく思うように進まないことに首相官邸はやきもきしているに違いない。“1カ月でたった30メートル? トランプ大統領になんといわれるか”と。

 護岸工事が簡単には進まないことは、ほかにもいろいろと理由がありそうだ。

 護岸工事には大量の石材を必要とする。1日100台のダンプでシュワブに運び込んだとして3カ月はかかる。ゲート前の座り込みをつづけることは、それを半年、1年と遅らせることが確実にできる、その確信のもとに座り込みが毎日続けられている。

 それから安倍政権が、「漁業権が放棄されたから知事には岩礁破砕許可権限はなく、岩礁破砕許可を得なくても工事は続けられる」とうそぶいていることだ。共産党赤嶺政賢衆院議員が、漁業権に関する水産庁の見解変更の根拠を国会で追及したが、水産庁はまともに根拠を説明できなかった。首相官邸が、知事から岩礁破砕許可がえられないので、知事の許可の必要なし、とするために、水産庁に見解を変更させたことは明白だ。「試合中に自分たちが負けそうだからと言って、ルールを変更する、こんなことが民主主義国家で許されるのか」―そう多くの人が安倍政権を厳しく批判している。

 これは、翁長知事が護岸工事の差し止め訴訟を提起したり、埋め立て承認の「撤回」を行ったときに、司法の場でもこの問題が鋭く問われることになるであろうから、その点も考え、いかにして法の網をくぐるかを考えながら政府は行動しているのであろう。

 安保の問題になるととたんに役割を放棄する司法といえども、政府はまったくのフリーハンドであるわけではない。

 このようなこともやはり、護岸工事1カ月には、色濃く反映しているとみることができるだろう。

 県民集会での発言の一つ一つを紹介することはしないが、これらのことを強く感じさせた1日であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

辺野古護岸工事着工に知事怒り 

 沖縄防衛局は、今日(4月25日)、辺野古の護岸工事に着手したと発表した。

けさ、辺野古に行っていた人から、「ネットに石を詰めたものを5個、クレーンで波打ち際に置いただけですよ。ほどなく、ビニールをかけていましたから、今日はこれで終わりでしょう。まったくセレモニーそのものですよ」と“実況中継”が入った。

予想通りというか。

 きのうまで護岸工事に使うであろう仮設道路は、あまり進んでいなかった。それにケーソンを入れる前の根固め用材がまだ運び出されていなかったことなどから、とても護岸工事の着工は無理だろうというのがもっぱらの見方だった。とはいえ、うるま市長選が終わり、政府にとってはなにはばかることなく工事を強行できる環境になったとして、県の制止を振り切り、着工に踏み切ると予想した。高江のオスプレイパッド工事では、参院選伊波洋一さんが圧勝したその数時間後に強行した。このことに、政府がいかに民意をまったく介さない査証と厳しい批判の声があがった。

今回もうるま市長選の結果が出た翌日の月曜日に、参院選のときのように工事をやるのではないかと予想したが、1日ずれた。案外、菅官房長官は、県民やメディアの批判を恐れているのかもしれないね。

 

この護岸工事の着工を受けて、同日午後、翁長知事が記者団のぶら下がりに応じた。県庁1階ロビーの一画に、テレビカメラが設置され、記者が群がっているから、県庁を訪れた人は「何やっているの」と聞いている。遠巻きに聞く分には、追い払われることもないようだ。

この会見で知事が発表した「知事コメント」は次の通り。

 

本日、沖縄防衛局が護岸工事に着手し、辺野古の海において捨石の投入が開始されたことについて、本日、沖縄防衛局から連絡があり、また、現地に派遣した職員からも報告を受けております。

沖縄県としては、事前協議が調った後でなければ工事への着手は認められないことから、工事を停止するよう求めてきたところですが、今回、沖縄防衛局がこれに応じず護岸工事を強行したことは許しがたいものであります。

