翁長知事の施政方針(8)

 第3は、沖縄の「平和」を拓く―平和創造プラン―の視点であります。

 「沖縄から世界へ、平和の発信」について申し上げます。
 沖縄平和賞や平和祈念資料館における戦争体験証言等の記録などを通じて、恒久平和を願う沖縄の心を広く国内外へ発信し、次世代に継承する事業を充実させてまいります。
沖縄戦の戦災の状況を後世に伝えるため、国と連携し、戦災の記録が確実に残るよう取り組んでまいります。

 「国際交流・協力の推進」について申し上げます。
 世界のウチナーネットワークの強化、拡大、次世代への継承を図るため、市町村及び県人会や世界若者ウチナーンチュ連合会等との連携を一層強化し、様々な交流を推進してまいります。
 県内の中学・高校で国際協力出前講座を実施するとともに、JICA沖縄と連携して、高校生を開発途上国へ派遣し、将来の国際協力を担う人材を育成します。

 「基地問題の解決と駐留軍用地の跡地利用」について申し上げます。
 昨年12月、県民の不安が一向に払拭されていないことから配備撤回を求めてきたオスプレイが、墜落事故を起こすなど、米軍基地に起因する事件・事故は、依然として県民に大きな不安を与えております。
 県としては、引き続きオスプレイの配備撤回を求めるとともに、米軍機による事故等が発生した際の政府の対応に県の考えを反映させる新たな仕組みを構築し、県民の懸念や不安の払拭を図って参ります。
 また、日米地位協定については、県としては、米軍基地を巡る諸問題の解決を図るためには、米側に裁量を委ねる形となる運用の改善だけでは不十分であると考えております。
 今後とも軍転協や渉外知事会、全国知事会とも連携し、あらゆる機会を通じ、日米両政府に、日米地位協定の抜本的な見直しを粘り強く求めてまいります。
 辺野古新基地に反対する県民世論、及びそれを踏まえた建設阻止に向けた私の考えや、沖縄の正確な状況について、米国政府、連邦議会へ伝えるためには、米国ワシントンD.C.の駐在員を活用し、基地問題に関する情報収集・発信を行うとともに、私が訪米し、直接訴えることによって、沖縄の課題解決に努めてまいります。
 普天間飛行場の5年以内運用停止を含めた危険性除去の方策について、政府と調整してまいります。
 嘉手納飛行場より南の施設・区域の返還については、統合計画の確実な実施とともに、内容の具体的な説明、地元意見の聴取の場の設置、跡地利用の円滑な推進等を引き続き政府に対して強く求めます。とりわけ、牧港補給地区については、7年以内の全面返還に向けて、引き続き、政府と調整を進めてまいります。
 また、平成27年3月に返還された西普天間住宅地区の跡地利用については、国、宜野湾市琉球大学、地主会等の関係者と連携し、国際医療拠点の形成を目指してまいります。
 さらに、普天間飛行場をはじめとした返還予定地について、関係市町村等と連携し、跡地利用計画の策定を促進します。
 戦後処理問題については、不発弾処理問題の早期解決に取り組むとともに、沖縄戦戦没者の遺骨収集の加速化を図ります。また、所有者不明土地問題について、抜本的解決策を講ずるよう国に求めてまいります。
               (「Ⅲ 提出議案について」は略)

翁長知事の施政方針(7)

 「子育て・高齢者施策の推進」について申し上げます。
 安心して妊娠、出産し、子どもを健やかに育てることができるよう、子育て世代包括支援センターの設置を促進するとともに、低体重児出生率の改善に向けた取組を推進します。
 また、こども医療費助成制度について、市町村の意向を踏まえながら、現物給付の導入に向けた取組を推進します。
待機児童の計画的な解消や、多様なニーズに対応した子育て支援の充実等、保育サービスの充実を図ります。
 「沖縄県子どもの貧困対策計画」に基づき、子どものライフステージに即した切れ目のない総合的な子どもの貧困対策を推進します。
さらに、要保護児童等への支援やひとり親家庭等の自立支援にも引き続き取り組みます。
 高齢者の介護サービスの充実、認知症施策の推進、社会参加の促進等、地域包括ケアシステムを構築するとともに、介護人材の確保に取り組みます。
また、入所待機者の解消に向け、特別養護老人ホーム等の施設整備の支援に取り組みます。

