翁長知事の施政方針(2)

 第3に、「今後の沖縄振興に向けた取組について」申し上げます。
 平成29年度は、沖縄21世紀ビジョン基本計画の中間評価を踏まえ、残された課題や社会経済情勢等の変化により明らかとなった新たな課題の解消を図り、安全で、安心に暮らせる沖縄らしい優しい社会を創りあげ、好況が続く経済をより高い次元へと進化させていくための第一歩となる重要な年であります。
 私は、沖縄がもつ地域力、文化力、伝統力、人間力、自然力、離島力、共生力、経済力などのソフトパワーが子や孫の世代まで大切に引き継がれ、未来を拓くエンジンとして十二分に活かされ続けていくことが、きわめて重要であると認識しており、このような考え方の下、「経済発展」、「生活充実」 、「平和創造」の3つの視点から、施策を展開してまいります。
 「経済発展」については、まず、「アジア経済戦略構想推進計画」に基づく取組の具体化を一層推進します。その一環として、アジア経済戦略課に「戦略推進室」を設置し、推進体制の強化を図ります。併せて、昨年11月の「沖縄県アジア経済戦略構想推進・検証委員会」による提言も踏まえ、スピード感を持って、成長著しいアジアのダイナミズムと連動した観光リゾート産業や情報通信関連産業などのリーディング産業の拡充・強化、国際物流拠点の形成等を推進し、平成33年度の目標である県内総生産5兆1千億円の達成や県民所得の向上に向けて取り組んでまいります。
 平成32年度の供用開始を目指し、本島東海岸地域の振興に資する大型MICE施設を、民間活力を導入して整備を進めるとともに、沖縄観光に「ビジネスリゾート」という新機軸を打ち出し、産学官と連携したMICE関連産業の創出に取り組みます。
ITの活用による沖縄の産業全体の国際競争力を高めるため、「IT戦略センター準備室」を立ち上げ、長期的な成長戦略を構築する官民一体となった「沖縄IT産業戦略センター(仮称)」の、平成30年度の設置に向けて取り組みます。
 平成30年沖縄県で初めて開催する「第56回技能五輪全国大会、第38回全国アビリンピック」の成功に向けて、実施計画の策定や選手の育成など、着実に準備を進め、青年技能者の育成や障害を持つ方々の職業能力の向上と雇用の促進を図ります。
 また、那覇港において最大22万トン級の大型クルーズ船に対応した港湾整備を促進し、国際交流・物流機能の強化を図るとともに、那覇空港へ建設する航空機整備施設の平成30年度の供用開始を目指し、航空関連産業クラスターの形成を図ります。
鉄軌道を含む新たな公共交通システムについては、構想段階における計画案を策定し、併せて特例制度の創設や事業化に向けた取組を進めます。
 「生活充実」については、「しまくとぅば」をはじめとするウチナ一文化の普及継承をさらに推進してまいります。沖縄伝統空手・古武道を保存・継承・発展させるため「空手振興ビジョン(仮称) 」を策定するとともに、「第1回沖縄空手国際大会」の平成30年8月開催に向けた取組を進めるなど、沖縄空手会館を拠点に、世界中に1億人いるともいわれる空手愛好家の受け入れ体制の強化や交流拡大を図り、「空手発祥の地・沖縄」を世界に向けて強力に発信してまいります。
 また、平成32年度供用開始に向けて「工芸の杜(仮称) 」の整備に取り組みます。
 子どもの貧困対策については、昨年11月に、「子ども未来政策課」を新設し体制を強化しました。「沖縄県子どもの貧困対策推進基金」を活用し、市町村における子どもの学びと育ちを支援するとともに、国と連携し、子どもの貧困対策支援員の配置や居場所づくり等に取り組みます。また、国・県・市町村や関係団体等で構成する「沖縄子どもの未来県民会議」を中心に、児童養護施設退所児童等への大学等進学に必要な授業料等の給付を拡大するなど、県民運動として子どもの貧困問題の解消に向けて取り組んでまいります。