また、承認願書においては、事業実施区域内のサンゴ類の移植・移築は、事業実施前に行うとしていることから、沖縄県としては、今回の護岸工事施工個所におけるサンゴ類の状況を確認するため、事業者による調査結果の資料の提供や、護岸工事の着手前に県による立ち入り調査を認めるよう求めてきたところです。しかしながら沖縄防衛局は、沖縄県に十分な説明もないままに捨て石を投入しております。

辺野古埋め立ての工事は、各工区を汚濁防止膜で締め切る方法ではないことから、サンゴ類の移植等を行った後に工事を行わなければ、濁りの影響などで移植前のサンゴ類に影響が生じる恐れがあり、最悪の場合、その多くが死滅する可能性も考えられます。

さらに、本年3月17日に環境省が「海洋生物レッドリスト」を公表しましたが、県が確認したところ、当該事業の評価書に記載された確認種のうち63種が、新たに貴重な海洋生物に該当することになり、サンゴ類についても、評価書に記載された確認種のうち5種が、新たに貴重な種に該当しております。サンゴ類の移植等の方法について、沖縄防衛局が環境監視等委員会の指導・助言を得たのは平成27年度であり、こうした新たな情報を考慮したものとはなっておりません。

今回、沖縄防衛局が用いた手法は、高裁判決で示された「現在の環境技術水準に照らし」て、「その場その時の状況に応じて専門家の指導・助言に基づいて柔軟に対策を講じ」ているとさえも言えず、サンゴ類をはじめとするサンゴ礁生態系を死滅に追いやるおそれがあり、環境保全の重要性を無視した暴挙であると断ぜざるをえません。

政府は、なりふり構わず埋め立て工事の着手という既成事実を作ろうと躍起になっておりますが、護岸工事は始まったばかりであり、二度と後戻りが出来ない事態にまで至ったものではありません。

私は、このような政府の暴挙を止めるため、IUCNなど自然保護団体にも強く協力を訴えかけていくとともに、差し止め訴訟の提起を含むあらゆる手法を適切な時期に行使し、辺野古に新たな基地を造らせないという県民との約束を実現するため、全力で戦う考えであります。

大浦湾の貴重な自然環境を次世代に受け継ぐためにも、県民の皆様にも決して諦めることなく、辺野古への新基地建設阻止に向け、引き続きご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

           平成29年4月25日

           沖縄県知事 翁長雄志

 

 そのあとの記者団との一問一答も若干紹介しておく。

―知事はこれまで対抗策として、工事の差し止めや撤回について明言されていましたが、いつごろその対抗策を講じるのか。

 知事 差し止め訴訟もそうでありますけれども、撤回につきましても、慎重に、大胆に物事を進めていかなければならないところがございます。法的な観点からの検討は、丁寧にやらなければなりません。どのような事由が撤回の根拠となるか、効果があるか、慎重に今、弁護団とも検討しているところであります。沖縄県としましては撤回を視野に入れて、法的な観点、国の日々の動き、全体的な流れを勘案しながら、あらゆる状況を想定して、今、弁護団と議論をしているところであります。今後も沖縄県の有するあらゆる手法を用いて、辺野古に新基地はつくらせないという知事公約の実現に向けて、とりくんでまいります。

―護岸工事は、現状回復は難しくなるという見方があるが、どの程度の危機感をもっているか。

 知事 実際上、海域に入ったわけですから、たいへんな危機感を持っています。今日までの出来ごと等を思い出しながら、なおかつ、政府がことあるごとに県民に寄り添い、誠心誠意、基地負担の軽減、法治国家であるというようなことを話しながら物事を進めておりますけれども、現状は私たちからすると、暴挙としかいいようがない。そのなかで本日、海域に捨て石が入ったということは、たいへん重大なことと考えておりまして、そのことに関して、私たちも重大な決意でこれからいろいろ対処しなければいけないなとこのように考えています。

―差し止め訴訟を含むあらゆる手法を適切な時期に行使するとおっしゃっていたが、まずは撤回よりも差し止め訴訟を提起して行くという構えでいらっしゃいますか。

知事 これはいろいろ弁護団と相談しながら、岩礁破砕許可を受けることなく継続していることとか、そういったことを含めいろいろな角度から議論しつつ、そういったものに対処しようということであります。