 「医療の充実」について申し上げます。
 北部及び離島地域における医師不足の解消に重点的に取り組むとともに、看護師等保健医療従事者の養成・確保、救急医療体制の充実など、地域医療の充実強化を図ります。
県立病院については、地域の中核病院として、救急医療や小児医療、周産期医療など医療提供体制の安定確保に努めるとともに、経営の健全化に向けて、更なる改善に取り組みます。
 また、新県立八重山病院については、平成30年度の早い時期の開院に向けて整備を進めます。

 「安心・安全で快適な社会づくり」について申し上げます。
 人に優しい交通手段の確保に向けて、IC乗車券の船舶やタクシーへの拡張利用について検討を行います。 
 住環境の整備については、県営大謝名団地、神森団地、南風原団地、南風原第二団地、新川・真喜良団地等の建替を推進します。
 民間既存住宅の省エネ化やバリアフリー化を図るため、住宅リフォームを促進するとともに、配慮が必要な高齢者等の民間賃貸住宅への入居支援を促進します。
 飲酒運転根絶等の交通安全対策のほか、地域社会と連動した「ちゅらさん運動」を一層活性化させ、少年非行防止対策や子ども・女性・高齢者等の安全確保を含めた総合的な犯罪抑止対策に取り組みます。
 犯罪被害者等を社会全体で支える機運の醸成を図り、警察安全相談体制の充実、大規模災害やサイバー空間の脅威など、県民生活を脅かす様々な危機に対してきめ細かな対策を推進します。
 DV ・ストーカーや性犯罪等の被害未然防止対策を強化するとともに、県立中部病院敷地内に「沖縄県性暴力被害者ワンストップ支援センター」を建設し、性犯罪・性暴力被害者に対する被害直後からの総合的な支援体制の充実に取り組みます。
 消費者被害の未然防止と早期救済を図るため、市町村相談体制の充実と消費者への啓発等に継続的に取り組みます。
 災害に強い県土づくりのため、老朽化した橋梁の補修・補強や海岸堤防等の改修、また、民間住宅、ホテル、病院等への耐震診断及び改修等に対する支援等に取り組みます。
 治水・浸水対策、土砂災害対策、高潮対策に取り組むとともに、治山対策による森林の維持・造成を推進し、潮風害の防止、山地災害復旧・予防、及び生活環境の保全を図ります。
 東日本大震災熊本地震の教訓を踏まえ、県民の防災意識の向上と迅速な避難行動の確保、園、市町村、民間事業者等と連携した迅速な災害救助や被災者支援に備えた体制の整備等に取り組みます。
 安全な水道水を将来にわたって安定的に供給するため、水道施設の計画的な更新・耐震化を推進します。
 また、市街地の雨水浸水対策を促進し、下水道施設の整備拡張や計画的な更新・耐震化に取り組みます。

 『離島力の向上」について申し上げます。
 離島地域においては、港湾・空港施設の機能向上をはじめ道路・公園などの社会基盤整備を推進します。
 超高速ブロードバンド環境の整備による情報格差の解消や、本島周辺離島8村への水道水の安定供給と料金低減の取組など、水道広域化の取組を着実に進めます。
離島航路及び航空路に就航する船舶や航空機の購入等の支援など、交通基盤の整備を推進します。
 また、離島航路及び航空路の交通コスト低減や割高な生活コストの低減に取り組むとともに、安定した保健医療サービスの提供、離島患者の通院コストの低減や植物コンテナによる葉野菜の安定供給のほか、離島からの高校進学等の支援など、離島の定住条件の整備に取り組んでまいります。
 体験プログラムの開発・改善や民泊を推進する離島体験交流事業等を引き続き実施します。
 離島の主要産業であるさとうきびや畜産などの農林水産業の生産性向上、担い手の育成・確保対策を推進し、製糖業の効率化や合理化、経営安定化に取り組むとともに、地元特産品の販売力強化を支援します。