 また、「黄金(くがに)っ子応援プラン」 に基づき、市町村が実施する保育所整備や、認可外保育施設の認可化を支援するとともに、保育士の確保に努め、平成29年度末までの待機児童の解消に向けて取り組みます。
 心理的に不安定で、社会生活への適応が困難な児童に心理治療等を行う「情緒障害児短期治療施設」の平成30年4月開所に向けて、必要な施設整備を支援し、要保護児童等に対する支援の充実を図ります。
 今年4月に「中央児童相談所宮古分室」を新たに開設し、宮古島市及び関係機関と連携し、離島における迅速な児童虐待対応体制の強化を図ります。
また、「医療政策課」及び「地域保健課」を設置し、地域医療構想の実現や健康長寿おきなわの復活に向けた取組の強化を図ります。
 沖縄の「離島力」の向上に向けて、下地島空港については、離島振興及び沖縄県の経済発展に資するよう、利活用事業の実施に向け引き続き取り組んでまいります。また、離島の重要性や魅力に対する認識を深める「島あっちぃ事業」について、対象離島や派遣人数を拡充するなど、離島地域の活性化等を図ってまいります。
 きめ細やかな教育指導が可能となる少人数学級を小学5年生まで拡大し、学校教育の充実に取り組みます。
 平成28年度に開始した給付型奨学金の取組を着実に実施し、経済的に進学が困難な生徒の県外難関大学等への進学を支援してまいります。
また、公立、私立を問わず県内の高等学校1年生を対象に海外渡航予定者のパスポート取得を支援し、グローバル人材の育成をさらに推進します。
 那覇市内への新たな特別支援学校の設置については、平成33年度開校に向けて取組を進め、障害のある児童生徒の教育の充実を図ります。
 平成31年度に沖縄県平和創造の森公園等を会場として開催される「第43回全国育樹祭」の成功に向けて、万全の体制で準備を進め、花と緑あふれる県土づくりに取り組みます。
 「平和創造」については、昨年の「第6回世界のウチナーンチュ大会」において、10月30日を「世界のウチナーンチュの日」として定めました。今後、同日を中心とした式典開催などの各種取組により、ウチナーネットワークの継承・発展を一層強化してまいります。
 基地問題については、過重な基地負担の軽減を図るため、基地の整理縮小をはじめ、日米地位協定の抜本的な見直し、騒音問題や米軍人軍属による犯罪など基地から派生する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。
 私は、日米安全保障体制の必要性は理解しております。しかしながら、戦後71年を経た今もなお、国土面積の約0.6%である沖縄県に70.6%の米軍専用施設が存在する状況は、異常としか言いようがありません。日本の安全保障は、日本国民全体で真剣に考えるべきであります。このような沖縄県の主張をうけ、全国知事会に「米軍基地負担に関する研究会」が設置されるなど、国内外において、理解が広がりつつあり、心強く感じているところであります。こうした取り組みにより、日米安全保障体制や沖縄の米軍基地負担の実情等についてさらに理解を広げ、過重な基地負担の軽減につながるよう全力で取り組んでまいります。
 普天間飛行場の移設については、引き続き建白書の精神に基づき、辺野古の新基地建設に反対し、県外移設を求めてまいります。
 平成29年度の県政運営にあたっては、「アジア経済戦略構想の実現」、「すべての人が希望を持ち安心して暮らせる社会の実現」、「地方創生の推進」、「健康長寿おきなわの復活」、「安全・安心・安らぎの確保」の5項目を「重点テーマ」として、沖縄振興を力強く推進する施策に取り組んでまいります。
 私は、郷土沖縄を愛する心と既存の価値観にとらわれることのない柔軟な発想、向上心をもって、持てる能力が最大限発揮される県庁づくりを進め、限りある行政資源の下で、より大きな成果を上げる行財政運営に努めてまいります。

