400人が集まったキャンプ・シュワブゲート前

 

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 1月5日、名護市辺野古キャンプ・シュワブゲート前で2017年初めての新基地建設反対の大きな集会が開かれた。
 ヘリ基地反対協の安次富浩さんは「こんなに多くの仲間が集まり、最高裁不当判決以降、いよいよ大きな「たたかいが始まるんだという気持ちを新たにして、みなさんと一緒に新しい基地を造らせないたたかいを築いていきたい」とあいさつした。まだ、夜が明けきらない午前7時に400人を超える人々が集まったのだから、その意気や高し、だ。国会議員では、照屋寛徳衆院議員、赤嶺政賢衆院議員、糸数慶子参院議員、伊波洋一参院議員も400人とともに座り込んだ。
 安次富さんは、オスプレイの飛行再開にたいし米軍に何もいえない日本政府の態度を痛烈に批判した。昨年のえとに引っ掛けて、“米軍には何も言わザル”“国民の声には耳を貸さザル”・・・。音声が悪くてはっきり聞き取れなかったが、“こんな政府はお引きトリを”という言葉がつづいたかもしれない。
 さらに「知事は、知事で頑張っている。日米安保にノーの立場ではないから、私たちと考えが少しずれているが、そこを追及しちゃ、ダメ。分かりますよね。団結して、日本政府に立ち向かわなければ」と語りかけた。
 稲嶺進名護市長も「今年は正念場を迎える。民主主義を取り戻すたたかいが沖縄から発せられている」「新基地は造らせないという一点で力をあわせていきたい」と決意を力強く語った。
 島ぐるみ会議からの発言も続いた。うるまの代表は、埋め立て承認撤回を知事が決断できるように各団体や地域で決議をあげてはどうかと提案した。近く役員会議を開いて、議論するということだった。
 情勢が厳しくなると、あれが足りない、これが足りないと、マイナスの要素ばかりに目が行きがちだ。少し前までは、知事にたいする厳しい言葉もずいぶん聞いた。しかし、今日の集会では明らかにトーンが変わった。異論はある、しかし、その違いだけを強調するのでは運動方向が見えにくくなる。考えが違う人にも分かりやすく説明もしくは建設的に提案し、共通認識の形成につとめたい―とまとめてしまえば、きれいごとになるかもしれないが、そういう気持ちが広がっているように思える集会だった。
  どうすれば、辺野古新基地建設を阻止できるか。知事の埋め立て承認撤回決断をという意見、県民大会の開催を、県民投票をやっては・・・さまざまな案が聞かれるが、それら一つ一つについて議論し、意見を集約する、そういう方向に向かうのだろうか。オール沖縄会議や県民会議などの動きに注目したい。

米軍基地から流出したと考えられるPFOS(4)

  • PFOS流出問題に対する政府の対応

 PFOS問題は、国会でも取り上げられた。日本共産党赤嶺政賢衆院議員は2月25日の衆院予算委員会分科会で、北谷浄水場沖縄本島中南部の7市町村を供給先とする県内最大規模の浄水場で「県民の命と健康に関わる重大問題だ」と指摘し、国内で使用が禁止されている有害物質の流出は許されないとして、PFOSの使用中止を求めた。さらに、基地内への立ち入り調査とPFOSの使用中止を米側に働きかけることを政府に求めた。

 赤嶺議員は、「その後、米側からは何の対応策も示されていない」として、政府の基本認識をただすとともに、①PFOSの流出源を特定するために、嘉手納基地内の河川、排水路等からのサンプル採取を認めること、②PFOS含有の泡消火剤の使用の有無と使用頻度・数量を明らかにすること、③航空機や部品等の洗浄剤など、泡消火剤以外のPFOS含有製品の使用の有無と使用している場合の廃液の処理方法を明らかにすること、④PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合の対応策を明らかにすること、⑤過去の泡消火剤の漏出の際に日本側への通報を行わなかった理由を明らかにすること、⑥沖縄県と嘉手納基地の担当者レベルで継続的に調査・協議を行う連絡会議の設置を検討することを求めているが、米側からはいまだに回答が示されていない。ただちに回答を行うよう求めるとともに、米側の回答結果を明らかにされたい―と6点にわたって回答を求めた。