 「教育の振興」について申し上げます。
 学校教育については、教員の指導力向上、学校の授業改善等、小中学校のさらなる学力向上を図ります。また、正規教員率の改善にも引き続き取り組みます。
 中高一貫教育等の充実による人材の育成を図るとともに、給付型奨学金の実施など、大学等への進学を支援してまいります。
 さらに、大学進学率のさらなる向上を図り、将来の沖縄振興の基盤を担う人材を育成・輩出するため、高等教育を受ける機会の創出等に取り組んでまいります。
就学援助を必要とする児童生徒に支援が届くよう、制度の周知広報を図るとともに、制度の充実を促進してまいります。
 また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置等により、いじめ、不登校、深夜はいかい等の未然防止、早期発見及び早期解決に取り組みます。
 今年4月から県立高等学校3校に軽度知的障害を対象とした併設型の高等支援学校を開校し、特別支援教育のさらなる充実を図ってまいります。
特色ある教育を実践し、個性豊かな人材育成に貢献している私立学校を支援し、私学教育の充実、多様な人材の育成を図ります。
 子どもの健やかな成長を育む「やーなれー」事業を推進するとともに、地域住民等の参画による学習補助や学校支援、子どもたちの放課後の安全・安心な居場所づくりなど、家庭教育の充実を図ります。
 また、離島等図書館未設置町村における移動図書館の実施等により読書環境の充実を図るとともに、「知の拠点」となる新県立図書館の整備を進めます。
 米国や欧州、アジア諸国など、海外への短期研修及び海外留学に高校生や大学生等を派遣するなど、継続してグローバル人材の育成に取り組みます。
 「平成31年全国高等学校総合体育大会」が、本県を含む九州南部4県で開催され、沖縄県では、陸上、サッカ一、空手道など7競技8種目が実施されることが決定しました。同大会の開催に向けて、関係市町村や各競技団体等と連携し取り組みを進めます。

翁長知事の施政方針(6)

 第2は、沖縄の「幸せ」を拓く―生活充実プラン―の視点であります。

 「地域力の向上・くらしの向上』について申し上げます。
 県民一人ひとりがボランティア、NPO活動などへ主体的に参加できる仕組みづくりや、県民や地域組織、企業等の多様な主体が連携した取組を促進します。
 働く全ての人が輝ける職場環境の整備を目指し、県が率先して仕事と生活の両立支援、子育てに優しい職場づくりに取り組むとともに、市町村等と連携して、女性が輝く社会づくりに取り組みます。
 県内全市町村で構成する沖縄県移住受入協議会での活動を通し、移住者受入に取り組む市町村の創意工夫を支援するとともに、県外都市部における移住フェアの開催など、Uターン者や移住者の持続的受入に向けた取組を積極的に推進します。
 モノレール旭橋駅周辺地区市街地再開発について、平成30年度の事業完了を目指したバスターミナルを含む北工区の整備を支援してまいります。

 「美ら島の自然環境保全」について申し上げます。
 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の世界自然遺産登録に向け、国、市町村等と連携し、やんばる地域及び西表島における希少種等の保護や外来種対策など、自然環境の保全に取り組みます。
 沖縄県自然環境再生指針を踏まえた自然環境再生モデル事業や、サンゴ礁保全に向けたオニヒトデ対策などに取り組み、自然環境の保全・再生・適正・利用を図ります。
 また、昨年9月にハワイで締結した「グリーンアイランドパートナーシップ設立に関する合意書」に基づき、米国ハワイ州及び韓国済州特別自治道と協力し、島嶼地域が直面する環境に関する課題解決等に向け取り組みます。
 生物多様性保全上重要な情報収集・調査研究・教育普及の拠点となる「国立自然史博物館」の誘致について、取組を進めます。
 また、絶滅が危倶されるジュゴンの生息状況等の調査を継続し、保護施策のあり方等、希少生物の保全に向けた取り組みを推進します。
 亜熱帯の特性を活かした沖縄らしい景観や環境共生型社会の形成を目指した取組を進めるとともに、緑化施策を充実し、全島緑化を推進します。
 また、公共関与による産業廃棄物管理型最終処分場の平成31年度供用開始を目指し、工事に着手します。

 「誇り高きウチナー文化の普及促進」について申し上げます。
 中期「しまくとぅば」普及推進行動計画に基づき、人材の養成や活用のコーディネートなど、中核的な機能を果たす「しまくとぅば普及センター(仮称) 」 を平成29年度に設置し、市町村、学校、団体等と連携のもと、県民への普及促進、次世代への継承に取り組みます。
 組踊、琉球舞踊、沖縄芝居などの伝統文化や、染織物、陶器、漆器などの伝統工芸の後継者育成に取り組むとともに、国内外への発信力の強化を図ります。
 また、県産工芸品の市場ニーズに対応した製品開発等に取り組み、普及や販路拡大を図ります。
 沖縄の歴史文化の核となってきた指定文化財の保護に努めるとともに、「沖縄県史」及び「歴代宝案」の編集刊行に取り組みます。