―市民の間で早く撤回するべきだという声がある。その受け止めと、いまの事態を市民にていねいに説明するお考えは。

知事 いろんな議論、マスコミなどによるいろいろな声の紹介含め、いろんな識者にお聞きもしています。一昨年に、第三者委員会で約半年間検証してもらいましたが、そのときにも中谷防衛大臣5月頃、夏には土砂を入れるというような話がある時に、県民はたいへん、不安に思って早く取り消せ、第三者委員会とは関係なく早く取り消せというような話もございました。その第三者委員会にかかわった人達は、時間をかけて瑕疵について、私たちからすると正確に報告をしてもらいました。そういった中での一昨年10月13日の取り消しだったわけであります。ですから、県民もたいへんいらいらするでしょうし、たいへん不安にもなるでしょうし、いろいろございますが、私とすれば、工事を止める、そういうことで知事になっておりますので、その方法を含め、決してマイナスの面で考えてはおりませんので、いい方向に行くようにいろんな議論をしながらやっているところであります。

―県民投票については。

知事 さっきも県民の不安とかいろんな思いがあるようですがという質問がありましたが、いまのことも耳の中に入ってきて、私なりに県民やあるいは世論として、おっしゃっていることについては出来るだけ深く理解するようにやっておりますので、私なりの考えはもっておりますけれども、これも含めて相談しながら、県庁内でも相談しながらやっていきたいと思います。

 

私としては、知事が県民に「あきらめないで」と呼びかけたことが一番、心に響いた。

自民党沖縄県連が辺野古容認 安倍政権と一体となって県民世論に挑戦

 自民党沖縄県連の大会が昨日(2017年4月8日)那覇市内で開かれた。多くのメディアが、普天間基地の移設先について「辺野古を含めたあらゆる選択肢を排除しない」としていた方針を転換し、「辺野古容認」とした点に焦点をあてて報道したが、それは当然であろう。

 ここで少し詳しく県連の辺野古新基地建設をめぐる方針の変遷を見ておきたい。
 2009年の衆院選で「最低でも県外」を掲げた民主党が大勝し、自民県連は全敗。これ以降、自民県連は選挙では県外移設を公約に掲げた。2013年11月25日に沖縄県選出の5人の国会議員自民党本部に呼び出され、県外移設を取り下げさせられた。同日、石破茂幹事長(当時)は、県選出国会議員との会合に関する記者会見を行った。
 「先程9時から、私と沖縄県選出自民党の5名の衆参両院議員の皆さん方との会合を開かせていただいた。結果、普天間基地の危険性を一日も早く除去するために、辺野古移設を含むあらゆる可能性を排除しないということで一致をいたしました。私どもとして、これを受けて、普天間基地の危険性の一日も早い除去のために、沖縄の国会議員とさらに連携を密にしながら、このことの実現のために全力を尽くしてまいります」
 石破氏の横には、5人の国会議員が座った。このときの写真が、明治政府から琉球に派遣された松田道之処分官が警官、軍隊を引き連れて首里城の明け渡しを求めたときの図と重なって見えるとして、「平成の琉球処分」と呼ばれた。

 

 では、今回の県連大会の方針転換は、何によって起こったのだろう。
 <名護市辺野古への普天間飛行場代替施設移設に関して、平成28年12月20日、国が提起した不作為「違法確認訴訟」で、最高裁判所は、国の主張を認め県の敗訴を言い渡した。判決内容は、平成27年10月13日に翁長雄志知事がなした「辺野古沿岸埋め立て承認取消し処分」は違法とされるなど、県の主張を悉く退ける県にとって厳しい結果となった。この結果を受け、翁長知事は、自らがなした「取消処分を取消した」。これにより、平成25年12月27日に仲井真弘多前知事がなした埋め立て承認処分の合法性が確定した。>
 県連は、この最高裁判決がでたことにより普天間問題は新たな段階に入ったが、翁長知事はいまだに「知事権限などあらゆる手法を行使して辺野古移設を阻止すると発言」しているが、普天間の固定化につながると批判。「辺野古代替施設への移設以外に現実的な方策が見いだせない」と方針転換を打ち出した。
 つまるところ、最高裁判決に従って国は辺野古の工事をどんどん進めるから、国に抵抗をすることをやめるべきだという理屈であろう。そして、行動方針として「最高裁判所の判決に従い裁判所の和解勧告の順守を翁長県政に求めるため、県議会における追求や広報街宣等を駆使して全力で取り組みます。」とうたった。
 この行動方針は、2月議会ですでに自民党県議団が代表質問や一般質問でおこなってきたことの確認である。この立場で今後も翁長県政を徹底追及し、翁長知事に国へ服従するよう求めるということを確認したということができよう。