 政府の回答は

 「我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊が、環境保護及び安全のための取組を含め、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきことは当然であると考えている」

 「PFOSについては、化審法第二条第二項に規定する第一種特定化学物質に平成二十二年四月一日に指定され、他の物に代替することが困難である用途を除き、その使用が禁止されているところである。航空機や部品等の洗浄剤や作動油へのPFOSの使用は、当該代替することが困難である用途として認められていない」

というものであった。

 また、沖縄県から沖縄防衛局への照会事項については、「これまで米側に対し早期の回答を求めてきているところであり、回答があり次第、当該回答を同県に提示する考えである」としている。

 

 以上がPFOSに関する日本側と米側のやりとりの経過である。沖縄県がこれほど精力を傾注しても遅々として進まないのが米軍基地問題である。

米軍基地から流出したと考えられるPFOS(3)

  • PFOS問題解決のための調査・協議をおこなう連絡会議の設置を要請

 この米軍の回答書を受けて、県企業局は「疑義がある」として、次の内容の照会をかけた。

 1 企業局施設である嘉手納基地内の井戸群からサンプルを採取するために立ち入ることは、従来から実施していることであり今回の要請において新たに求めているものではありません。PFOSの流出源を特定するために、嘉手納基地内の河川、排水路等からのサンプル採取を認められるかどうか確認願います。

 2 PFOSを含有する泡消化剤を非含有製品に鋭意交換中であるとのことですが、 PFOS含有の泡消化剤を現在も使用しているのか伺います。泡消化剤は頻繁に使用するものでは無いと考えますが使用しているのであれば使用頻度及びその数量を明らかにするよう要請します。

 3 PFOS含有製品について泡消化剤についてのみ言及していますが、その他の用途にPFOS含有製品を使用している実態は無いのか確認願います(例えば航空機や部品等の洗浄剤など)。 また、使用している場合その廃液の処理はどうしているのか、未処理のまま排水溝等に排出していないか併せて確認願います。

 4 PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、消防隊及び漏出対応チームが漏出をせき止めると回答にありますが、現実には大工廻川で高濃度のPFOSが検出されています。どのような対応をとっているのか、今後どのように対応していくのか具体的に回答願います。

 5 PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、合同委員会の定めにより通報をするとありますが、過去の泡消化剤の漏出の際、日本側への通報はありませんでした。この理由を確認願います。

 6 この問題の解決のために、沖縄県と米軍嘉手納基地の担当者レベルで継続的に調査、協議を行う連絡会議の設置を検討願います。

 

 安慶田光男副知事と平良敏昭企業局長は2月22日、嘉手納基地を訪ね、PFOS問題解決に向けて県も交えた協議会の発足などを求めた。これにたいし、 第18施設群司令官のドウェイン・ロビソン大佐は、「上司に報告したい」と述べるにとどまった。同大佐は、個人的には、米軍としても対応が必要だと思ったようだが、通訳に上部との相談が必要だと助言を受けたらしい。

 

  • 県議会で「PFOSの汚染源は米軍基地の可能性」

 2016年2月16日の県議会で日本共産党の西銘純恵県議は、PFOS問題を取り上げ、「嘉手納基地内への立ち入り調査、基地内での使用履歴を明らかにさせるべきだ」と企業局長の見解を聞いた。平良局長は、「汚染源が嘉手納基地内という疑いが濃厚だ。立ち入り調査と履歴照会を文書で要請した。十分な回答が得られなかったため2月22日に安慶田副知事が米軍に申し入れに行き、県と連絡協議会を立ち上げるよう申し入れた」と答弁。