 「健康福祉社会の実現』について申し上げます。
 2040年までに平均寿命日本一を取り戻すため、次世代や働き盛り世代の健康づくりのさらなる拡大や、健康づくりを担う人材の育成を図るなど、引き続き健康長寿復活プロジェクトを推進します。
 また、栄養指導等の健康づくりを推進するため、管理栄養士の養成などに取り組みます。
 民生委員・児童委員の充足率向上と活動の活性化を図るとともに、適切な福祉サービスが利用できる体制を推進します。
生活困窮者の相談支援体制の更なる充実、地域における関係機関とのネットワークのより一層の強化に取り組みます。
 平成29年度から本格的に施行される新しい社会福祉法人制度について、市町村等の関係機関と連携しながら、社会福祉法人の経営組織のガバナンスの強化、事業運営の透明性の向上等を促進します。
 障害のある人に対する誤解や偏見等をなくす取組を充実させるとともに、地域生活への移行の促進、社会参加、就労支援等の地域生活支援を行います。

翁長知事の施政方針(5)

 「産業の振興と雇用の創出・安定』について申し上げます。
 国際情報通信ハブの形成を目指し、沖縄と首都圏、アジアを直結する高速通信基盤等を活用したアジアとの双方向ビジネスの展開を支援します。
 また、サイバーセキュリティをはじめ、先進的なIT技術を活用した研究開発等や、他産業との連携による付加価値の高いサービスの創出、高度IT人材の育成を促進します。
国際物流拠点の形成に向けて、国際航空物流や海上物流の拡充を進めるとともに、これらの優れた機能を活用するグローバル企業等の集積を促進し、併せて商流ネットワークの構築に取り組みます。
 また、全国の優れた特産品を迅速にアジアへ届ける流通プラットフォームの構築を推進するとともに、事前マッチング型商談会としては、国内最大級の「第4回沖縄大交易会」を民間と共同で開催します。
 「沖縄科学技術振興ロードマップ」に基づき、沖縄科学技術大学院大学琉球大学及び沖縄工業高等専門学校を核とした産学官連携によるリーディングプロジェクトの創出や人材育成・確保の支援体制の構築を図り、新事業・新産業を創出する国際的な知的・産業クラスターの形成を推進します。
 再生医療や疾患ゲノムの研究開発を通じて先端医療技術の研究基盤を強化するとともに、感染症分野の研究開発や国際会議の開催等に取組み、国際的な先端医療及び感染症研究の拠点形成を推進してまいります。
 また、沖縄の生物資源や地理的優位性等を活かした医薬品、医療機器、機能性食品等の研究開発及び事業化を推進します。
 企業誘致については、国際物流拠点産業集積地域や、情報通信産業振興地域、経済金融活性化特別地区等の特区や各種税制優遇措置等を活用するとともに、航空機整備施設等のインフラ整備を促進し、アジア市場にビジネスを展開する産業等の集積に取り組みます。
 沖縄物産フェアの拡充や県内企業の販路開拓の支援等により、県産品の県外、アジア市場への販路拡大・販売促進に努めます。
 さらに、海外ネットワークを有効に活用し、観光誘客、県産品の海外展開、投資誘引等、戦略的な施策を展開します。
 県内ものづくり産業の振興については、サポーティング産業の強化を図るとともに、産学官・企業間連携の推進、高度技術の開発、戦略的製品の開発などに取り組みます。
泡盛などの県外展開による販売促進や需要喚起などの取組を引き続き支援するとともに、経営基盤の強化などが有効に図られるよう、酒類業界との連携に努めます。
 中小企業・小規模事業者の支援については、市町村や関係機関と緊密に連携し、経営革新や創業の促進、経営基盤の強化、資金調達の円滑化など、総合的に取り組みます。
また、好調な観光客の消費需要を着実に取り込み、県内商業の活性化に取り組みます。
クリーンエネルギーの推進については、米国ハワイ州との協力事業を推進し、海洋エネルギーをはじめ、沖縄の地域特性を活かした再生可能エネルギーの普及拡大を図るとともに、島嶼型のエネルギー技術開発や、関連企業の海外展開及び国際貢献を促進します。
 雇用の安定については、若年者等の離職率の高さや求人と求職のミスマッチ等の課題に引き続き取り組んでまいります。
 雇用の質の改善については、優れた人材育成の取組を行っている企業の認証制度のさらなる活用を促進するとともに、ワーク・ライフ・バランスの推進、従業員の正規雇用化など、働きやすい環境づくりに取り組む企業に対し、各種支援施策を展開します。