翁長知事の施政方針(1)

 2月15日、沖縄県議会2月定例会が開会した。翁長知事は、2017年度一般会計予算などを議会に提案し、その趣旨説明を行った。趣旨説明ということにはなっているが施政方針演説といってもいい、中身の濃いものであった。翁長県政の2年間をきちんとみるうえで欠かせないと思うので、以下にその全文を紹介したい。
 宮古島市長選、浦添市長選と続けて、翁長知事が支持する候補が敗れ、翁長知事の2年後の再選が危うくなって来ているなどという論評も出ている。しかし、これは皮相的だ。
 菅官房長官は、「辺野古でのコンクリートブロック投下が浦添市長選でマイナスの影響を与えることはなかった」といっているが、市政刷新を訴えた候補が、どれほど辺野古新基地や那覇軍港の浦添移設について市民に語り掛けたか。参院選で発揮したオール沖縄の強みが見られなかったのは、そのあたりに起因しているのではないか。
 翁長知事の2年間の実績は、県民のよりどころである。これまで以上に厳しいたたかいになるであろう「第2ステージ」では、なぜ県民が団結するのかということを繰り返し確認することになるだろう。もちろん、辺野古の宝の海を守ること、しかしそれだけではない。「誇りある豊かさ」を求めてきた2年間の前進という宝をさらに大きくすること、これらにたいする確信が大きなとりでになると思う。

 

<2017年2月定例沖縄県議会での翁長雄志知事提案説明要旨>

I はじめに
 ハイサイ、グスーヨ一、チューウガナビラ。
 平成29年第1回沖縄県議会の開会にあたり、まず県政運営にあたっての私の所信の一端を申し述べ、県議会並びに県民の皆様の御理解と御協力を賜りたいと存じます。

 第1に、「県政運営に取り組む決意について」申し上げます。
 県知事就任から2年余りが経過しましたが、この間、基地問題をはじめ、経済や文化、教育、福祉、保健医療など、様々な分野の課題に全力で取り組んでまいりました。
 基地問題については、県民の過重な基地負担の軽減を実現するべく、公約の着実な実現に向けて取り組んでおり、特に、辺野古に新基地は造らせないということを引き続き県政運営の柱に、全力で取り組んでまいります。
同時に、世界一危険とも言われる普天間飛行場の固定化は絶対に許されないと考えており、5年以内の運用停止を含めた危険性の除去について、政府に強く求めてまいります。
 経済面では、昨年3月に策定した「沖縄県アジア経済戦略構想推進計画」を着実に推進し、沖縄の経済産業の成長を実現してまいります。私は、知事就任以来、近隣諸外国、各地域へのトップセールスを積極的に展開する中で、各地の経済界関係者における沖縄への関心や期待の高さを実感しているところであります。昨年12月には、沖縄県福建省との経済交流促進に係る覚書も締結することができました。アジアの巨大なマーケットの中心に位置する地理的優位性と、沖縄が誇るソフトパワーなどの強みを活かし、各地の期待に応えるものを作り上げ、県経済の発展及び県民生活の向上につなげてまいります。
 また、しまくとぅばをはじめとするウチナー文化の普及継承、子どもの貧困問題の解消、沖縄全体の底上げにつながる離島の振興などは、沖縄の未来を築いていくために重要であり、引き続き積極的に施策を展開してまいります。
 私が先の知事選挙において掲げた公約については、ほぼ全てに着手できたところであります。
 完全失業率や有効求人倍率、小中学校の全国学力・学習状況調査における全国平均との差など改善の傾向が顕著な指標も出てきており、県政運営の成果は着実にあがりつつあります。
 しかしながら、課題は未だ山積しております。
 今後とも、関係各方面と丁寧に対話を重ね、沖縄県のさらなる飛躍と県民福祉の向上に向け、全力で県政運営に取り組み、「誇りある豊かさ」を実現してまいります。