 西銘議員はさらに普天間基地も調査すべきではないかとただした。これにたいし平良局長は「普天間飛行場周辺に企業局の水源はありませんので、本来なら調査しておりませんと答弁したいところでございますけれども、ただ、さる1月21日に企業局が沖縄防衛局を通して米軍に要請した企業局水源において検出された有機フッ素化合物の対策について米軍側の回答が非常に遅かったということもあって念のため補足調査が必要と企業局長の判断と指示で、普天間飛行場に隣接する場所の湧水を1月下旬から今月中旬にかけて計3回に分けて採水し、検査を行った。その採集結果をつい先日受けましたけれども、残念ながら1㍑あたり概ね80ナノグラムのピーホスが3回とも検出されております。これは嘉手納井戸群とほぼ同等の値ということになります。ただあくまでこの調査は補足調査ということで調査ポイントを1カ所に限定していること、調査回数も3回と非常に少ないわけですので、企業局としては、原因をただちに普天間飛行場とするには、可能性はあると思いますが、検討が必要と考えております。住民の不安を払しょくするためには、今後とも継続的・全体的な調査が望まれると考えております」と回答した。

 

  • 防衛局は活性炭取り換え費用補償せよ

 嘉手納基地周辺の河川などから有機フッ素化合物(PFOS)が検出された問題で、県は対策として進めている北谷浄水場の粒状活性炭取り替えの費用を補償するよう、沖縄防衛局に求めていることが2月28日の県議会質問への町田優企業局長の答弁で明らかになった。県企業局は6月、沖縄防衛局に費用補償を求めた。防衛局から7月に「米軍とPFOSなどとの因果関係が確認されておらず、国内でPFOSの水道法上の水質基準が設定されていない中、いかなる補償ができるか検討が必要」と回答があった。

米軍基地から流出したと考えられるPFOS(2)

  • 米軍の安全宣言で「県も合意」と歪曲情報

 こうしたなか、米太平洋空軍は1月24日付で嘉手納空軍基地内の住民に「水道水は安全だ」と宣言する案内通知を出した。通知では、県企業局が河川や嘉手納基地周辺から高濃度のピーホスを検出した経緯に触れて「米国環境保護庁の水道水の暫定健康勧告値(1リットル当たり200ナノグラム)を十分下回っている」と説明し、「県企業局と嘉手納基地の専門家は、北谷浄水場から給水される水は飲んでも安全であることに合意した」などと述べている。

 これにたいし県企業局の平良敏昭局長は、「何も合意していない」と反発。1月29日、県企業局配水管理課の石新実課長らが沖縄防衛局を訪ね、米軍からピーホス使用状況の回答を早期に得るようあらためて要請した。防衛局の説明によると、嘉手納基地が在日米軍司令部と調整しているため、県が求めた期限に回答が出せていないという。米太平洋空軍の通知で、県企業局と米軍が水道水の安全性を「合意した」との表現について、米軍は「県企業局の認識と一致したとの意味」と説明したという。

 

 ●残っているPFOS含有製品は使うと米軍が回答

 防衛局は、嘉手納基地の第18施設群司令官から2月17日付の回答文書を受けたその内容は、次のとおりである。

 1 この覚書は、平成28年1月21日付けで受理した沖縄防衛局からの質問に対する回答です。沖縄県企業局は、既存の合意に基づいて、引き続き、生産井戸においてサンプルを採取するために嘉手納飛行場へ立ち入ることができます。

 2 日本国の空港を含む、世界の全ての主要空港がそうであるように、嘉手納飛行場は、 過去において、水成膜泡消火薬剤のような有機フッ素化合物 (PFOS)を含む製品を調達していました。PFOS含有の水成膜泡消火薬剤は平成14年まで米国において生産されていましたが、現在は米国や日本国において調達することはできません。第18航空団はほとんどのPFOS含有水成膜泡消火薬剤を取り替えたところであり、今後も、引き続き、残存するPFOS含有水成膜泡消火薬剤を非PFOS含有製品に取り替える作業を実施します。

 3 嘉手納飛行場は、水成膜泡消火薬剤といった製品については、業界の標準的な慣行に従って使用しています。PFOS含有の可能性のある物質が漏出した場合、嘉手納飛行場消防隊及び漏出対応チームが積極的にその漏出をせき止め、環境にさらされる危険を抑えます。そのような場合、米側当局は、現行の合同委員会合意の定めるところにより通報をします。そうした場合の現地視察とサンプリングのための立入については、平成27年の日米合同委員会合意「環境に関する協定について」により決定されます。