 「農林水産業の振興』について申し上げます。
 沖縄の地域特性を活かした農林水産業の振興については、戦略品目による拠点産地の形成、生産基盤の整備、6次産業化のほか、「地理的表示保護制度」の活用などにより、さらなるブランド化を推進するとともに、アジアなどへの海外輸出、販路開拓に積極的に取り組みます。
 また、島嶼県における流通条件の不利性の負担を軽減するため、引き続き輸送コスト低減対策を推進するとともに、中央卸売市場における物流対策の強化を図ります。
農地利用については、農地中間管理機構を通じて、新規就農者や法人経営体等担い手の農地利用拡大に取り組みます。
 畜産業については、経営基盤の強化を実施するとともに、安全・安心な県産食肉等の流通体制の強化を図るため、HACCP (ハサップ)基準に対応した食鳥処理施設の整備に取り組みます。
 水産業については、新規漁業就業者を対象とした漁具等の漁業経費の支援等を実施し、漁業就業者の確保・育成に取り組みます。
 また、漁船が自由かつ安全に操業できる漁場を確保するため、ホテル・ホテル訓練区域における使用制限の解除対象水域の拡大及び対象漁業の拡充を求めてまいります。
 日台漁業取決めの影響緩和のための基金を活用し、漁業者の安全操業の確保や水産経営の安定化など、水産業の振興に取り組みます。

翁長知事の施政方針(4)

 Ⅱ 平成29年度の施策の概要について
 次に、平成29年度における施策の概要について、御説明申し上げます。

 第1は、沖縄の「経済」を拓く―経済発展プラン―の視点であります。

 「自立経済発展資源の創出」について申し上げます。
 「沖縄県アジア経済戦略構想」の実現に向けて、海外事務所や民間との連携強化をはじめ関連施策を効果的、効率的に展開してまいります。
具体的には、昨年12月に締結した福建省との経済連携を踏まえ、県産品等を、福建省を通じて中国に輸出することにより課題を抽出し、通関の簡素化・迅速化等に向けた取組を進めます。
 また、自然環境、文化資源、スポーツ、農林水産物をはじめとする産業資源の高付加価値化を促進し、各産業分野において沖縄ブランドの確立を図ります。

 「社会資本・産業基盤の整備」について申し上げます。
 那覇空港の滑走路増設事業を促進するとともに、増大する旅客需要に対応するため国内線と国際線ターミナルビルを連結する施設の増築を促進するなど、ターミナル機能の拡充・強化を図ってまいります。
 那覇港については、総合物流センターの整備を推進します。
 中城湾港については、航路の拡充や産業支援港湾整備を着実に進めるとともに、クルーズ、船の受け入れについても積極的に取り組みます。
 本部港については、物流、人流機能の更なる向上を図るとともに、大型クルーズ船に対応する岸壁等の整備を推進します。
 幹線道路網については、那覇空港自動車道及び沖縄西海岸道路の整備を引き続き促進するとともに、南部東道路等の整備を推進し、本島南北軸・東西軸を結ぶハシゴ道路ネットワークの早期構築に取り組みます。
 また、大型MICE施設へのアクセスを円滑にする県道浦添西原線の整備を推進します。
 沖縄都市モノレール首里駅から沖縄自動車道(西原入口)までの延長整備を推進し、平成31年春の開業を目指します。あわせて、石嶺駅の先行開業について、引き続き検討を進めます。

 「沖縄らしい観光リゾート地の形成」について申し上げます。
 沖縄のソフトパワーを活用した世界水準の観光リゾート地の形成に取り組み、平成33年度までに観光収入1兆円超、入域観光客数1,000万人超の達成を目指します。
 来月、我が国で初めて、沖縄で開催されるアジア最大の航空会社商談会「ルーツアジア」において沖縄のポテンシャルを印象づけ、国際航空路線の更なる拡充を図ってまいります。
 これまでインバウンド需要を取り込むため国外で展開してきた、沖縄観光ブランド「Be.Okinawa (ビーオキナワ) 」について、関係団体等と連携し効果的な推進体制の構築に取り組み、国内においても戦略的に展開します。
自然・歴史・文化など沖縄固有の資源を活用したエコツーリズム農林水産業と連携したグリーン・ツーリズム、ブルー・ツーリズムなどの体験交流型観光を推進するとともに、やんばるの山村資源を持続可能な形で活用する森林ツーリズムの推進体制の構築にも取り組みます。
 2020年東京オリンピックパラリンピック競技大会に向けて、事前キャンプの誘致等、スポーツコンベンションの推進や県出身選手の育成のほか、沖縄県への聖火リレーの誘致、開会式等における沖縄文化・芸能の披露等に向けた取組を推進します。