 第2に、『沖縄を取り巻く現状の認識について』申し上げます。
国際社会においては、グローバル化が急速に進行する一方で、国際テロリズムや地域紛争に伴う難民の発生などが大きな課題となっております。また、情報通信技術の急激な進化と普及による「第4次産業革命」を迎える中、世界的に産業構造や社会環境の激変が生じており、沖縄県においても、この変革への対応が求められる状況にあります。また、本年1月に誕生した米国新政権の動向についても、世界中が注目しているところです。
 我が国においては、政府の平成29年度の経済見通しによりますと、雇用・所得環境が引き続き改善し、民需を中心とした景気回復が見込まれております。また、高齢化を伴う人口減少の時代を迎え、地方創生に向けた取組が引き続き全国各地で推進されております。
 沖縄県内の経済は、観光関連指標が前年を上回るなど、景気は全体として拡大しております。
 平成28年の入域観光客数は約861万人、うち外国人客が約208万人と4年連続で過去最高を更新し、観光収入は約6千億円、関連産業を含めた経済波及効果は1兆円を超えました。アジア各地との聞の直行便数も平成24年3月末の週49便から本年1月末には週175便と大幅に伸びており、那覇空港における国際貨物取扱量も着実に増加しております。
また、県外及び外資系企業による新たなリゾートホテルなどの進出も続いております。
情報通信関連産業についても、雇用者数は4万人を超え、生産額は4千億円を突破しました。
  年平均の完全失業率は、平成27年の5.1%から平成28年は4.4%と改善し、有効求人倍率については、年平均では復帰後最高値を更新し続け、直近の平成28年12月においても1.02倍と、雇用情勢は着実に好転しております。
  その一方で、求人と求職のミスマッチの解消、若年者等の高い離職率や、従業員の正規雇用化などの雇用の質の改善、県民所得の向上などが継続的な課題となっております。また、沖縄県の子どもの貧困率は29.9%と深刻な状況にあり、貧困の世代間連鎖の防止など、課題の解決に向けて全力で取り組んでまいります。
   周辺諸国との関係については、尖閣諸島の周辺水域を巡る状況を踏まえ、宮古八重山地域を始め、県民の平穏な生活環境及び県内漁業者の安全確保に向けて、国に要請するとともに、国の関係機関との連携を強化しているところです。国においては、関係改善に向けた取組も模索されており、沖縄県としても、文化や経済など多面的な分野の交流を通じ、諸国民との信頼の構築を図り、地域の平和と発展に貢献してまいります。

訪米団帰国 「ぶれずに前に、前に」と知事

  翁長雄志沖縄県知事、稲嶺進名護市長、オール沖縄会議の訪米団がワシントンでの活動を終えて昨夜(2月5日夜)帰国した。那覇空港には、出迎えの市民と取材陣の総勢70人ほどが詰めかけた。
  出迎え式でオール沖縄会議共同代表の呉屋守将氏は「キャピタルヒルの防衛省も、われわれの度重なる要請の前に動きつつあります。けっして3年前と同じではございません」と訪米の手ごたえを語った。「毎日5キロ以上歩き回って、キャピタルヒルの先生方にお訴えをして参りました」と訪米団の連日の奮闘の一端を紹介し、「その効果や必ず実るものがあると思います」と御礼のあいさつをされた。
 翁長知事は、「連日連夜、オール沖縄のみなさんがご一緒して頑張ってきましたけれども、皆さん方のお顔を拝しまして改めて疲れが取れて元気になったような気がいたします」とお礼を述べ、訪米最後の日に国務長官と総理が辺野古が唯一を確認したとのニュースに、「沖縄県民に寄り添う、あるいは誠心誠意、沖縄県民とともに考えていくといいながら、よりによって私たちが訪米行動をしているときに、ぶつけてやる中に、日本政府の焦りと、それを見据えての私たちの決意、私ももっと決意を固めましたので、おそらく多くの県民もその様子を見ながら、これからのたたかいの決意を新たにしていると思います」「これから厳しい、長いものがあります。私もぶれずに前に、前に頑張っていきます」と改めて決意。
  稲嶺進名護市長は、訪米での疲れはあるが、辺野古唯一を振りかざし、6日から海上工事を進める日米政府に抗して「われわれはこれからも突き進んでいかなければいけないという立場にある」と強調し、「本当にこれからということですが、そういう意味では、われわれは諦めるというわけには絶対いきません。これからもみなさんの力をお借りして、われわれも頑張っていきたい」と訴えた。

辺野古での抗議活動にたいする新たな封じ込め

 沖縄防衛局の辺野古での抗議活動にたいする封じ込めが次々に打たれてきている。

 大浦湾の「臨時制限区域」を示すフロート(浮き具)を張る作業が進められているが、この浮き具に支柱を取り付け、支柱についている小さい輪にロープを通している。抗議船やカヌーが立ち入らないようにするために導入した。これを最初に報道したのが産経新聞。おそらく官邸の発案ではないか。産経は沖縄では、ほとんど現場での取材をすることなく、防衛省や官邸の情報で書いているという見方がもっぱらだ。フロートを乗り越える際に、ロープを切断したら「器物損壊」で逮捕することを目論んでいる。実際、海上では「ロープを切断すると器物損壊罪に問われます」と警告していた。