 沖縄防衛局企画部の宮川均次長が2月18日に県庁を訪れ、県企業局の平良敏昭局長に回答書が届いたと報告した。

 平良局長は、残っているから使うというのは認められないとして、使用中止を求めた。

 この県の主張はごく当然である。むしろ、防衛局が米側に対して、県と同じように日本の法令を遵守するよう提起しないことが問題で、防衛局という機関が日本国民の生活を守る立場にまったくないことを示すものである。

 

米軍基地から流出したと考えられるPFOS(1)

 沖縄県環境部は2016年12月17日、「有機フッ素化合物環境中実態調査結果について(中間報告)」を発表した。
 今年1月18日に県内の河川の一部で有機フッ素化合物(PFOS)が検出されたことを県企業局が公表。国内では原則使用禁止となっているPFOSが米軍基地から流出している可能性があることから、県環境部が、普天間基地周辺や那覇空港など35地点での測定を行うことになった。
 8月から9月に採取した夏季の水質調査の結果では、普天間基地周辺で、米国環境保護庁が設定した飲料水に関する生涯健康勧告値を超えたところが3カ所確認された。
      普天間基地・チュンナガー 1200ng/L
      普天間基地・ヒヤカーガー180ng/L
      普天間基地・メンダカリヒージャーガー680ng/L
 これらの地域で地下水を利用して栽培されている農作物からは PFOS 等は検出されなかったことから、農作物への影響は無いことが確認された。
 県環境部は、引き続き冬季調査を行い、季節的な変動の有無を確認するほか、次年度以降も継続的なモニタリング調査を行うとしている。また、県環境部から沖縄防衛局を通じて米軍に対して普天間飛行場における PFOS 等の過去及び現在の使用・管理実態等を問い合わせるとしている。
 
 PFOSに関するこの1年の動きをまとめてみよう。

●県企業局が嘉手納基地周辺でPFOSが検出されたと発表
 1月18日、県企業局は「企業局水源地における有機フッ素化合物の検出状況について」記者発表をおこなった。有機フッ素化合物(PFOS、ピーホス)は、半導体用反射防止剤・レジスト製造、金属メッキ処理剤、泡消火剤、航空機用作動油などにかつて使われていた炭素・フッ素結合を持つ有機化合物の総称である。企業局は、PFOSの毒性について「明確な判断は示されていない。急性毒性はあまり強くない。発ガン性は国際主要機関おいて、評価分類が示されていない。しかし生物実験では、反復投与による死亡、体重及び臓器重量の変化等が示されている」と説明している。日本国内では、原則使用禁止になっている。米国では、暫定健康勧告200ng/L、要報告濃度40ng/Lの規制値が設定されている。
 2014年2月から2015年11月のPFOS検出状況は、▽北谷浄水場浄水15~80ng/L (平均30ng/L)▽北谷浄水場原水1~73ng/L (平均25ng/L)▽比謝川取水ポンプ場41~543ng/L (平均207ng/L)▽長田川取水ポンプ場3~408ng/L(平均88ng/L)▽嘉手納井戸群集合水41~100ng/L (平均58ng/L)▽川崎取水ポンプ場44~68ng/L (平均61ng/L)▽北谷浄水場以外の浄水場原水・浄水1~1ng/L であった。発生源の可能性について、「比謝川、長田川取水ポンプ場及び嘉手納井戸群においてPFOS濃度が高く、嘉手納基地内から比謝川に流入する大工廻川|において高濃度(l,320ng/L)が検出されていることから、発生源は嘉手納基地の可能性が高い」とし、「沖縄防衛局を通じ米軍に対して、過去に遡ってPFOS使用の有無を確認し、現在もPFOSを使用し基地外へ流出している実態が明らかになれば、使用の中止又は適切な処理を申し入れする」と今後の県の対応を示した。
 県企業局は給水している市町村を対象に説明会を20日に開いた。企業局はピーホスが法で原則製造・輸入・使用が禁止されているが、国内の規制基準がないため海外の基準に照らし、ただちに危険とは言えないと強調。「法にのっとり、安全な水を送っているが、厳正に対処していく必要がある」として、原因の特定と改善を急ぐ考えを示した。また、原因究明までの間、本島北部のダムや河川からの取水を増やし、北谷浄水場活性炭を使ったPFOS除去に取り組むことなど、同物質の濃度低減化策を説明、現在使っている活性炭の更新間隔を短縮することが必要になり、1億円単位での負担が増えるが、平良企業局長は「安心のためにはコストをかけても取り組まねばならない」と説明した。