翁長知事の施政方針(3)

第4に、『内閣府予算案について」申し上げます。
 平成29年内閣府沖縄関係予算案においては、沖縄振興を推進するための経費として3千億円台が確保され、那覇空港の滑走路増設、子どもの貧困対策、駐留軍用地の跡地利用推進などの経費について、引き続き計上されました。
 厳しい国家財政状況の中で、各方面の御尽力により、離島地域の活性化や産業イノベーションの創出に係る事業などが、新たに計上されたところであります。
 沖縄県としては、沖縄振興予算の更なる効果的な活用を図るため、沖縄振興一括交付金の執行体制を強化するなど、沖縄の振興に取り組んでまいります。

翁長知事の施政方針(2)

 第3に、「今後の沖縄振興に向けた取組について」申し上げます。
 平成29年度は、沖縄21世紀ビジョン基本計画の中間評価を踏まえ、残された課題や社会経済情勢等の変化により明らかとなった新たな課題の解消を図り、安全で、安心に暮らせる沖縄らしい優しい社会を創りあげ、好況が続く経済をより高い次元へと進化させていくための第一歩となる重要な年であります。
 私は、沖縄がもつ地域力、文化力、伝統力、人間力、自然力、離島力、共生力、経済力などのソフトパワーが子や孫の世代まで大切に引き継がれ、未来を拓くエンジンとして十二分に活かされ続けていくことが、きわめて重要であると認識しており、このような考え方の下、「経済発展」、「生活充実」 、「平和創造」の3つの視点から、施策を展開してまいります。
 「経済発展」については、まず、「アジア経済戦略構想推進計画」に基づく取組の具体化を一層推進します。その一環として、アジア経済戦略課に「戦略推進室」を設置し、推進体制の強化を図ります。併せて、昨年11月の「沖縄県アジア経済戦略構想推進・検証委員会」による提言も踏まえ、スピード感を持って、成長著しいアジアのダイナミズムと連動した観光リゾート産業や情報通信関連産業などのリーディング産業の拡充・強化、国際物流拠点の形成等を推進し、平成33年度の目標である県内総生産5兆1千億円の達成や県民所得の向上に向けて取り組んでまいります。
 平成32年度の供用開始を目指し、本島東海岸地域の振興に資する大型MICE施設を、民間活力を導入して整備を進めるとともに、沖縄観光に「ビジネスリゾート」という新機軸を打ち出し、産学官と連携したMICE関連産業の創出に取り組みます。
ITの活用による沖縄の産業全体の国際競争力を高めるため、「IT戦略センター準備室」を立ち上げ、長期的な成長戦略を構築する官民一体となった「沖縄IT産業戦略センター(仮称)」の、平成30年度の設置に向けて取り組みます。
 平成30年沖縄県で初めて開催する「第56回技能五輪全国大会、第38回全国アビリンピック」の成功に向けて、実施計画の策定や選手の育成など、着実に準備を進め、青年技能者の育成や障害を持つ方々の職業能力の向上と雇用の促進を図ります。
 また、那覇港において最大22万トン級の大型クルーズ船に対応した港湾整備を促進し、国際交流・物流機能の強化を図るとともに、那覇空港へ建設する航空機整備施設の平成30年度の供用開始を目指し、航空関連産業クラスターの形成を図ります。
鉄軌道を含む新たな公共交通システムについては、構想段階における計画案を策定し、併せて特例制度の創設や事業化に向けた取組を進めます。
 「生活充実」については、「しまくとぅば」をはじめとするウチナ一文化の普及継承をさらに推進してまいります。沖縄伝統空手・古武道を保存・継承・発展させるため「空手振興ビジョン(仮称) 」を策定するとともに、「第1回沖縄空手国際大会」の平成30年8月開催に向けた取組を進めるなど、沖縄空手会館を拠点に、世界中に1億人いるともいわれる空手愛好家の受け入れ体制の強化や交流拡大を図り、「空手発祥の地・沖縄」を世界に向けて強力に発信してまいります。
 また、平成32年度供用開始に向けて「工芸の杜(仮称) 」の整備に取り組みます。
 子どもの貧困対策については、昨年11月に、「子ども未来政策課」を新設し体制を強化しました。「沖縄県子どもの貧困対策推進基金」を活用し、市町村における子どもの学びと育ちを支援するとともに、国と連携し、子どもの貧困対策支援員の配置や居場所づくり等に取り組みます。また、国・県・市町村や関係団体等で構成する「沖縄子どもの未来県民会議」を中心に、児童養護施設退所児童等への大学等進学に必要な授業料等の給付を拡大するなど、県民運動として子どもの貧困問題の解消に向けて取り組んでまいります。