 一昨年まで、カヌー隊のフロート越えに警備側は悩まされていた。拘束しても、キャンプ・シュワブ内などに連行したのち、数時間して解放していた。刑特法違反に問われたのはごくわずかだ。断っておくが、筆者はフロート越えを推奨しているわけではない。ただ今回のように、船やカヌーが触れたことでロープが切れたら、逮捕理由にするという発想に恐ろしさを感じているということだ。

 浮き具だから絶えず波に揺られ、支柱の穴のところでロープはすり減る。切れやすい状態であったり、ひどいときには、抗議船が接触する前からロープが切れていたりするだろう。意図的であれ、事実誤認であれ、ロープが切れている=切断した、となることも起こりうる。

 

 これにつづいて、さらに、報道各社への威嚇といってもいいことも起きている。沖縄防衛局は、次のようなファクスを各社に送り付けたらしい。

 

沖縄県記者クラブ加盟各社各位

 キャンプ・シュワブ沖に設定された臨時制限区域内への許可なき立ち入りについて

 標記臨時制限区域は、陸上施設及び普天間飛行場代替施設の建設に係る区域の保安並びに水陸両用訓練に使用するため、防衛省告示第123号(平成26年7月2日)により、常時立ち入り禁止区域に設定されており、正当な理由なく、標記臨時制限区域に立ち入った場合には、いわゆる刑事特別法第2条の規定に基づき、「一年以下の懲役又は二千円以下の罰金若しくは科料」に処せられます。
 沖縄防衛局は、正当な理由なく、標記臨時制限区域へ立ち入ろうとする者や船舶等を未然に防止するため、標記臨時制限区域の境界を示す灯浮標を設置し、これらの者や船舶等に対しては、当局の警備業務受注者から臨時制限区域のため、立ち入り禁止となっている旨警告を行っているところです。
 先般、報道関係者と思われる方が乗船した船舶が、標記臨時制限区域に許可なく立ち入り、当局の警備業務受注者の警告にも従わない事案が発生しました。
 沖縄県記者クラブ加盟各社におかれましては、標記臨時制限区域に許可なく立ち入ることのないようお願い申し上げます。
                       平成29年1月18日
                   沖縄防衛局総務部報道室長

 

 「報道関係者と思われる方が乗船した船舶が、標記臨時制限区域に許可なく立ち入り、当局の警備業務受注者の警告にも従わない事案が発生し」たと言っているところが、防衛局が一番いいたいところだろう。

 高江のオスプレイパッド建設問題では、地元紙は、北部訓練場内に入った市民から話を聞いて、北部訓練場内の工事がどうなっているかを伝えていた。北部訓練場内に立ち入ることは法令上できない。かといって、中の様子がわからなければ、沖縄県民は声のあげようもなくなってしまう。ドローンで撮影された写真で、どれほど大規模な伐採が行われ、やんばるの森が破壊されているかをようやく知ることができたのである。

 地方自治や沖縄の環境をまもるのにかかせない情報だということと、法令に反した形での情報を扱うかどうかということのはざまで、悩みながらも紙面に掲載していたのだと推察する。県警や沖縄防衛局はそういう報道をこころよく思っていなかったようだが、今回、そのメディア対策を早くもとってきたといえよう。

 

 

400人が集まったキャンプ・シュワブゲート前

 