 ●県企業局が沖縄防衛局に照会
 翌21日には、企業局は、防衛局にたいし①現在米軍嘉手納基地においてPFOSを使用している実態があれば、その使用を直ちに中止するとともに、適切な対策を取るよう米軍に働きかけること②現在PFOSを使用していなくても過去に使用していた実態があれば、その使用履歴を明らかにするとともに、その対応策を示すよう米軍に働きかけること③県による水源水質検査のための基地内への立ち入り及びサンプリング採取を認めるよう米軍に働きかけること.―の3点を文書で求めた。

 

沖縄の心一つに チムティーチナチ(2)

 知事は北部訓練場返還式典を欠席した。菅官房長官は激怒したが、その知事の決断が、式典の欺瞞をあぶりだした。
 朝日新聞は「返還がかえって、県民と政府の溝を深めてしまったことだ。最大の原因は、沖縄の民意より、米軍の要求を優先する日本政府の姿勢にある」と批判し、「辺野古移設計画をめぐる訴訟で、最高裁は県側の主張を退けた。だが政府が強引に工事再開に突き進めば、県民の不信を高めるだけだ。そうなれば移設そのものにも、在沖米軍基地全体の運用にも、支障をきたすだろう」と警告した。
 
 政府にとって、式典にはどのようなねらいがあったのだろう。
●菅官房長官のあいさつ
 ・沖縄の本土復帰後、最大規模で、県内の米軍専用施設の約2割が返還され、沖縄の負担軽減に大きく寄与すると考えている。
 ・米軍と密接に連携して住宅地上空の飛行を避けるよう対応に万全を尽くす。
 ・(再アセスについては)移設工事終了後、事後調査を実施する。
●稲田防衛大臣のあいさつ
 ・県民のみならず国民全体で安全性に大きな関心を持っている中、このような事故は残念だ。
ケネディ駐日米国大使
 ・返還式典は、日米同盟の節目を刻むものだ。
 ・約4000ヘクタールの返還は、沖縄における米軍のプレゼンスによる影響の軽減を目指し、私たちが持ち続けた決意を示すものだ。
在日米軍マルティネス司令官
 ・返還により、軍事利用に限られていた美しい自然を次世代が享受することが可能になる。文化学的、生態学的に貴重な財産になると確信する。

 

 まとめれば、米軍の抑止力を維持しつつ、日米合意に基づいて沖縄の負担軽減を考慮し、4000ヘクタールを返還するということである。米軍は沖縄の負担軽減をよく理解しているというメッセージを発すること、安倍政権も沖縄の負担軽減に取り組んでいることをアピールすることーこの点に日米政府にとっての式典の意味があった。そのねらいが沖縄県の不参加で、絵の構図が大きく崩れ、みすぼらしい絵になってしまった。ロシアとの交渉も不発。永田町では少し前まで衆院解散風が強まっていたが、急速に尻すぼみした。

 

 式典のみすぼらしさは、構図ばかりではない。語られた中身も、説得力がまったくなかった。高江集落を取り囲む6つのオスプレイ用の着陸帯をフルに活用した場合、東村はこれまでどおり生活できるのか―村民のこの際限ない不安にこたえる回答はひとかけらもなかった。オスプレイ名護市安部の海岸に墜落したことで高江区長は沖縄防衛局にも抗議に行った。
 式典では、返還される跡地の世界自然遺産登録に組み入れることも歌われた。しかし、その大前提となる「支障除去」の道は険しい。なぜかといえば、米軍がベトナム戦争時、そしてその後、訓練場をどのように使ったか、何によってどう汚染したか、履歴を公表していないからである。枯葉剤を捨てたという退役兵の証言もあるのに、である。