 自民党県連は、衆院小選挙区でも参院選でも全敗しているが、辺野古容認によって失地回復の足がかりをつかめるのか、ますます混迷を深めるのか。そのあたりを彼ら自身どうみているだろう。自民党大会の文書の次の点に注目したい。
 ① 第12回県議会議員選挙は6月5日に行われ、13選挙区に71人が立候補した。自民党は党公認19人、推薦1人の計20人が立候補した。選挙結果は、自民党は、公認・推薦を含め、公認14人(名護市は無投票当選)、推薦1人の15人が当選した。改選時13名から1名増となっているが、前回(第11回)県議選における自民党の当選者は15人であり、厳密には今回は1名減となった。沖縄の政治・経済の先導的役割を担ってきたのは自民党であり、政党としての責任を果たしていくためには、県政において最大・多数の議席を獲得する必要がある。そのため、現下の自民党にとって厳しい政治情勢にあって、中頭郡区、沖縄市区、宜野湾市区、那覇市区の4選挙区で公認候補を増やし全員当選を目指した。しかし、選挙戦さ中、米軍属による(殺人)・死体遺棄事件が発生し、さらに投票日当日に米兵による飲酒運転人身事故が起きたことなど、選挙期間中連日報道され、米軍事件イコール基地容認自民党とのイメージが定着し、明らかに有権者の投票判断に影響し自民党に逆風となった。
 ② 昨年は、県議会議員選挙で、現有議席を上回ったが、当選者15名(推薦含む)と当初目標に届かず、参議院議員選挙は、オール沖縄候補に大敗した。依然県内政情は、自民党に逆風であり、党勢拡大・党員獲得運動は厳しい状況にある。翁長知事が掲げる辺野古移設阻止に対し、原点である普天間飛行場の危険性の除去・早期返還の実現と言う県連の主張が県民に浸透し得なかったのが最大の要因である。
 ③ これまで、県連は翁長県政・オール沖縄側の国内外への反辺野古移設キャンペーンやマスメディアへの取り組みなど巧みな情報発信戦略に対し、迅速・的確な対応が出来ず、県民の支持を失ってきた。
 「米軍事件=基地容認自民党のイメージ定着」「依然自民党に逆風。県連の主張が県民に浸透しなかった」、さらに「国内外への反辺野古移設キャンペーンに対応できなかった」と総括している。最後の点についていえば、自民党県議らは、あらゆる機会に知事の訪米活動は成果がなかったと繰り返し、今年度予算からの削除さえ要求してきた。それは、訪米活動にたいする県民の期待と支持をおそれ、なにがなんでも断ち切りたかったことがみてとれよう。
 大会後、自民党県議らは「苦渋に近いものがある」「翁長知事の全盛期は過ぎ、さがりつつある」-こんなことを言っていたという。つまり、容易なことではないが、最高裁判決が出て、翁長知事の求心力に陰りが見え始めており、今こそ反転攻勢に転じるべし。その旗幟を鮮明にするため、辺野古容認だ―来年11月の知事選戦略を見据えた決断であろう。「来るうるま市長選挙、那覇市議選を勝利し、来年に予定される、名護市長選挙を始め首長選挙、最大の戦いとなる県知事選挙に向け、万全の体制を構築しなければならない」と檄を飛ばしている。安倍政権とまさに一体となって県民世論に挑戦する姿が鮮明になった大会である。