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 1月5日、名護市辺野古キャンプ・シュワブゲート前で2017年初めての新基地建設反対の大きな集会が開かれた。
 ヘリ基地反対協の安次富浩さんは「こんなに多くの仲間が集まり、最高裁不当判決以降、いよいよ大きな「たたかいが始まるんだという気持ちを新たにして、みなさんと一緒に新しい基地を造らせないたたかいを築いていきたい」とあいさつした。まだ、夜が明けきらない午前7時に400人を超える人々が集まったのだから、その意気や高し、だ。国会議員では、照屋寛徳衆院議員、赤嶺政賢衆院議員、糸数慶子参院議員、伊波洋一参院議員も400人とともに座り込んだ。
 安次富さんは、オスプレイの飛行再開にたいし米軍に何もいえない日本政府の態度を痛烈に批判した。昨年のえとに引っ掛けて、“米軍には何も言わザル”“国民の声には耳を貸さザル”・・・。音声が悪くてはっきり聞き取れなかったが、“こんな政府はお引きトリを”という言葉がつづいたかもしれない。
 さらに「知事は、知事で頑張っている。日米安保にノーの立場ではないから、私たちと考えが少しずれているが、そこを追及しちゃ、ダメ。分かりますよね。団結して、日本政府に立ち向かわなければ」と語りかけた。
 稲嶺進名護市長も「今年は正念場を迎える。民主主義を取り戻すたたかいが沖縄から発せられている」「新基地は造らせないという一点で力をあわせていきたい」と決意を力強く語った。
 島ぐるみ会議からの発言も続いた。うるまの代表は、埋め立て承認撤回を知事が決断できるように各団体や地域で決議をあげてはどうかと提案した。近く役員会議を開いて、議論するということだった。
 情勢が厳しくなると、あれが足りない、これが足りないと、マイナスの要素ばかりに目が行きがちだ。少し前までは、知事にたいする厳しい言葉もずいぶん聞いた。しかし、今日の集会では明らかにトーンが変わった。異論はある、しかし、その違いだけを強調するのでは運動方向が見えにくくなる。考えが違う人にも分かりやすく説明もしくは建設的に提案し、共通認識の形成につとめたい―とまとめてしまえば、きれいごとになるかもしれないが、そういう気持ちが広がっているように思える集会だった。
  どうすれば、辺野古新基地建設を阻止できるか。知事の埋め立て承認撤回決断をという意見、県民大会の開催を、県民投票をやっては・・・さまざまな案が聞かれるが、それら一つ一つについて議論し、意見を集約する、そういう方向に向かうのだろうか。オール沖縄会議や県民会議などの動きに注目したい。

米軍基地から流出したと考えられるPFOS(4)

  • PFOS流出問題に対する政府の対応

 PFOS問題は、国会でも取り上げられた。日本共産党赤嶺政賢衆院議員は2月25日の衆院予算委員会分科会で、北谷浄水場沖縄本島中南部の7市町村を供給先とする県内最大規模の浄水場で「県民の命と健康に関わる重大問題だ」と指摘し、国内で使用が禁止されている有害物質の流出は許されないとして、PFOSの使用中止を求めた。さらに、基地内への立ち入り調査とPFOSの使用中止を米側に働きかけることを政府に求めた。

 赤嶺議員は、「その後、米側からは何の対応策も示されていない」として、政府の基本認識をただすとともに、①PFOSの流出源を特定するために、嘉手納基地内の河川、排水路等からのサンプル採取を認めること、②PFOS含有の泡消火剤の使用の有無と使用頻度・数量を明らかにすること、③航空機や部品等の洗浄剤など、泡消火剤以外のPFOS含有製品の使用の有無と使用している場合の廃液の処理方法を明らかにすること、④PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合の対応策を明らかにすること、⑤過去の泡消火剤の漏出の際に日本側への通報を行わなかった理由を明らかにすること、⑥沖縄県と嘉手納基地の担当者レベルで継続的に調査・協議を行う連絡会議の設置を検討することを求めているが、米側からはいまだに回答が示されていない。ただちに回答を行うよう求めるとともに、米側の回答結果を明らかにされたい―と6点にわたって回答を求めた。

 政府の回答は

 「我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊が、環境保護及び安全のための取組を含め、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきことは当然であると考えている」

 「PFOSについては、化審法第二条第二項に規定する第一種特定化学物質に平成二十二年四月一日に指定され、他の物に代替することが困難である用途を除き、その使用が禁止されているところである。航空機や部品等の洗浄剤や作動油へのPFOSの使用は、当該代替することが困難である用途として認められていない」

というものであった。

 また、沖縄県から沖縄防衛局への照会事項については、「これまで米側に対し早期の回答を求めてきているところであり、回答があり次第、当該回答を同県に提示する考えである」としている。

 

 以上がPFOSに関する日本側と米側のやりとりの経過である。沖縄県がこれほど精力を傾注しても遅々として進まないのが米軍基地問題である。

米軍基地から流出したと考えられるPFOS(3)

  • PFOS問題解決のための調査・協議をおこなう連絡会議の設置を要請

 この米軍の回答書を受けて、県企業局は「疑義がある」として、次の内容の照会をかけた。

 1 企業局施設である嘉手納基地内の井戸群からサンプルを採取するために立ち入ることは、従来から実施していることであり今回の要請において新たに求めているものではありません。PFOSの流出源を特定するために、嘉手納基地内の河川、排水路等からのサンプル採取を認められるかどうか確認願います。