 日本は日中戦争で大量の毒ガスを日本国内で製造し、中国大陸に運び、貯蔵した。中国各地の戦場で日本軍は毒ガスを使用し、戦後は、国際法違反の追及を避けるために、投棄した。この投棄された毒ガスが、戦後数十年して、道路工事などで掘り出されてしまい、その際に多くの市民が被毒した。日本の司法では、その中国人被害者にたいする謝罪・賠償は退けられたが、日本政府は、世論に押されて被爆者援護に準じた形で、治療費の一部を払い、遺棄毒ガス除去に一定程度取り組んだ。こうしたことも考え合わせれば、米軍・米国が北部訓練場の土壌汚染を除去することは当然だ。それなのに、非協力的姿勢すらみせている。

 沖縄の心一つに チムティーチナチ(1)

 沖縄県の翁長雄志知事は12月22日に政府が名護市の万国津梁館で開催した北部訓練場返還式典への出席を拒否し、その式典の1時間ほど後に同じ名護市で開かれたオスプレイ墜落に抗議する県民集会に出席した。知事のこの勇気ある決断に多くの県民が心を打たれ、励まされたことは疑いない。その知事の訴えは次の通りだ。

 

 オスプレイが墜落した名護市安部で無残な機体を見て、すぐそばに新基地ができると思うと、不安が今後も続くことに強い憤りを感じ、オスプレイが飛ぶことがないようにしたいとあらためて決意した。
 四軍調整官は抗議に訪れた副知事に対して、パイロットは陸上を避けて水上を目指したので感謝するべきだと話をした。これでは良き隣人と言うわけにはいかない。
 日本政府は米軍の要求を最優先し、わずか6日後の飛行再開を一方的に認めた。県民を日本国民と見ていないとしか受け止められず、信頼関係を大きく損ねるもので強い憤りを感じる。
 北部訓練場ではオスプレイが東村高江に近いヘリパッドで運用されるため極めて問題だ。政府が北部訓練場の返還式典を強行したのは、県民に寄り添う姿勢が見えないと言わざるを得ないため、沖縄県としての出席を取りやめた。
 辺野古新基地建設問題では、最高裁が県の上告を棄却する判決を出したが、高裁判決とは異なり「辺野古が唯一」とは認定しなかった。前知事の埋め立て承認を最大限尊重しているが、逆に言えば、私の今後の埋め立て承認変更などさまざまな権限行使について幅広い裁量権限の行使を認めたと思っている。
 私は法令にのっとり厳正に審査し、承認変更などの要件も判断する。米軍統治下の時代、苛烈を極めた米軍との自治権獲得闘争を粘り強く闘ってきた県民は、日米両政府が新基地建設を断念するまで闘い抜くと信じている。
 私は(オスプレイ配備撤回、普天間飛行場の閉鎖・返還、県内「移設」断念を求めた)「建白書」の精神に基づく「オール沖縄」の立場で県民との公約を守ろうと全力を尽くしてきた。今後も県が持つあらゆる手法で辺野古に新基地を造らせない公約実現に不退転の決意で取り組む。
 グスーヨー、ムルサーニ、チムティーチナチ、クワァーウマガヌタメニ、チャーシンマキテーナイビラン。新辺野古基地ツクラサングトゥシ、オスプレイウチナーカラウランナイビーン、カンナジツクラサンネー、チバラナヤーサイ

 (心を一つに子や孫のためにどうしても負けてはいけない。新辺野古基地を造らせないことで、オスプレイが沖縄からいなくなる。必ず造らさないように頑張りましょう)。

 

 オスプレイの墜落直前には、宜野座村で集落近くでの物資をつりさげたままの飛行訓練を昼夜数日にわたって訓練を繰り返していた。地元や県の抗議を無視し、激しい訓練を続ける中で、空中給油訓練中に事故を起こし、機体をコントロールできずに墜落したのである。米軍機墜落でいえば、2015年には津堅沖でヘリ墜落、今年に入って9月にハリアーが墜落。民家にこそ落ちてはいないが、紙一重だ。そして、事故原因が明らかにされないまま、飛行を再開する。稲田防衛大臣は、米軍のオスプレイ全面飛行再開通告にいとも簡単に同意した。機体の残骸もまだ海に残されたままで。