 また、「黄金(くがに)っ子応援プラン」 に基づき、市町村が実施する保育所整備や、認可外保育施設の認可化を支援するとともに、保育士の確保に努め、平成29年度末までの待機児童の解消に向けて取り組みます。
 心理的に不安定で、社会生活への適応が困難な児童に心理治療等を行う「情緒障害児短期治療施設」の平成30年4月開所に向けて、必要な施設整備を支援し、要保護児童等に対する支援の充実を図ります。
 今年4月に「中央児童相談所宮古分室」を新たに開設し、宮古島市及び関係機関と連携し、離島における迅速な児童虐待対応体制の強化を図ります。
また、「医療政策課」及び「地域保健課」を設置し、地域医療構想の実現や健康長寿おきなわの復活に向けた取組の強化を図ります。
 沖縄の「離島力」の向上に向けて、下地島空港については、離島振興及び沖縄県の経済発展に資するよう、利活用事業の実施に向け引き続き取り組んでまいります。また、離島の重要性や魅力に対する認識を深める「島あっちぃ事業」について、対象離島や派遣人数を拡充するなど、離島地域の活性化等を図ってまいります。
 きめ細やかな教育指導が可能となる少人数学級を小学5年生まで拡大し、学校教育の充実に取り組みます。
 平成28年度に開始した給付型奨学金の取組を着実に実施し、経済的に進学が困難な生徒の県外難関大学等への進学を支援してまいります。
また、公立、私立を問わず県内の高等学校1年生を対象に海外渡航予定者のパスポート取得を支援し、グローバル人材の育成をさらに推進します。
 那覇市内への新たな特別支援学校の設置については、平成33年度開校に向けて取組を進め、障害のある児童生徒の教育の充実を図ります。
 平成31年度に沖縄県平和創造の森公園等を会場として開催される「第43回全国育樹祭」の成功に向けて、万全の体制で準備を進め、花と緑あふれる県土づくりに取り組みます。
 「平和創造」については、昨年の「第6回世界のウチナーンチュ大会」において、10月30日を「世界のウチナーンチュの日」として定めました。今後、同日を中心とした式典開催などの各種取組により、ウチナーネットワークの継承・発展を一層強化してまいります。
 基地問題については、過重な基地負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、騒音問題や米軍人軍属による犯罪など基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。
 私は、日米安全保障体制の必要性は理解しております。しかしながら、戦後71年を経た今もなお、国土面積の約0.6%である沖縄県に70.6%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがありません。日本の安全保障は、日本国民全体で真剣に考えるべきであります。このような沖縄県の主張をうけ、全国知事会に「米軍基地負担に関する研究会」が設置されるなど、国内外において、理解が広がりつつあり、心強く感じているところであります。こうした取り組みにより、日米安全保障体制や沖縄の米軍基地負担の実情等についてさらに理解を広げ、過重な基地負担の軽減につながるよう全力で取り組んでまいります。
 普天間飛行場の移設については、引き続き建白書の精神に基づき、辺野古の新基地建設に反対し、県外移設を求めてまいります。
 平成29年度の県政運営にあたっては、「アジア経済戦略構想の実現」、「すべての人が希望を持ち安心して暮らせる社会の実現」、「地方創生の推進」、「健康長寿おきなわの復活」、「安全・安心・安らぎの確保」の5項目を「重点テーマ」として、沖縄振興を力強く推進する施策に取り組んでまいります。
 私は、郷土沖縄を愛する心と既存の価値観にとらわれることのない柔軟な発想、向上心をもって、持てる能力が最大限発揮される県庁づくりを進め、限りある行政資源の下で、より大きな成果を上げる行財政運営に努めてまいります。