 2 PFOSを含有する泡消化剤を非含有製品に鋭意交換中であるとのことですが、 PFOS含有の泡消化剤を現在も使用しているのか伺います。泡消化剤は頻繁に使用するものでは無いと考えますが使用しているのであれば使用頻度及びその数量を明らかにするよう要請します。

 3 PFOS含有製品について泡消化剤についてのみ言及していますが、その他の用途にPFOS含有製品を使用している実態は無いのか確認願います(例えば航空機や部品等の洗浄剤など)。 また、使用している場合その廃液の処理はどうしているのか、未処理のまま排水溝等に排出していないか併せて確認願います。

 4 PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、消防隊及び漏出対応チームが漏出をせき止めると回答にありますが、現実には大工廻川で高濃度のPFOSが検出されています。どのような対応をとっているのか、今後どのように対応していくのか具体的に回答願います。

 5 PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、合同委員会の定めにより通報をするとありますが、過去の泡消化剤の漏出の際、日本側への通報はありませんでした。この理由を確認願います。

 6 この問題の解決のために、沖縄県と米軍嘉手納基地の担当者レベルで継続的に調査、協議を行う連絡会議の設置を検討願います。

 

 安慶田光男副知事と平良敏昭企業局長は2月22日、嘉手納基地を訪ね、PFOS問題解決に向けて県も交えた協議会の発足などを求めた。これにたいし、 第18施設群司令官のドウェイン・ロビソン大佐は、「上司に報告したい」と述べるにとどまった。同大佐は、個人的には、米軍としても対応が必要だと思ったようだが、通訳に上部との相談が必要だと助言を受けたらしい。

 

  • 県議会で「PFOSの汚染源は米軍基地の可能性」

 2016年2月16日の県議会で日本共産党の西銘純恵県議は、PFOS問題を取り上げ、「嘉手納基地内への立ち入り調査、基地内での使用履歴を明らかにさせるべきだ」と企業局長の見解を聞いた。平良局長は、「汚染源が嘉手納基地内という疑いが濃厚だ。立ち入り調査と履歴照会を文書で要請した。十分な回答が得られなかったため2月22日に安慶田副知事が米軍に申し入れに行き、県と連絡協議会を立ち上げるよう申し入れた」と答弁。

 西銘議員はさらに普天間基地も調査すべきではないかとただした。これにたいし平良局長は「普天間飛行場周辺に企業局の水源はありませんので、本来なら調査しておりませんと答弁したいところでございますけれども、ただ、さる1月21日に企業局が沖縄防衛局を通して米軍に要請した企業局水源において検出された有機フッ素化合物の対策について米軍側の回答が非常に遅かったということもあって念のため補足調査が必要と企業局長の判断と指示で、普天間飛行場に隣接する場所の湧水を1月下旬から今月中旬にかけて計3回に分けて採水し、検査を行った。その採集結果をつい先日受けましたけれども、残念ながら1㍑あたり概ね80ナノグラムのピーホスが3回とも検出されております。これは嘉手納井戸群とほぼ同等の値ということになります。ただあくまでこの調査は補足調査ということで調査ポイントを1カ所に限定していること、調査回数も3回と非常に少ないわけですので、企業局としては、原因をただちに普天間飛行場とするには、可能性はあると思いますが、検討が必要と考えております。住民の不安を払しょくするためには、今後とも継続的・全体的な調査が望まれると考えております」と回答した。

 

  • 防衛局は活性炭取り換え費用補償せよ

 嘉手納基地周辺の河川などから有機フッ素化合物(PFOS)が検出された問題で、県は対策として進めている北谷浄水場の粒状活性炭取り替えの費用を補償するよう、沖縄防衛局に求めていることが2月28日の県議会質問への町田優企業局長の答弁で明らかになった。県企業局は6月、沖縄防衛局に費用補償を求めた。防衛局から7月に「米軍とPFOSなどとの因果関係が確認されておらず、国内でPFOSの水道法上の水質基準が設定されていない中、いかなる補償ができるか検討が必要」と回答があった。